4-3 豪華客船の小型動力船
「それで僕に動力炉を見せて欲しいんですけど…お願いできませんか?キエサさん」
「仕方ありませんね…あそこまでの大物を釣り上げたお礼としては少ない位です。動力炉を見せる位は容易いことです。但し危険地区でもありますので、私の目の届く範囲にいてください」
「ええ、その位なら問題ないよ!説明もしてください!」
「では、私に離れない様についてきて下さい」
船の動力室は地下5階最も下の階層にあった。階段を降り僕に何処がどういう役割か詳しく説明してくれる。
「ここが動力部です。この装置がすべて完全に破壊されてしまえばこの船は風に任せて進むしかなくなってしまいます。非常に重要な部分なので通常のお客様は立ち入ることが禁止されているんです」
「この唯の石がどうして動力になっているんですか?」
「これは魔石を使っているんですよ。魔石から回転エネルギーを取り出して推進力にしているんです。つまるところ残りの装置がその為の機器なんです」
「結構大きな装置なんですね…もう少し小型化できなかったんですか?」
「馬鹿に大きい船ですから、動力炉も必然的に大きくなってしまう様です。小さい動力炉を積んだ船もこの船には積載されています。非常事態に備えて、数多くの救命ボートも用意されているんです」
「小型の動力船もあるんですね!乗ってみたいなぁ」
「そうですね…少しくらいなら特別に構いません。今晩停泊する時に、お連れしましょう。お客様はどの部屋にお泊りでしたか?」
「僕はキーナに斡旋して乗車させて貰っているだけで、部屋はないんだ」
「そうでしたか、それならお部屋を要求差なれば宜しかったでしょう?何故そうしないんです」
「別に数日位なら椅子で眠れるから…それ程困る事でもないし」
「そうですか…狭い部屋で宜しければ一部屋融通いたしましょう。あれ程の長蛇 魚です。部屋一つでは足りない報酬でしょう」
「小綺麗な所なら」
「船員たちが使う予定の空き部屋です。非常に狭いですが…」
僕は小さいながら個室を貰うことになり、そこで暫く休憩を取る。夜にボートに乗せてくれるのだから、それまで仮眠をとることにしたのだ。船の揺れでベッドから転げ落ちるのは嫌だから、魔法障壁で固定しつつ浅く眠る。
「タークス様、小型動力船の準備が整いました」
「今直ぐ出ていくよ。非常に楽しみにしていたんだ」
夜なので足元に気を付けながら停泊している船の中を静かに歩く。正直言って僕は余り水の中が得意ではない。恐怖が僕の冒険心を煽る。船から飛び降りて、降ろされた小型動力船に飛び乗るキエサ。僕もそれに続く。
「いざという時の避難の為に、こうして直ぐにボートを出せるよう訓練をしているのです。では動かしますよ」
豪華客船の周りを周遊する。殆ど音もなく静かなものだ。何週かしたところで、運転を変わらないかと提案される。僕は嬉々として船の運転をする。
「海の中に僕達の船を追尾して泳いでいる魚たちが多数いるな」
僕は魔法障壁で魚を覆い、体を覆うように泳がせる。
「暫く飼ってみようかな…。君の名前はチーズ、君はムニエルね。よろしくなっ」
「気を付けてくださいね、特に漁師には。魚何て飼っていたら三枚に下されて(フィレットにされて)しまいますよ」
チーズはクリオネの様な魚で非常に弾力がありそうだからそう名付け、ムニエルは丸々太ってて美味しそうだ(毒もありそうな河豚のような魚だ)。
もう夜も遅いので僕は部屋に帰り、魚の鑑賞でもして朝まで起きていることにした。夜に起きるために眠ったので、再び眠れなくなってしまった。
「餌は何を食べるのかな…魚なら、プランクトンか何かだろうか?それとも海藻か腑でも食べさせればいいのだろうか…?麩のような穀物の方が好みなのだろうか?良く分からないけど…少しずつ与えて様子を見るか」
