3-7 小説執筆ギルド設立
次の日から僕はアルマジロを徹底的に叩きながらドリルで穴を掘ることにした。『突起岩場』を抜けたところで、ドリルを回転させていく。面白いほど後ろからアルマジロが襲い掛かって来たので、大量の皮を剥ぐことができた。
「うーん、後でアルマジロの肉も焼いて貰おうかな…美味しいかどうかも分からないけど」
僕は朝起きて【魔力感知】で集まってくるアルマジロを倒しながら穴を掘って領館に帰る生活を何日か続けることになった。アルマジロの皮1枚を金貨1枚で売り10金貨を手に入れる。10枚程度の皮を売っても、大量に肉と皮が手元に残ることになった。
「今日は、本日はどのような御用でしょう?」
「ギルドの設立をしてもいいかな」
「タークス様はギルド員ではありませんが、ギルドを設立すること自体は可能です」
「じゃあ、ギルドの設立をお願いしていいかな」
「ではこの申請書に必要事項を記入して金貨1枚お支払いください」
僕は『冒険小説執筆ギルド』を無事に設立。ギルド員は、タークス唯一人。
「僕の冒険は今始まったばかり!、なんちゃって」
ギルド員募集のお知らせは、領館の壁に目立つように貼り紙を作ることに。
「ギルド設立おめでとうございます。ギルド員は集まりそうですか?」
「いや、全く集まらないよ。抑々本を書こうなんて言う奇特な人間はこの街にはいないんだよ」
「文字を知ることがなくても、充分生きていけますからね。それも仕方のない話だと思われます。仮にそういう場所を作っても、書籍の流通が殆どないこの街で学ぼうとする人は少ないでしょう」
「直ぐに効き目が出る効果的な方法は無いかなぁ…」
ティミィは街全体を育てるのが無理でも、特定の個人を育てることは可能だと言った。けど、そんな都合よく人が見つかるだろうか?
「はぁ…どうしたらいいんだろう」
「いつになく弱気じゃないか!…いつもの君なら、規格外の魔法で何とかして解決している頃なんだろ?今回も規格外の魔法で何とかしてみろよ」
「才能を見つける魔法があればなぁ…僕に未来を見通す才能なんてないよ…物語を書いてくれる人なんて、見つからない気がして」
「それは、文字を書けないとだめなのか?文字は書けないが、物語を語るのが得意なカージュなら紹介できるぜ…ここでの楽しみ何て、空想する位しかないんだ」
「それは、盲点だった…。いい速記士を連れてきて本にしてもらうよ」
それから、貼り紙に物語を語ってくれた人に賞金を払う旨を記載した。そのお陰で以後領館には様々な冒険譚を語りにやって来る人が増えた。ティミィは一度聞けば記憶できるし、それを紙に書き下ろす事も容易い。
「もう随分掘った筈だけど…まだ洞窟の先が見えてこない。【炎(撃の魔法)障壁】で洞窟壁を固めながら進んできたから、崩落の心配はないけど」
ここはマグマが近くて暑い。それと、ポッシェに大量の土が増えた。
「暑い、けどこの儘なら何とか反対側に出れそう…魔獣も今のところ出てない。あと、四日ってとこかな」
洞窟の長さは約10km。一日に掘った距離は2~3km。長くて直線的な通路が完成している。アルマジロ皮で作った洞窟の扉を閉め、魔の森辺りを低空飛空しながら帰る。
冒険者がこの魔の森で一番人気がある獲物は魔猪でもなく、豚鬼(オ-ク)でもない。もっと市民に流通していて討伐のしやすい魔獣だ。今日も数多くの冒険者が、魔の森の入り口辺りで悪戦苦闘している姿が見て取れる。
「最早、こうなれば畑?と言ってもいいのかもしれないな。畑は畑でも冒険者育成の畑。入口なら死に至ることもないし、いい経験にもなる」
領館に帰って来た時には既に日も暮れ夜も近くなっていた。地下を掘らせる事業が一年経っても魔の森を未だ越えられないというのも納得できる。物凄く地味な作業で、重労働だ。ただ続々と地下の作業員が増えているので、地下の削岩作業速度も日に日に増す事だろう。
