父上との話し合い
本日2話目の投稿です(少し短めです)
『登場人物説明』
エルドリック:この国の宰相
ラルフ:ジェイコブの取り調べを担当していた兵士。下っ端の警備局員
ザドラール:元警備局の隊長。罪を犯して牢に入っている。
次の日。
父上の時間が取れたので、いきなり呼び出された。
用件は報告書で伝えてあるから、後は最終確認だと思う。
指示された部屋に入ると、既に人が集まっていた。
護衛騎士は入れないので、部屋の外でレイチェルを待機させる。
円形の机に、宰相のエルドリック、父上、ディナン兄上の順番で座っていた。俺は宰相の右隣の席に座る。
俺と目が合うなり兄上が口を開く。
「アルマ、迷惑かけた。職務に忠実な男だと判断していたが、俺の見通しが甘かった」
俺と違って多くの人を動かして仕事しているのだから、その中にあんな男が混じってても仕方ない。
「兄上は忙しいですからね。もう終わった事なので大丈夫ですよ。それにレイチェルが優秀で助かっています」
気に病まないようにさりげなくレイチェルの話題を出しておく。
「そう言ってもらえるなら良かったよ」
兄上との会話が終わったので、報告書を手に取って読んでいる父上を見守る。
「アルマよ、流石に死刑は言い過ぎじゃないか?」
机の上に報告書を置いた父上が、難しい顔で死刑に難色を示す。
「そうですか? 妥当な判断だと思いますが。それに私が止めなければレイチェルに斬られてましたから。死んだ命なら有効活用した方がいいと思います」
「貴族達への見せしめか?」
こちらの意図を分かってくれたようだ。
「有り体に言えばそうですね。貴族の役割を履き違えてる輩が増えてきてると思っていましたので、丁度いいでしょ?」
昨日も愚かな貴族を捕まえたばかりだ。ここらで釘を刺しておいた方がいい。
「その優秀な頭をいつも発揮しておれば評価が上がっておったものを。いつも突飛な事ばかりしおってからに。まあ良い。ザドラールは処刑にする。エルドリックよ、皆には通達しておけ」
「はっ。それにしてもアルマ様は幼少時に次期国王と呼ばれる程に秀才でしたからね。やっと目覚めたのですね」
エルドリックは父上の指示に返事した後に俺に話を振ってきた。
「国王など器ではない。今のような身軽さが俺には合っている。というか、やっと目覚めたって酷くないか?」
エルドリックが俺を褒めたと思ったら違ってた。
失礼な事を言っている。
俺の問いかけにエルドリックは微笑んだまま答えなかった。
「父上には1日でも長く国王でいて貰いたいですね」
兄上は父上に長く王として采配を振るって欲しいとお願いしている。
俺としては不満はないのでそれでいい。
「わしにこやつの面倒を少しでも長く押しつけるつもりじゃな?」
あれ? 兄上が言ってた意味が違ったらしい。
なんか酷いことを言われているけど。
「皆して酷いです。用は終わったので、戻りますからね」
もう話をすることがないので、自室に戻るために部屋を後にした。
自室に戻ってから、警備局員を教育の話をするのを忘れたことに気づいた。まぁ後でいいか。
さて、本格的に事件の調査をしますかね。
「ジーン、俺はこれから事件の調査に向かうから、お前はコタローと一緒に残ってくれ。何かあれば送信デンデンで連絡して欲しい」
使い魔は常に一緒にいた方がいいのだが、可愛いコタローに凄惨な現場を見せたくない。
「分かりました」
ジーンは了承すると、全員分のイヤリング型の魔道具(受信デンデン)を取りにいき、皆に手渡している。受け取ってから耳に付ける。送信用デンデンは箱型なので、レイチェルに持たせることにする。今度ターニャに受信デンデンみたいなイヤリング型を作ってもらおう。
「それからターニャ。殺害現場なんでどうするかお前に任せる。付いてきてもいいし、留守番しててもいい」
技師であるターニャをどうするか迷ったが本人に決めてもらおう。
「作業中の魔道具があるから留守番してるっす」
「分かった。レイチェルは俺と一緒に来てもらうぞ」
「アルマ王子、了解しました」
殺害現場に向かう前にラルフの許に行き、三人で現場に向かった。
★★★
場所は城下町の商業エリアの先にある潰れた鍛冶場。
兵士達が現場に誰も入らないよう立ちふさがっているが、それを見物する野次馬が多い。
うっとおしい程に野次馬が多いな。いずれ無断で侵入するかもしれんから警告するか。
「諸君、ちょっと聞いてくれ。ここで事件があったのは否定しない。我々は少しでも情報が欲しい。見学してもよいが、ここで何を見たのか、何を聞いたのか、あるいは事件があった時にどこにいたのかを念入りに質問すると思う。それでもいいならここにいると……」
俺の予想通り、野次馬たちは立ち去り始めた。
「さすがですね。アルマ統括隊長」
ラルフは感心したのか俺を褒めた。
俺はついでとばかりにラルフに質問をした。
「そういえば事件から日が経ったけど、あの馬鹿隊長はどこまで調査してたんだ?」
いくら馬鹿でも隊長なんだから、それなりに調査をしてたはず。
「ほとんど何もしていないと聞いています。自分が活躍するために隊員に指示だそうとしていましたからね。死体も残っていますよ。調査再開したので検視のために治療術師の方を呼んであります」
信じられない話を聞いて頭痛がしてきた。
目をギュッと瞑り、こめかみを手で念入りに揉んだ。
「どうしようもないクズだな。愚かすぎて言葉も出ない。状態維持の魔術具を使えと命令しておいてよかったわ」
念の為に指示したが、功を奏したな。
腐った死体なんぞ見たくもない。




