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向日葵のお姫様!  作者: 日向 藍衣


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6/10

キャベツ畑

ヒマリが地球へ逃げてきてから一週間。

彩羽はある場所へ向かっていた。

もちろんヒマリも一緒である。

「彩羽〜どこ行くの〜?」

「着いたら分かる」

「遠い〜」

「歩いて十分で何言ってるのよ」

「ヒマリ、姫だから」

「それ便利な言葉じゃないからね」

そんなやり取りをしながら歩くこと数分。

彩羽が足を止めた。

「着いた!」

「え?」

ヒマリが顔を上げる。

目の前に広がっていたのは。

「畑?」

「キャベツ畑!」

彩羽は満面の笑みだった。

ヒマリは察した。

今日は長くなる。

◇◇◇

「見てよヒマリ!」

「うん」

「この葉脈!」

「うん」

「この緑色!」

「うん」

「この丸み!」

「うん」

「芸術だよね!」

「知らない」

彩羽は感動していた。

対してヒマリは若干引いていた。

一週間一緒に暮らして分かったことがある。

この人はキャベツになると怖い。

◇◇◇

そんな時。

近くで作業をしていた農家のおじさんが二人に気付いた。

「キャベツ好きなのかい?」

「大好きです!」

食い気味だった。

ヒマリですら少し驚く速度だった。

「へぇ〜嬉しいねぇ」

「いつもありがとうございます!」

「いやいや」

「本当にありがとうございます!」

「そんな感謝されるとは思わなかったなぁ」

農家のおじさんは苦笑いしていた。

ヒマリは思う。

多分、この人も困っている。

◇◇◇

すると、おじさんが収穫前のキャベツを見せてくれた。

彩羽は目を輝かせる。

「近くで見てもいいんですか?!」

「いいよいいよ」

「やったぁ!」

まるでテーマパークへ来た子供である。

ヒマリは畑を見渡した。

見渡す限りキャベツ。

どこを向いてもキャベツ。

キャベツ。

キャベツ。

キャベツ。

「向日葵の星みたい」

「え?」

「向こうは向日葵だらけだから」

「あー確かに」

彩羽は納得した。

「じゃあ向日葵の星にもこういう畑あるの?」

「あるよ」

「へぇ〜」

「向日葵の種の畑」

「お金畑じゃん」

「うん」

彩羽は少し考える。

そして言った。

「それ泥棒天国じゃない?」

「天国じゃないよ」

「違うそうじゃない」

◇◇◇

しばらく歩いていると、ヒマリはある事に気付いた。

「そういえばさ」

「ん?」

「キャベツって売るんだよね」

「そうだよ」

「つまりお金になるんだ」

「そうだね」

ヒマリは腕を組んだ。

数秒考える。

そして。

「じゃあキャベツはお金じゃん」

「違う」

即答だった。

「なんで」

「通貨じゃないから」

「向日葵の種もお金になるよ」

「通貨だからね」

「キャベツもお金になるよ」

「商品だからね」

「違い分かんない」

「私も説明してて分からなくなってきた」

二人とも黙った。

難しい話だった。

◇◇◇

帰ろうとした時だった。

「おーい」

農家のおじさんが呼び止める。

そして小ぶりなキャベツを渡してきた。

「よかったら持って帰りな」

彩羽の目が輝いた。

「えっ?!いいんですか?!」

「いいよ」

「ありがとうございます!!」

その声は今日一番大きかった。

大切そうにキャベツを抱える彩羽。

ヒマリは思う。

キャベツ一玉でここまで喜べる人、初めて見た。

◇◇◇

帰り道。

彩羽はずっとキャベツを見ていた。

「可愛いなぁ」

「キャベツに可愛いとかある?」

「ある」

「無いと思う」

「ある」

「強い」

その時。

彩羽が急に立ち止まった。

「どうしたの?」

「見て」

指差した先。

スーパーだった。

そして張り紙には大きく書かれていた。

『本日キャベツ特売!』

彩羽の目が見開かれる。

ヒマリは嫌な予感がした。

凄くした。

「彩羽?」

「ヒマリ」

「なに?」

「先帰ってて」

「なんで?」

「戦いが始まる」

「何の?」

「キャベツの」

「帰ろうよ」

「無理」

次の瞬間。

彩羽は走り出した。

「キャベツぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「だからなんで叫ぶのぉぉぉぉぉ!?」

休日の住宅街に、またしても叫び声が響き渡ったのだった。

すみません!遅くなりました!

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