3-2 岩魔獣、阻む
次の日の朝、領地で採れたフルーツを食べてから、僕は『深き森』へと向かう。冒険者の姿が見えるのは魔の森までで深き森にいる冒険者の姿は見えない。
深き森を抜けると辺りは岩ばかり。ここでは確かに隠れることは難しそうだ。
「この場所からは数多くの魔獣が生息している筈だけど…岩石があちらこちらにあるだけでその姿は確認できない…念のため【気配察知】で動物の位置を探ってみよう」
魔法で幾ら探っても動体反応はない。
「そんな筈はないんだけど…慎重に進もう…土の中に隠れているのかもしれないし」
僕は翼を畳んで魔法障壁を足に集中させる。この辺りで翼なんて広げて進んだら、風に飛ばされて真面には進めなくなってしまう。足の障壁で岩を掴み確実に一歩ずつ進む。
「何かに足を掴まれている…何かが岩に擬態している様だ」
【風蹴】を連続で打ち何者かの手にダメージを与える。相手の手は脆く崩れ去る。本体の姿は見えない。どうやら、土の中に隠れている様だ。下からの奇襲が通用しないと見るや、僕を囲むように姿を見せる。
「リバーシ―なら僕の負けだな…(だが現実は挟めば勝ちという訳ではない)」
【雷連撃】で相手を片っ端から破壊していく。体の3割程度を破壊しても動きが止まる様子はない。寧ろ何度も再生していく。
「全身を吹き飛ばして、それでも再生できるかな?」
【雷撃】で全身を吹き飛ばして挙動を確かめる。爆風により辺りが煙に包まれるが、どうやら復活はしない様だ。
「残るのは土くれだけ…なんて非生産的な魔獣なんだ…」
【風撃】で相手を突き飛ばし、包囲から逃れようとする。戦闘は仕切り直しとなり、再び囲うように魔獣が現れる。
「倒しても倒しても切りがない…それに一体を倒すのも相当疲れる」
ふわりと岩魔獣に飛び乗り、飛び越える。確かに頑丈だが、動作は緩慢だ。この儘無視を決め込み、戦わずに逃げていく。逃げても又前方に現れる。
「逃げ切れるのなら、相手にしない方がいい。得られるものは何もないのだし」
山の中腹まで上り切った頃、太陽は頭上まで上り引き返す時間となった。
「土の魔獣達が邪魔で余り進めなかった…何かもっと素早く進める方法を考えないと」
山の中腹から翼を広げて風に乗り、領地目指して飛び降りる。風に流されるまま領地へと向かう。森を抜け悪魔の沼地まで流される。
僕は沼地に叩きつけられるように着地した。その所為で泥だらけだ。足が泥に取られて転びそうになる。目に泥が入ったみたいで、辺りの様子がよく見えない。
「酷い場所に落ちてしまった…何とかここを抜けださないと。何処までも沈んでしまう」
ここが悪魔の沼と呼ばれている理由の一つは、この沼に飲み込まれた者達は決して帰ってこない事だ。藻掻けば藻掻くほど足を捕られ、泥魔獣達が止めを刺しに来る。悪魔の沼と呼ばれているのは、もう一つ別の理由があるのだが…。
僕は翼を広げ、全力で羽ばたかせる。翼の下方に【風撃】を打ちその反動で上へと飛びあがる。沼に嵌っていた足が抜け、脱出に成功。初心者平原に向かって低空飛行する。
この沼地で戦闘しようなんて考える人は殆どいない。それでも沼地に咲く花を採取する依頼や泥蛙の肝を目的にここで戦う人もちらほらと見かける。偶然帰り道に出会った彼女ジュディスは泥兎に鮫剣で戯れて泥だらけになっていた。
「どうして攻撃が当たらないの?この鮫剣があれば沼地で無敵ではなかったの??」
「矢鱈滅鱈振り回しても、敵には当たらないよ…いくら剣の性能が良くってもね」
「貴方は、誰?もしかして沼地の悪魔とは貴方の事ね!私が武器屋で新調した鮫剣『シュピナイザー』の餌食になりなさい」
鮫剣の性能は泥の中を剣戟が走ることにある。剣戟がオタマジャクシ状になり相手に襲い掛かるこの技は確かに使い手によっては強烈な決め手になるだろうが、空を飛んでいれば避けることも容易い。
「跳ねろ『鮫剣』」
