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僕の世界  作者: 0u0
第二章
43/65

幕間 道は、もう見ない

手は、早いほうだと思う。

自分で早くしたわけじゃない。回ってくるもんを、順にやってきただけだ。屋根も、垣根も、縄をなうのも。誰かが持て余したもんが、こっちへ来る。来たら、やる。それだけだ。


あの朝も、道は見えとった。戸口からは、街のほうへ延びる道が、途中まで見える。

鍋は、火から下ろしてあった。土間に、履物が揃《そろ》えてあった。誰かが置いていった芋が、ざるにそのまま残っとった。

……そういうのだけ、よう覚えとる。


村の衆は、よくしてくれた。

仕方ない、と言われた。運が悪かった、とも言われた。

そうだと思った。

ああいうのは才のある人のやることだ、とも言われた。

それも、そうだと思った。

思って、何年か経った。


井戸端で、いまでも同じ話が出る。街から人が来るのを待ってたら間に合やしない、という、あの話だ。

昔は、頷《うなず》いとった。

いまは、頷かん。桶《おけ》を提げて、待っとる。順番が来たら、汲《く》む。


道は、もう見ん。

手は、止まらん。


――ある村の、若い男

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