レオンの本気
レオンは一気に飛び出し、イルミへと襲い掛かった。
「っ!」
先程と打って変わり、攻めの姿勢が高まったその突撃にイルミも自分の素早さを信じて、立ち向かい――衝突する。
剣速の上がったレオンの激しい斬撃をレオンよりも「力」の低いイルミは、ルディアから教わった技術でそれをカバーする。
振り下ろされる剣に短剣で受け流し、弾き、舞うようにイルミはレオンの攻撃を捌いていく。しかし、レオンがスキルを使ってから決定的に違い、今度はイルミの方が攻め切れないでいた。
一撃の重みが違うイルミは、攻撃に転じる余裕が生じなかった。
――強い……!
強敵だと感じたザイドと戦った時でさえこれほどの凄絶さを感じる事はなかった。
スキルを使いこなすレオンの速くそして力強い剣術は口だけの男ではない事を認識させる。
技術とステータス共に驚異的であるレオンの実力を見てイルミは真っ向勝負を諦め、最も自信のある「敏捷」を更に活かし、縦横無尽に動き、ヒット&アウェイを繰り返し始める。
目まぐるしく動くことで、相手に捉えさせない戦闘方法に切り替えたのだった。
これはルディアとの訓練で攻撃を受けない為にイルミが身につけた戦闘方法の一つであった。
レオンが使っている「シル・フィード」は剣速を上げるスキルであるため、レオンの動き事態を早くするものではない。真正面からでは受け切れても、高速で動けば、ついてこれないとイルミは考えた。
「浅知恵がッ!」
戦い方を変えたイルミに対してそんな言葉を零すが、イルミの目論みは成功し、今度はレオンが守りの姿勢を取らされる。
ここまでしても一撃が遠く感じるイルミはレオンへの攻撃と平行して
「【根源となるは太陽の炎、漆黒の闇を照らす光となり、天を翔け馳せ敵を穿て】――」
呪文の詠唱を初める。動き回るイルミの足元に魔法陣が展開される
「なっ魔法!?」
まさかの攻撃にレオンは瞠目する。
素早く短文詠唱を完了させたイルミは少し距離を取って叫ぶ
「【ラフィーユ・スレイプニル】!!」
最上級冒険職【賢者】であるリディアに幼い頃から教わってきた魔法の威力は伊達ではなく、短文詠唱であるにも関わらず、六人パーティーにいた【魔法使い】の魔法を超え、大きく、そして速い火球がレオンに向けて放たれる。
「――ッ!」
意識外であった魔法攻撃をレオンは避ける事が出来ずに直撃し、爆発音が森に響く。
「はぁ……はぁ……」
魔法発動後、イルミに倦怠感が一気に襲いかかる。
リディアに魔法技能をどれだけ教わり、「知恵」のステータスや魔法の補助スキルを覚えたとしても、イルミが魔法を使うとレベルの関係か、他の人間に比べ消耗が激しく、初級魔法で尚且つ短文詠唱でないともたず、連発が出来ないという欠点があった。
ただ、今の一撃にはイルミも手応えを感じ、消耗に見合った攻撃であったと思う――が
「チッ――」
魔法の余韻で燃え盛る炎の中から舌打ちが聞こえた。
そして、次の瞬間にレオンを包んでいた炎は跡形もなく吹き飛ばされる。
「――なっ」
掻き消された炎に驚きの声をイルミは漏らす。
消された炎の中心にはレオンが立ってをり、その周囲では風が唸りをあげるように轟き吹き荒れていた。
「たく、小細工ばかりしやがって面倒臭え」
そう言って剣を軽く振ると、吹き荒れていた風が収束するように、その剣へと集まって行く。
「『シル・フィード』の風を――防御に……?」
そんな話はイルミも聞いた事がなかった。つまりは『武神の加護』を持つルディアですら知らない技をレオンは使った事になる。
「『シル・フィード』は風の力を借りるスキル。剣速を上げるだけが能じゃねえんだよ。風の出力を上げれば、防御にだって使える――まあ、発動は少し遅れちまったけどな」
よく見れば、頭上にあるHPバーが先程よりも減少しメモリが残り四分の三を少し切る程度となっていた。
直撃すれば間違いなく半分以上削れていたであろう魔法をその程度のダメージに抑えられ、魔法を使用した事での消耗に加えて、更に精神へと負荷が掛かる。
「さぁ――続きだぜ、『レベル1』」