起動ワードでオタマジャクシが飛び跳ねて軌道を変えて襲い掛かってくる。鮫のような残像が相手に恐怖を与える。だが彼女は鮫剣を使いこなせていない。速度が変わらなければ軌道を変えても僕に当たる道理はない。泥兎に逃げられる程の剣戟、躱せない筈がない。
「僕は沼の悪魔じゃないよ…?それにいくら攻撃しても僕には当たらない。僕は早く家に帰りたいんだ。無理矢理通らせてもらうよ!」
急降下攻撃が相手の喉元に炸裂し、意識を刈り取る。泥塗れになったジュディスを抱えて平原へと飛び立つ。このまま放ってはいけない。せめて安全なところまで彼女を連れて行かないと。
平原で襲い掛かってくるスライムやウサギを【風撃】で吹き飛ばしながら帰路に就く。然程時間が掛かることなく、門に辿り着き彼女を牢屋の中に保護してもらう。目が覚めれば帰っていくだろう。僕はアドバイスを書いた紙と何かあれば領館まで来てくれるようにと『招待状』を書いて彼女に渡しておいた。これで心配ないだろう。門番さんは信用できる人だ。何時も宿屋から嬉しそうにサンドイッチを届けてもらっている。何時結婚するのかと、辺りでは噂になっている。
「それで岩魔獣が邪魔をして山を効率よく登れなかったんだ…撃破するにもキリがないし…如何したらいいだろう?」
「そうですね…全て倒しても魔力が余るように鍛えてはどうでしょう?タークスならまだ魔力が伸びる余地があります」
「正気?」
「ええ、半分は。その方法が嫌なら、岩魔獣の急所を突くのが宜しいかと。魔獣達は体に魔石がありそこを壊されてしまえばどのような魔獣も活動をすることができません。人間でいう心臓部を破壊してしまえばいいのです」
「けれど、どこに魔石があるのか分からないよ。個体ずつに魔石がある位置が違うんだから…」
「岩魔獣の場合なら難しい話ではありません。【魔力感知】を覚えればいいのです」
「【気配察知】の応用?どうやって魔力を感知すればいいの?」
「それほど難しい話ではありません。気配を察知する時、魔法障壁を球状にして四方八方に飛ばしましたね?障壁は対象とぶつかると戻ってくる。その結果が対象の位置を割りだすのです。ここまではいいですね?その魔法障壁に細工をすればいいのです」
「魔力が大きければ大きいほど、勢いよく跳ね返るとか…?」
「確かにそうすれば二つの魔法障壁の動きの差で位置と魔力量の大きさが分かるでしょう。可能ですか?魔力感知の方法は一つではないのです。魔力の消費量を考えなければ、もっと別の感知方法もあります。聞きたいですか?」
「ううん、大体予想が付くからいいよ」
僕はその日はぐっすり眠った。新しい土地に行って警戒していたせいか、予想以上に疲れていた。他の魔力を感知する方法とは、周辺に自らの魔力を飛ばし大きな魔力があれば大きな挙動を起こす様にしておく。あらゆる方向に魔力を発しなければいけないので、僕の方法よりも幾分か魔力を消費する。
もっと節約できる方法は無いか考えている内に、本能に抗えずに睡眠についた。
「貴方が私を不必要になっても、私の事を友人として取り扱ってくれるでしょうか…私にはそれが心配で仕方ありません…私の前の御主人も優しい人でした。ある時までは…」
ティミィは穏やかに眠っているタークスに優しく布団をかけ、過去の事を思い出していた。辺りは既に暗く、夜の月明かりのみが部屋の中を静かに照らしている。ティミィは魔道人形として造られた時感情という物は存在しなかったのに今はこうも感傷的になっている…こんな事は最初には全く予想できなかった…年月という物は残酷なものだ。できれば私は感傷なんて持ちたくなかった…。
【何卒、下記をどうかお願い致します】
・面白くなかった
・続きは見たくない
という方は、ブックマークはブラウザーのお気に入りページに追加することを推奨します!
評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】を【★☆☆☆☆】(最低)
にすると 作者が喜びます。




