2-2 クローブ爆弾の真実を知る
一年経ったが、未だクローブは爆弾を作った張本人を見つけられずにいた。商人を装って街に潜伏したのはいい物の、全く情報は入って来ない。それもその筈、爆弾を作った張本人は街の近くでサバイバル訓練を一年間繰り返していたのだから。ティミィは命令に忠実なので爆弾の事を一切話す様子さえない。
「一年経っても、爆弾を誰が作ったか一切分からないとは…予想できなかった。この街には技術者らしい人物は一切いないんだ…一体誰が作ったというのだろう」
クローブは新しくできた酒場で飲んだくれていた。一縷の望みをかけて酒場で情報を集めているのか、只自棄になっているのか今では判断が付かない。今ではすっかり酒場の常連となり、関係のない情報ばかりクローブの耳に入ってくる。
「サンチョメさんちの猫が逃げ出したらしいぜ。それをギルド依頼に出したんだと」
「そいつは傑作だな。猫くらい自分で探せなかったもんかね」
「街の中で逃げてんのなら、そうだろうよ。だが、仮に外にまで逃げだしてしまってるんなら危険極まりねぇ話だからなぁ」
「壁の外に出られるかねぇ…再建した時、猫の子一匹外に出られないように頑丈に作り直したから、無理だろ」
「分かんねぇぜ、相手は猫だから荷物にこっそりと紛れ込んで出るかもしれねぇ」
「で、見つかったのか?その猫は」
「いや、まだ見つからず終いだって話だ。どこ行ったんだろうなー」
「こんな狭い領地で、そんなことあるのか?」
「さあな、でもあそこに迷い込んだら見つからねぇこともあるんじゃねぇか」
「おい、滅多なこと言うもんじゃねぇぜ…」
「おっといけねぇ…口が滑る所だったぜ。でもよ、なら猫は何処にいるんだよ」
「近所の奴が妬んで秘密裏に飼ってるのさ」
冒険者たちの戯言を聞きながら、今日も無駄に時間が過ぎていく。
「こうなったら、もう最終手段に出るしかない…」
クローブは覚悟を決めた。クローブは潜入のプロだ。敵陣に潜り込み情報を得ることを得意としている。だがどうしても情報を得られない時がある。それでも彼はありとあらゆる手を使って情報を入手することに成功してきた。
クローブは過去の経験を活かし、領館にメイドを装い門戸を叩く。虎穴に入らずんば虎子を得ずと言われる通り、情報を持っているであろう本拠地に潜入することにしたんだ。
「こんにちは、ここは領館でしょうか?私、クローバーと申します」
「こんにちは、お嬢さん。これより先は領主様のお屋敷となっております。どの様なご用件でしょうか?」
「私是非ここでメイドとして雇ってもらいたくて」
「ここは働き口のない土地ですから…自らを売り込みに来る気持ちはわかります。奥様に取り次いで見ましょう…どうぞ、お入りください」
メイドとして完全武装したクローバーは応接室で面接を受けることになった。如何にも緊張した面持ちでクローバーは領主の到着を待った。
「お水をお持ちしましょうか?大分緊張しているようですが、大丈夫ですか?」
「ええ、お願いしても宜しいでしょうか?できればレモンを付けてくださらない?」
「少々お待ちください、直ぐお持ちいたします」
ここで雇われているメイドは物凄くレベルが高いようだ。直ぐに水が届き、口を潤すことができた。
「貴方が新しいメイド志望の方ですか?母様の前に私が貴方を量って差し上げますわ」
「シーチェル様、母様を待たれた方が宜しいと思われますが」
「貴方ここのメイドになりたいのでしょう?それなら私の命令にも従う事になるわ。私のメイドとして充分役に立つか、見ておく必要があってよ」
シーチェルはメイドを直立させ筋肉の付き具合を調べる。
「これはなかなかの筋肉の付き具合ですわ…あなた戦闘経験があるでしょ」
「ええ嘗ては冒険者をしておりました」
「どの位戦えるか見てみる必要はありそうね。模擬戦をしますわよ!」
屋敷の外、メイドの一人とクローバーとの立会いが始まる。特殊工作員として一流のクローバーとメイドの魔法の打ち合いが始まる。この時代の魔法戦の主流は、正面からの打ち合いだ。力で決着をつける事こそが素晴らしいと考えられている。
