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24・裏切り者には、死を。






「やめたほうがいい」 


「ん?」


紅苑ぐえんの尻に埋めていた顔を上げたイセが、

さるぐつわの取れた紅苑に気づいた。


「なんか言ったか?もっと強く結ばないと

だな。叫ばれたら大変だ」


「やめた方がいい」


「お前、しゃべれんのか」


一瞬、イセは素の顔に戻った。

紅苑は呂律の回らない話し方でやめた方が

いい、ともう一度言った。


「誰も気づかないよ」


「ダメ、イセが殺される」


紅苑の一言にイセの動きが止まった。


話に聞いていたが寺東てらとうは紅苑の上で死んだ。

薬で眠っていた紅苑だったが、もしかしたら

感覚として寺東の死を記憶しているのかも

しれない。


寺東が殺されたのを感じていた紅苑は、

イセが寺東と同じにならないように忠告

しているのだ。


「大丈夫だよ」


紅苑を仰向けにして上から重なる。

腕を回してその細い体を抱きしめた。


「バレないようにするから」


「ダメ、」


「じっとしてろ。叫ぶなよ」


聞いてもらえなかった。

紅苑にはもうどうすることもできない。


今夜のことがイズモとカスガにバレない

ように。そして挿入だけはさせないように

逃げ回るしかない。


紅苑の足を持ち上げて、イセは自分のモノを 

紅苑の中に挿れようとした。 


紅苑は尻を左右に振って抵抗する。

なかなか挿れることができなかったが、

紅苑の大腿や尻に刺激されてイセは達して

しまった。


「はあ、」


体を抱きしめながら腰を振り、紅苑の

大腿に自分のモノを擦り付ける。

イセの汗が次々と紅苑の顔に流れてはシーツの

上に落ちて行った。


さるぐつわをしていたタオルを取ってベッドの

下に投げ捨てたイセは、一生懸命に呼吸して

いる紅苑の小さな口を吸った。


「次は挿れるからな」


目を閉じている紅苑からの返事はない。

固くなった胸を指先で摘んで弄ると、イセの

興奮はさらに昂まった。


「はあ、はあ、」


爪を立てて弄られた紅苑の胸が赤く腫れて

いる。

汗を落としながらイセはその痛々しい胸を

舐めた。


「すぐにデカくなるから」


はあはあ、とイセはずっと荒い息を

繰り返している。


興奮した目で瞬きをしながら紅苑の体を

ひょい、と持ち上げて自分の股間に顔を

埋めさせた。


紅苑の口の中にねじ込まれたイセのモノは

もうすでに大きかった。


「ん、ん、」


「のど開けろ。奥まで挿れるぞ」


紅苑ののどの奥までイセは自分のモノを

押し込んだ。


吸い付くような感覚に脳天まで痺れる。

次は紅苑と一つになるつもりだったのに

イセの腰は勝手に前後していた。


「ヤバ、」


「んー」


「出すぞ」


紅苑は必死で息をしながら誰も来ないことを

ひたすら願っていた。


紅苑ののど奥で達したイセは、汗が吹き出た

肩を大きく揺らしていた。


紅苑の顎に指を当てて口を開けさせる。


暗闇に慣れてきた目で、のどの奥に溜まって

いる精液を確認してうれしそうに笑った。


「飲め」


紅苑はスー、と息を吸ってから、イセの

精液を思いっきりシーツに向かって吐いた。


「おい」


少しでも嫌われるように。そしてもう二度と

イセがこんなことをしないようにイセを

怒らせなければ。


しかし紅苑の願いはイセにはやっぱり

届かなかった。


イセはまた紅苑を仰向けに寝かせて胸に舌を

這わせた。胸から腹、腕などを美味しそうに

舐めている。


唾液に光った紅苑の体を見ていたイセの

モノがまた大きくなってきた。



カチャ。


組み立てられた重い鉄たちが擦れ合う

ような音。

紅苑はうっすらと目を開けた。


「イセ。俺たちを裏切ったな」


「…イズモ…カスガ…」


後頭部に拳銃を当てられているのでイセは

振り向けない。


その血走った目はじっと紅苑を見ていた。


「もう、もうヤらない!

