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向日葵のお姫様!  作者: 日向 藍衣


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7/10

バーゲン

休日の昼。

彩羽はテーブルに一枚のチラシを広げていた。

その目は真剣そのもの。

受験生より真剣だった。

ヒマリが不思議そうに覗き込む。

「何見てるの?」

「戦場の地図」

「怖」

彩羽はチラシを指差した。

そこには大きく書かれている。

『大感謝祭!野菜バーゲン開催!』

ヒマリは首を傾げた。

「バーゲン?」

「安売り」

「ほう」

「そしてキャベツ一玉六十八円」

その瞬間。

彩羽の目がキラキラした。

ヒマリは嫌な予感しかしなかった。

◇◇◇

「よし、行くよ」

「どこに」

「バーゲン」

「え?」

「バーゲン」

「いや聞こえてる」

「出発!」

彩羽は勢いよく立ち上がった。

ヒマリは連行された。

◇◇◇

スーパーに着く。

しかし異変があった。

人。

人。

人。

人。

人。

「多くない?」

「バーゲンだからね」

「みんなキャベツ狙い?」

「多分」

「怖っ」

ヒマリは少し後退した。

向日葵の星の王宮でもここまで人は集まらない。

◇◇◇

店内アナウンスが流れる。

『まもなくタイムセールを開始いたします!』

その瞬間だった。

周囲の空気が変わる。

客が売り場を見つめる。

カートを構える。

買い物カゴを握り締める。

「戦争じゃん」

ヒマリが呟いた。

彩羽は真顔だった。

「戦争だよ」

「認めるんだ」

◇◇◇

そして。

『キャベツ特売開始です!』

その声と共に人々が動いた。

彩羽も動いた。

「キャベツぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「また叫んだ!!」

猛ダッシュで売り場へ向かう。

驚異的な速さだった。

運動部も驚くレベルだった。

◇◇◇

数分後。

「勝った……」

彩羽は満足気だった。

カゴの中にはキャベツ五玉。

ヒマリは驚愕した。

「何人家族?」

「二人」

「多くない?」

「普通だよ」

「普通じゃない」

「キャベツは別腹」

「そういう言葉だったっけ」

◇◇◇

レジへ向かう途中。

ヒマリはある物を見つけた。

向日葵の種。

おつまみコーナーに並んでいる。

「あっ」

立ち止まる。

「どうしたの?」

「お金売ってる」

「違う」

「売ってる」

「食べ物」

「お金」

「食べ物」

「お金」

「食べ物」

結局いつもの平行線だった。

◇◇◇

その時。

ヒマリは閃いた。

「つまりさ」

「なに」

「これ買って向日葵の星持って帰ったら資産家じゃない?」

彩羽は固まった。

「確かに」

「でしょ!?」

「密輸みたいだからやめなさい」

「あっ」

正論だった。

◇◇◇

会計を終えた帰り道。

彩羽はニコニコだった。

キャベツを抱えているからである。

ヒマリは不思議そうに聞いた。

「そんな嬉しい?」

「嬉しい」

「向日葵の種貰った時のヒマリくらい?」

「それ以上」

「そんなに!?」

ヒマリは驚いた。

そして少し考える。

「もしかして彩羽もキャベツの姫だったりする?」

彩羽は数秒黙った。

「それいいかも」

「否定しないんだ……」

こうしてこの日。

ヒマリは確信した。

地球には変な人がいる。

しかもその変な人と同居している。

今さらながら少し不安になったのだった。

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