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向日葵のお姫様!  作者: 日向 藍衣


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5/10

向日葵の種が使えない!?

翌朝。

「じゃあ行ってくるね」

制服姿の彩羽は玄関で振り返る。

「留守番よろしく」

「はーい」

「勝手に外出ないでね」

「多分」

「その返事が一番怖いんだけど」

「大丈夫大丈夫」

「全然大丈夫じゃなさそう」

彩羽は嫌な予感を覚えつつも家を出た。

◇◇◇

「暇〜」

そして十分後。

「暇〜」

さらに十分後。

「暇ぁぁぁぁぁ」

ソファに寝転がりながらバタバタ暴れるヒマリ。

「姫の仕事してた方がマシだったかも」

そう呟いた直後、

「いや、それは無いな」

即座に撤回した。

そんな時だった。

グゥゥゥゥ。

お腹が鳴る。

「お腹空いた」

冷蔵庫を開けてみる。

キャベツ。

キャベツ。

キャベツ。

キャベツ。

「キャベツしかないんだけど」

彩羽の食生活に若干の不安を抱いたヒマリは財布を取り出した。

といっても財布ではない。

向日葵の種が大量に入った布袋だった。

「買いに行こう」

そして普通に外へ出た。

◇◇◇

しばらく歩くとコンビニを発見。

「おぉ〜」

目を輝かせながら中へ入る。

お菓子コーナーへ向かい、適当にお菓子を三つ持つ。

ジュースも持つ。

アイスも持つ。

「完璧」

そのままレジへ向かった。

「462円になります」

店員が言う。

ヒマリは得意げに布袋を置いた。

ジャラッ。

向日葵の種がレジ台に広がる。

店員が固まった。

ヒマリは言う。

「462粒ね!」

「はい?」

「だから462粒!」

「はい?」

同じ会話が繰り返された。

◇◇◇

一方その頃。

学校の昼休み。

彩羽は購買でキャベツパンを探していた。

するとスマホが鳴る。

知らない番号だった。

「はい?」

『あの、○○コンビニの者なんですが……』

「はい」

『お知り合いと思われる外国人の女の子が……』

彩羽の顔から血の気が引いた。

『向日葵の種で支払いをしようとしておりまして……』

「ヒマリだぁぁぁぁぁぁ!!!」

購買にいた生徒達が驚いて振り返った。

◇◇◇

放課後。

彩羽はコンビニへ猛ダッシュしていた。

「すみませんでしたぁぁぁ!!」

店に入るなり頭を下げる。

レジの横ではヒマリが普通に座っていた。

「あ、彩羽」

「あ、じゃないのよ!」

「この人達、お金なのに受け取ってくれない」

「当たり前でしょ!」

彩羽は頭を抱えた。

ヒマリは不満そうだった。

「だってお金だよ?」

「向日葵の星ではね!」

「価値あるよ?」

「それは分かるけど!」

「一粒一円くらいだし」

「分かりやすいけど!」

話を聞いていた店員が恐る恐る尋ねる。

「この子のお金なんですか……?」

「違います」

「お金だよ」

「違います」

「お金」

「違います」

「お金」

「違います」

店員は途中で考えるのをやめた。

◇◇◇

結局、彩羽が代金を支払った。

店を出た後もヒマリは納得していなかった。

「なんで使えないのかな」

「地球だから」

「差別?」

「違う」

「向日葵差別?」

「そんな概念は無い」

「じゃあ何で」

彩羽は少し考えた後、言った。

「例えばさ。突然誰かがキャベツ持ってきて『これお金です』って言ったらどう思う?」

ヒマリは即答した。

「ヤバい人」

「その感覚」

「あー」

少しだけ理解したらしい。

「つまりヒマリはヤバい人になってたんだ」

「そうだよ」

「ショック……」

そう言いながら購入したお菓子を開けるヒマリ。

その表情は全くショックを受けているようには見えなかった。

そして数秒後。

「彩羽」

「なに」

「お金ちょうだい」

「嫌です」

「ケチ」

「当たり前でしょ」

向日葵の姫の地球生活は、どうやら前途多難らしかった。

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