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「チッ……本当に口が減らねえ奴だな」


 現在のパートナーに対して励ましの言葉一つどころか、むしろ微妙に毒づかれたレオンは舌打ちをして、呆れ顔をする。


「なあ『レベル1(ザ・ワン)』? お前本当に俺に勝てると思ってんの?」


「……もちろん」


「そりゃ良かった。一人になった途端に逃げ出したら、どうしようかと思ってた所だ。この前はコーデリアに邪魔されたが、今日こそ分からせてやるよ。レベル1にしかなれない雑魚が冒険職になれる訳がねえって事をな」


 これはレオンにとって校舎裏での続きであり、そして、今日こそはシャミアもコーデリアの邪魔が入らない絶好のチャンス。


 レオンはここで圧勝して宣言通り「分からせる」つもりでいた。『レベル1(ザ・ワン)』が冒険家になれるわけない事を、目の前にいるイルミに、そして誰よりもシャミアに対して。


「かかって来いよ『レベル1(ザ・ワン)』。レベルと格の違いを教えてやるよ」


 レオンは剣を抜いていつも通り、下段に構える。


「…………」


 凄まじい威圧感をイルミは感じていた。今まで幾度となく絡まれはしたが、剣を持ったレオンと対峙するのはこれが始めての事であり、シャミアはこれほどの相手といつも喧嘩していたのかとイルミは思う。


 イルミを見据える眼光は鋭く、いつもの馬鹿にする嘲笑すら浮かべていない。


 レベル差が20以上あるイルミに一切の手加減なく本気で倒そうとしている様子であった。


 たかが『レベル1(ザ・ワン)』でも敵であるなら容赦はしない。そもそも、弱い人間が嫌いなレオンはウサギを狩るライオンの如く、弱者に対しても手を抜かなず、完膚なきまで追い詰める。


 イルミはそれが嬉しかった。

 

侮られ、見下され、蔑視され、手を抜かれては意味がない。


 相手の本気を打ち砕いて初めて認められる。


「じゃあ、行くよ……」


 イルミは心の中で復唱する。

 


 動きを止めるな

 足を動かせ

 武器を扱え

 捉えられたら終わり

 攻撃を喰らえば死ぬ

 レベル1なのを自覚しろ



 戦い前のルーティンとなったルディアの教えの復唱が終わると、短刀を構え、腰を低く落とし――地面を力強く蹴り飛ばした。


「――ッ!」


 速っ――と、レオンが思う時には既にイルミは短刀の届く距離まで近付いて来ていた。


 イルミの速さに驚きながらも反応をしたレオンは必死に構えた剣を切り上げるが、半身をズラし、それを回避する。


 そして次の瞬間には迫ってくる、イルミの攻撃をレオンは剣で弾いて、懐に入られるのを嫌い、距離を取ろうとするが、それを許さず、間合いを常に短くイルミは保とうとする。


「くそがッ!」


 レオンの怒り任せの攻撃は空を切り、その隙に一際深く踏み込んだイルミはレオンの腹部を短剣で殴りつける。


 そのままガードをする事も出来ず、レオンはもろにイルミの攻撃を鳩尾にくらう。


「ぐっ」


 レオンのHPバーが削られる。


 鳩尾に重い一撃を貰ったレオンはどうにか立ってはいるが、痛みを堪えているのが目に見えて分かる程であった。


 そんな大きな隙がレオンに生じたにも関わらずイルミは攻撃を仕掛けようとはしなかった。そしてまだ出し惜しみをしているレオンにワザと挑発するように


「こんなもんなの、レオン君?」



 プツ――と、レオンの中で何かが切れる音がした。


「調子に乗んじゃねえよ『レベル1(ザ・ワン)』が……」


 レオンは剣を中段に構えるとスゥ――と深呼吸をすると、手に持っている剣に風が纏う。片手剣スキルの『シル・フィード』を発動させる。


「分かったよ……分かってんだよ。でも、お前だけは認める訳にはいかねえんだよ俺は……!」


――俺はお前を否定する。


 どれだけ努力を積み重ねたか、挫折を乗り越えてきたか、逆境を力に変えてきたか、何度も彼女から聞かされた。


 だから侮るなと、アイツは出来る奴だと、必ず勇者になるのだと。


 自分を前にして、自分以外に向ける嬉しそうな顔でそう話す。


――認めねえよ、お前だけは!


「負ける訳にはいかねえんだよ!!」


 剣に纏った風がレオンの感情に呼応するように激しく吹き荒れる。


 レオンの気迫が、さっきより数段階も凄みが増して伝わってくる。


 思わず息を呑み、ここからが戦闘の本番だとイルミも武器と心を構え直す。


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