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幕間 道は、もう見ない
手は、早いほうだと思う。
自分で早くしたわけじゃない。回ってくるもんを、順にやってきただけだ。屋根も、垣根も、縄をなうのも。誰かが持て余したもんが、こっちへ来る。来たら、やる。それだけだ。
あの朝も、道は見えとった。戸口からは、街のほうへ延びる道が、途中まで見える。
鍋は、火から下ろしてあった。土間に、履物が揃えてあった。誰かが置いていった芋が、ざるにそのまま残っとった。
……そういうのだけ、よう覚えとる。
村の衆は、よくしてくれた。
仕方ない、と言われた。運が悪かった、とも言われた。
そうだと思った。
ああいうのは才のある人のやることだ、とも言われた。
それも、そうだと思った。
思って、何年か経った。
井戸端で、いまでも同じ話が出る。街から人が来るのを待ってたら間に合やしない、という、あの話だ。
昔は、頷いとった。
いまは、頷かん。桶を提げて、待っとる。順番が来たら、汲む。
道は、もう見ん。
手は、止まらん。
――ある村の、若い男




