シャミアの提案
――ドサッ!
「!?」
背後で何かが落ちた音にイルミ達は反応すると、そこにはボロボロになった二人の男子生徒達がいた。
「結局こうなんのか……」
「なにもしてねえよ……」
倒れた二人が何かブツブツと言っているが、HPバーは二人とも0となっており、既に失格となっていた。
「おいおい、勘弁しろよ……」
倒された二人の後からガシガシと手荒に金髪を掻きながら一人の少年が姿を現し
「雑魚しかいねえのか、この大会はよ……」
「大丈夫よ。最後の相手はアイツらだから」
その隣でイルミもよく見知った柑橘色髪の少女が金髪の少年を宥める。
「でも、お前の言うようにするなら――」
「だから油断すんなって言ってるでしょうが!」
いつものように言い合いをする二人の名前をイルミは呼ぶ。
「シャミア……! レオン君……!」
やはり最後まで残っていた二人にイルミは嬉しく感じるが、同時に緊張が走る。要するに一番の強敵であると思っていたチームが残ったという事であった。
「おーす、イルミ。ちゃんと残ったみたいね」
普段と何も変わらない調子でシャミアはイルミに声をかける。
「うん、なんとかね」
イルミもそんなシャミアに対していつもと変わらぬ調子で返す。
――バンッ!
と、残り二チーム、イルミとコーデリア、そしてシャミアとレオンのチームだけになった事を知らせる花火が鳴る。
「さて、残りは私達のチームだけみたいね――ねえ、イルミ、コーデリアも。最後は――タイマン勝負にしないかしら?」
「…………」
シャミア達と戦う事があれば、漠然とではあるが、そう提案してくるだろうと考えていた。そして、その組み合わせは
「私とコーデリア。イルミとレオン。それで勝った方と決勝戦――ていうのでどうかしら?」
シャミアが大会に参加したのは元々、コーデリアに勝つためであるため、その組み合わせは妥当であるように思えた。それに――
「おい、そんなルール許していいのかよ『レベル1』? タイマン勝負じゃ、そこの女に守って貰えねえんだぜ?」
イルミはレオンとも決着をつけたいと考えていた。
「だから見縊るなって言ってんでしょ? それともなに? イルミにビビッてんの?」
「んな訳ねえだろ……俺はお前の事を心配してんだよ――勝てんのかよ、アイツに?」
「……当たり前でしょ」
そうでなければどうする。
勝つ。勝って居場所を取り戻す。
「僕はそれでいい――」
イルミはコーデリアの方を見る。
「私は……」
「いいから、勝負しなさいよ」
間髪いれずにシャミアがコーデリアに吹っ掛ける。
「昂ぶってしょうがないの。やっとアンタを相手に出来ると思うと拳が疼くのよ。黙って私の相手をしなさいよ」
「おー怖。学院の女王決定戦か。魔物もべそかいて逃げ出しそうだな。男で良かったぜ。死んでも混ざりたくねえよ、その勝負」
「アンタも黙ってなさい……」
茶化してくるレオンにシャミアは肘で脇腹を小突く。
「……分かった。私はアナタと戦う」
「そ、よかった」
「でも、覚悟して――サスフィール家の誇りをかけて私はアナタを倒す」
真っ直ぐシャミアを見据えて宣言する。
「【聖騎士】の誇りかしら?」
「そう」
【聖騎士】は強くなくてはいけない。そう祖母から教わったコーデリアは誰にも負けるわけにはいかなかった。そして、彼女が強くある必要な理由は
「だから――イルミのパートナーは譲らない」
「ぱ、【聖騎士】の誇りとイルミは関係ないでしょ!」
「関係ある。イルミは私が一生をかけて守ると誓った相手。私の初めての仲間だから、アナタにイルミは譲らない」
「リア……」
その仲間だと認めてくれている事を嬉しく思うが、やっぱり言い方をどうにかして欲しいとイルミは思う。
「譲るも何もイルミは元々――」
「どうでもいいっつうの!」
苛立つようにシャミアとコーデリアの会話の間にレオンが割って入る。
「誇りだなんだゴチャゴチャ言ってんじゃねえよ――勝ちゃいいんだよ。勝ちゃ。何を言おうが、結局、冒険家は実力が全てだろうが?」
「……そうね。悪かったわ、レオン。それじゃあ、互いの戦闘の邪魔にならない所まで移動しましょうか」
レオンの指摘で冷静になったシャミアは一度落ち着いて、場を仕切り直す。
「私達が移動するでいいわよね、コーデリア?」
「構わない」
こっち――とコーデリアはシャミアを誘導する。
「おい、負けんじゃねえぞ」
「アンタこそイルミに勝てたらいいわね」
「チッ、俺があんな雑魚に負けるわけねえだろ」
「いい加減にしないと足元すくわれるって――ま、私はコーデリアと戦えるからそれでいいんだけど。ここまで協力してくれたのには感謝するわ」
そう言い残してシャミアはコーデリアと一緒にレオン達から遠くへと離れていった。




