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25・Xデーに向かう






寺東てらとうの上、もしくは同等の位置にいる者。

そして鳥居とりい本堂ほんどうさかき

見張り番のイズモとカスガ。狙撃手。

何かあった時に商品に自殺するように支持

する者。

その者と狙撃手はもしかしたら誰かが兼任

しているかもしれないが、


白生しろうを退けたこの者たちがBOL社のメンバー

ということになる。


少しずつ明らかになってくるBOL社の中身。

ひとつひとつに証拠を添えればめくることが

できるのだ。


「榊さん。本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ。これで終わりなんだから」


やはりなぜか榊は今回で終わりだと思って

いる。白生はそこには突っ込まずに当たり

障りのない返事をした。


「僕になにかできることはありますか?」


「ないよ。逆に動かずに普段通りしてて

ほしい」


鳥居と本堂、そして上の人間と言われて

いる正体不明の者は、果たしてこの榊の

交代願いに首を縦に振るのだろうか。


榊は何度も一緒に仕事をしているから

信用があるから大丈夫なのだろうか。


必ず成功させてこんなことは終わらせる

からと、そして下手に動かないように、と

もう一度言って榊は帰って行った。





次の日、白生しろうは言われた通りに足首に

包帯を巻いて杖をついて出勤した。

ズボンを履いているので包帯は直接見えない。


杖をついているのでどうしたの?と聞かれる

だろう。

その時はズボンの裾を上げて包帯を巻いた

足首を見せようと考えていた。


社内ではあまり会わない本堂ほんどうとこの日

たまたまエレベーターが一緒になった。


白生が普段は階段を使ってるということも

あるが、会うのは本当に珍しい。

二人きりだったので、白生はまた本堂に

探りを入れようと思った。


「ケガしたって聞いたけど足だったの?

大丈夫か?」


「ホントにすみません。階段を踏み外して

しまって。こんな時に…」


「仕方ないよ。こっち(バングル社)の

仕事も休めば良かったのに。

無理して出てきたんだろ」


「ありがとうございます。こっちの仕事は

座ってできるので大丈夫です。

あの、本堂さん、聞きたいことがあるん

ですが」


いくら二人きりとはいえ、エレベーターの

中ではBOL社の話はできない。

本堂もそれがわかっているので、昼休みに、

とだけ言った。



昼休みに白生が最上階の隠し部屋へ行くと、

本堂が一人で座っていた。


「すみません。お忙しいのに」


「いいよ。座りなさい。立ってたら痛むだろ」


杖をついている白生を見て、本堂は心配そうに

眉を下げた。


「あの、明後日の…」


紅苑ぐえんを売る日はもう明後日に迫っていた。


イセが死んでからは紅苑は平和に暮らしていた。

イズモとカスガは常に二人で紅苑の世話をして

いたので何事も起きてはいない。


今のところは予定通り進むことになっていた。


「明後日のことは連絡をもらってるよ。

市川いちかわくんにはさかきくんが連絡するんだけど…

まあいいか。せっかくここに来てくれたし。

榊くんが市川くんの代わりに行くことに

なったらしいよ」


なったらしい。この言葉を聞いて白生は

本堂に探りを入れて正解だったと確信した。


「そうなんですか。本当に申し訳ないです」


「大丈夫大丈夫。また次からがんばって

くれればいいんだから」


白生が行かないことになったからなの

だろうか。

本堂は機嫌が良かった。これで次の仕事まで

白生の寿命が伸びたので喜んでいるのか。


「交代は、上の方からの指示ですよね。

直接お詫びできないのが苦しいです」


「市川くんは律儀だね。心配しなくてもいい。

上の人も怒ったりしてないから」


榊は、鳥居とりいと本堂を説得すると言っていた。


しかし今の本堂の話を聞く限りでは、榊は

上の人に白生がケガをしたことを直接報告

して自分が代わりに紅苑の引き渡しに行く

ことの許可を得たのだ。


上の人のことは何も知らない、と言っていた

のに。本来ならば榊が言っていたように、

すぐ上の鳥居や本堂にまずは相談するものだ。


「次は絶対に気をつけます」


点と点が結ばれて線になっていくような感覚。

白生は本堂に深々と頭を下げて部屋を出た。





「なるほど、ね」


紅苑ぐえんはベッドに入って目を閉じ、口を動かさず

白生しろうと会話をしていた。


鳥居とりい本堂ほんどうも上の人間とメールなどでのやり

取りしかしたことがない。

誰も正体を知らないということなのだ。


「あと二日だろ。明日にはさかきから俺に何か

説明とかあると思う。

で、永久えいくの時のことを参考にするなら明日

紅苑はそこを出て成田の近くのホテルに

移動するんだろな」


「そうだろね」


父である川路源平かわじげんぺいは白生や紅苑の提出した

証拠を揃えて逮捕状を出すのだろう。


全員を捕まえなければ意味がない。

しかし鳥居と本堂は現場には来ないし、

見張り番のイズモとカスガも現場までは

来ないだろう。


誰かが捕まったことがわかったら、後の者

たちは確実に逃げる。


どうにかして全員を揃えることはできない

だろうか。


二人が考えていると父である川路かわじが会話に

割り込んできた。


「おつかれ。成田の近くのホテルに着いて

行くのはイズモかカスガのどちらか一人だ。

でも…イセの前例があるからもしかしたら

二人とも着いてくるかもしれないな」


紅苑と白生の考えを読んだかのように川路は 

そう言った。

そしてこの意見に紅苑も白生も頷いた。


「一人しか来ないようなら二人とも着いて

くるようになんとかしてみる」


成田空港からは朝早くの便で出発するので

前乗りするわけだが、ということは

見張り番は紅苑とホテルで一泊するという

ことになる。


一人だとまたイセのようになる可能性が

あるから二人で来るのではないかと川路は

踏んでいた。


「鳥居と本堂はどうするの?

榊は白生の代わりだから現場にいるだろう

けど…あの二人も引き摺り出さないと」


「うーん。それをどうしようか考え中」


「パパ。明後日だぜ?大丈夫か?」


ははは、と白生が笑うと川路も笑った。

上の人間とやらの指示でしか鳥居と本堂は

動かない。


ということは…


「なりすまして指示出すか」 


「信じないだろ」


「どうだろな。この仕事のことを詳しく

知っていて、尚且つ鳥居と本堂二人ともに

同じ内容のメールが届いたら信じるん

じゃないか?」


川路の言うことは一理ある。

イタズラメールにしてはコアな内容だ。

たとえいつも来るアドレスからじゃなくても

信じてしまうかもしれない。


「もし、信じなかったとしても何かあると

思って逆に現場には行きそうだよね」


「だろ?パパ頭良いよなあ」


「自分で言うなよ。まあ、やってみる価値は

あるか。てかもうそれしかないよな」


二人にメールを送るのは実行日ギリギリの

方がいい。

鳥居と本堂を現場に誘き寄せるのは川路が

担当することになった。


「白生くんはどうするの?」


「俺は尾行するよ。って言っても紅苑が

ホテルを出たぐらいからかな」


「連絡は取れるようにしといてよ」


川路と白生と打ち合わせをすませた紅苑は

目を閉じたまま考えていた。


結局のところどうなるかはわからないが

全員捕まえてもらわなければ話にならない。

できればまだ誰かはわからない狙撃手も。


売られてしまった人々や、命を落として

きた人々のために何がなんでも終わらせ

なければならない。


それだけを胸に、明後日を迎えるのだ。






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