クローバーの魔法力が上回り、風の力が相手を切り刻む。
身体強化によるナイフ攻撃は全て弾かれ、蹴り飛ばされて場外負けとなる。
「私のメイドでは戦いにならないようね!」
「シーチェルどうしたの?庭で暴れて…」
「新しいメイド候補を見ていたの。彼女雇ってもいいかしら」
「貴方がそういうのなら、好きになさい…」
館の中を移動しながら、シーチェルは説明していく。
「あなたは今日からメイドとして働くなら、専門意識を持ちなさい」
「私は主に何をすれば宜しいのでしょう」
「貴方、何故メイドなんかになろうと思ったの?冒険者として活動すればいいじゃない」
「危険な職業ですから」
「戦闘以外に何ができる?メイドとして一通りの業務はできるのかしら、得意属性は風?」
「まぁ…そうですね…私は盗賊として活躍しておりましたから、隠密行動ならお手の物ですよ」
「隠密?面白そうね!私にも教えてくれる?」
「それがご言いつけとあらば」
姉とクローバーは友好関係を深めていった。だが、クローバーの欲しい情報は微塵たりとも手に入ることは無かった。爆弾の事はどんな書類にも残されていなかったし、姉や母には一切知らされていない事だった。
「この街を吹き飛ばした爆弾について何か知りませんか?」
「あの戦争の時の話ですね…あの時、街は灰塵となり全てが吹き飛びました。物凄い大魔法だったようですね」
「魔法…だったのですか?」
「さぁ、私達には何も知らされておりませんので…ただ、ものすごい威力だったのは確かです」
「誰か爆発について知っている人を知らない?」
「そうですね…あの時、指揮をとっていらっしゃたのはタークス様でした。タークス様ならすべてをご存じでしょう…タークス様なら今書斎に(て読書なさって)おられますよ」
「早速向かってみます」
書斎はシンとして厳かな雰囲気が漂っていた。その中で頁を捲る音が妙に大きく聞こえる。タークス様は言われた通り読書中の様だ。
「タークス様、今宜しいでしょうか?少し聞きたいことがありまして。新しくメイドとしてシーチェル様に雇われたメイドのクローバーです」
「それで、聞きたいことって何なの?今僕は忙しいんだ。できれば手っ取り早く聞いてくれる?」
私は内々でここ一年に渡り疑問に感じていたこと全てをぶつけてみることにした。毒を喰らわば皿までの精神だ
「どうやってあの戦争の時、街一つを吹き飛ばしたのですか?その技術があれば、戦争で圧勝できたのではありませんか?どうして公表して次の戦争に使おうとはしないんです?」
「危険な兵器の存在を知る人は、少なければ少ないほど安全だからだよ…それに僕は守るために使うならまだしも、攻める為になんて使いたくないんだ。技術を公表したって、無駄に死ぬ人が増えるだけ。秘匿しておく方がいいに決まってるよ…違う?」
「確かにそうかもしれないですね…ですが技術を売れば莫大な富を得らえるのですよ?それでも秘匿したいのですか?私には理解できません。それ程他人の命が大事なのですか?」
「僕が隠しても、そのうち別の誰かが発見して戦争に使うようになるかもね。でも少しでもその時を長引かせることができるのなら、そうしたいんだ。莫大な富は魅力的だけど、僕はそんなものを望んではいない」
「何だか納得できました…爆弾の話が全く市井に出回っていないその理由が。不思議で不思議で仕方がなかったんです。そういう意図があったのですね。喉の痞えがとれた気分です」
「姉はやんちゃな性格で色々な面倒をこれからも起こすだろうけど、よろしく頼むよ」
【何卒、下記をどうかお願い致します】
・面白くなかった
・続きは見たくない
という方は、ブックマークはブラウザーのお気に入りページに追加することを推奨します!
評価はページの下にある【☆☆☆☆☆】を【★☆☆☆☆】(最低)
にすると 作者が喜びます。