パン類を与えて水が濁る心配は特にしなくてもいい。小魚二匹分の水なら苦手だとは言え充分何度でも補充することができる。淡水魚ではないので水だけ作っていたら浸透圧の問題で死に絶えてしまうだろうけれど、塩分を魔石から生成できる僕には何ら問題ではない。
「今日眠る時までに、水槽を用意しておかなきゃ…分厚いガラス製の。そんな物が運よくこの船にあればいいけど」
この船は幸運にも豪華客船。ガラス自体は数多く存在している。その為(最悪の場合でも材料があるので)、730℃程度まで加熱して軟化させ繋ぎ合わせるかもしくは1200℃程度まで加熱して融解させればガラスの箱を作ることはできるだろう。
僕は朝が来るのを待ち、朝食を摂りにレストラン前の売店で簡単な食料を購入する。多くの船客が目を覚まし、レストランに集まっている。
「キーナがいればいいんだけど…残念ながらレストランには入れないし…どうしようかな」
取り敢えず側にいた売店の姉さんにガラスがないか聞いてみる。
「そうね…ガラス細工ならお土産屋に売ってあるわよ。地下3階よ。でもセレブしか入れないような所よ。貴方みたいな服装では入れて貰えないわ」
「どうしてもガラスが必要なんです…何とかなりません?」
「そう言われても私は売店で食料を売っているだけだからねぇ…」
スーツがあれば中に入れるらしい。僕は甲板に出て、スーツを貸してくれる人間を探すことにした。
「もし宜しければスーツを貸してくれませんか?」
「嫌だね。触らないでくれる?(貧乏が移るわ)」
「スーツを貸しては頂けませんか?」
「わぉ、ごめんなさいね。私の一張羅なのよ。それとも脱がせたいの?」
「いえ、そんなことはできません」
「残念ね…」
「あの、スーツを」
「ちっ、こっちは忙しいんだよ。そこを退きな」
僕は全くどの客にも相手にされないまま、暫くの時間が過ぎた。そんな中、昨日の雄姿を見ていた一般客が僕に気が付いて話しかけられる。
「あんた、昨日のでっかい魚を釣り上げた御仁じゃねぇか?どうしたんだ?しょぼくれて」
「あ、ああ、何でもないよ…。スーツを誰にも貸してもらえなくて、落ち込んでいるだけさ」
「それは仕方ねぇぜ…何かでっけぇ物と交換しねぇと、スーツ何かはくれないだろう。パクられると思ってるからな…」
「どうして?借りるだけで、使い終わったらきちんと返すよ」
「俺達は船に乗っていてお互いを知らない。だから借りてそのまま船を降りられたら、簡単に持ち逃げされてしまうだろ?良識のある人ほど、服なんかを貸すはずがないのさ」
「そ、そんな…。何とかして手に入らないかな」
「どうしてそこまで手に入れたいのかは知らないが、簡単に手に入れる方法なら知ってるぜ。でっかい価値のあるものを先に提示すればいいんだ。あんたなら簡単だろ?」
「価値のあるものか…今持っている物は…大量のアルマジロの皮と、鉱物かな…」
「貴族のお嬢様方にはアルマジロのバッグを作れば人気が出るんじゃないか」
彼の提案通り、バッグを作り交換を持ちかける事にした。
「まぁ、宜しいのかしら?魔獣の皮を加工してバッグに態々するなんて相当の値が付きますよ?私のスーツも特注品で採寸してもらって作ってもらったものだけど、予備の服なら何着か持ってきているから問題ないわ」
「鞄なんてそれ程価値があるようには見えないけど…?」
「無暗に人に配らない方がいいわよ。誰もが私みたいに優しいとは限らないのだから。あと、貴方革職人になった方がいいわよ。貴方なら一生楽して暮らしていけるでしょう」
「そっか…。考えとくよ」
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