「お帰りなさいませ、本日は照り焼きゲーテーをメインとしたお食事になっております」
ゲーテーは何処にでもいる魔獣だが、その強さで肉質が変わってくる。市井にも広く流通しているゲーテー肉は非常に安物だ。主に森に棲息している。
「早速、速記士が孤児院に行って書き留めた物語ができています。お読みになさいますか?」
「一冊の本になってから読むことにするよ…出来上がったら金貨一枚の報酬を渡す様に」
「一冊で金貨一枚ですか?それは余りに多すぎではありませんか?」
「先行投資って奴だよ…きっと本を読む知識層に人気が出るよ…王都に持っていけば元が取れる程よく売れる…筈さ。資金は、僕が魔獣を狩って来て何とか稼ぐよ」
「物語を語りに領館へやって来た人へも銀貨10枚の報奨金を与えていて、本当に元手は取れるんですか?」
「どうだろう?最悪、趣味みたいなものだから元手何か取れなくても構わないんだ」
「領地経営に悪影響が出ないうちは、なにも文句を言うつもりはございません」
僕は歴史書に目を通しながら今日の夜を過ごすことにする。人が人を殺し勢力抗争がどう繰り広げられたのか描かれている。
戦争の本なんて読んで楽しいのでしょうか?私には理解できません。戦いの歴史、傑物と言われた過去の都市、様々な政策。現実の勝者が書いた歴史なんてそれ程意味があるとも思えません。無惨なものです。
「本当に、人間は戦争が好きですね…私も戦争に投入されたことがあります。あの頃は酷い物でした。数多くの魔導人形が戦争の為に作られ…そして数多くの同志たちが命を散らしていきました。もう、過去の話ですが…。最悪、この領地が侵略されることになれば再び私も戦う覚悟を決めなければならないでしょう。そんなことがないように願っています」
私が魔導人形として作られたのは、もう何千年も昔のことです。今まで様々な主人に仕えてきましたが、今現在教育係としての生き方に非常に満足しています。戦闘能力がないと思われていますが、いざとなれば私一人でも充分な戦略兵器として役目を果たすことができます。
「どれだけ戦っても、勝者なんていない…。生き残っても、私が得たものは何もない…長く生きている私は御主人様を何度もみとることになってしまう…今度も、それだけは変えられない運命なのです」
戦略兵器として私は一度機能停止を迎えました。ですが、迷宮の中で私の残骸が修復されたのです。その時の私は、迷宮主を倒そうと躍起になっていました。今思えばいい思い出ですね…。
「いつ聞いても、冒険話はいい物です。私も、ご主人様の活動を支援したいですね…。長く生きていても、冒険話に飽きはありませんから。もしかしたら、私が関わっていた過去の話も聞くこともできるかもしれません」
「いいえ、そんなことはないでしょう。貴方の過去を知るものなんてこの時代に生き残ってはいないでしょう…私達位のものです」
「貴方は…戦闘指導員として雇われているキトさん。こんな時間にお会いするなんて珍しいですね…何か御用ですか」
「独り言が聞こえてきたものだから気になってね…。実は私達も嘗て魔導人形と行動を共にしたことがあったんだ…こことはまた別の場所、別の時代だけど」
「それは興味深いですね…是非お話をお聞きしても宜しいでしょうか」
「ま、いいですよ。君達魔道人形にとって夜はまだまだ長い。長い話になるけど、私達が出会った魔法人形の話を…」
キトとティミィの話は夜が更け朝が来る直前まで繰り広げられ、二人は偶然にもお互いの友好を深めることになった。
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