てかまだヤってない!こいつもちゃんと

引き渡す!」


「信じらんねえよ。今も俺たちが出てったら

また続きをヤるんだろ?」


イセは震える声で叫んだが紅苑の上に乗った

たままではなんの説得力もない。

それに何を言われてもイズモとカスガはもう

決めていた。


紅苑は定まらない視線で天井を見ている。

その目は少し悲しそうだった。


イズモとカスガにはこれから起こることを

紅苑が憂いているように見えたが、廃人と

化している紅苑は単に犯されて疲れている

だけなのだろう。


「ヤらない!頼む!今度こそ信じてくれ!」


動けないイセは声を張ることしかできない。

イセに舐めまわされた紅苑の体が、暗闇で

てらてらと光っているのが不気味だった。


「裏切り者には、死を」


拳銃を持っているイズモの手にカスガが

そう言って手を重ねる。


イズモが後で自責の念にかられないように

二人で殺ったことにするためだ。


「や、やめ、違うっ!こいつが、」


イセは紅苑の体に惚れただけなのだろう。

寺東のように紅苑に惚れたわけではない。


最期まで自分は悪くない、紅苑のせいだ、

と言っているところからもそれは感じられた。


パン、とくぐもった音がして、すぐに焦げた

ような独特の匂いがした。

イセの頭に当てたまま発砲したので頭蓋骨の

中で響いたみたいな気持ちの悪い音だった。


イセがドサ、と紅苑の上に倒れる。

その額からは真っ赤な血があふれ、紅苑の

首や胸を染めた。


ベッドの下に落ちていたタオルでイセの

額を押さえ、そのまま二人で担ぎ上げる。


鉄階段の上にイセを寝かせて、イズモと

カスガは紅苑の部屋に戻って来た。


また自分の上で男が死んだのに、紅苑は

さっきと変わらずぼんやりと天井を見ている。


真っ赤に染まった首と胸。そしてだらり、

と伸ばした足にはイセの精液があちこちに

付着していた。


「怖かったよな。もう大丈夫だから。

遅い時間で悪いけどもう一回風呂に入るぞ」


イズモとカスガは二人で紅苑を風呂場に

運んで丁寧に全身を洗った。


一対一だとイセのようになるかもしれない。

これからはなんでも二人でしよう、と誓った。


風呂上がりの紅苑を壁際に座らせてシーツを

換える。

マットにまで血が染みていたのでそれも

新しいものに交換した。


ベッドはキレイになったが部屋はまだ

焦げ臭い。

それがイセを殺してしまったことが夢では

ないと教えていた。


紅苑を寝かせてからイズモとカスガはイセの

死体と血のついたシーツとマットを一階に

運び、車に積んだ。


少し走ったところの海に投げ込む。


白いシーツに巻き込まれたイセはドス黒い

波に飲まれすぐに見えなくなった。







イヤホンから聞こえた、パン、という音に

白生しろうは目を閉じた。

イセが殺されないか、と心配していた紅苑ぐえん

顔が真っ先に浮かんで胸が痛かった。


裏切り者には、死を。


寺東てらとうが決めたことだと鳥居とりいは言っていた。

そしてイズモとカスガもそれを守った。


信用できなくなった、嘘をつかれたという

ことは裏切られたも同じ。

仲間であるイズモとカスガがもう一度だけ、と

やったチャンスをイセは自分の手で握りつぶし

たようなものだ。


早く終わらせなければならない。

終わらせるなら全てを終わらせなければ。

根絶やしにしないとまたどこかで芽吹いて

しまったら大変だ。


焦ってはいけない。

一つ残らず終わらせるのだ。



次の日、本牧の倉庫にいる紅苑の報告を

するために白生は最上階の隠れ部屋に

向かった。


昨日と同じく部屋にいたのは本堂ほんどうだけ。

紅苑のことを報告したが、昨日イセが

死んだことを本堂は知らないようだった。


「ご苦労さん。予定通りいけそうだな。

当日の詳細はまたさかきくんから聞いて

もらって、それまでは市川いちかわくんは普段通り

仕事をしててくれたらいいよ」


「わかりました」


もう話は終わったが、白生は本堂を少し

探ろうと思った。


「あの、僕が川路紅苑かわじぐえんの視察に行くことに

なったのは上からの指示だ、と本堂さんは

おっしゃってましたよね」


「言ったよ」


「寺東さん…もしかして生きてるんですか?」


白生が真剣な顔をすると本堂はプッ、と

吹き出してから笑った。


「おもしろいこと言うなあ。

残念ながら寺東さんはお亡くなりになったよ」


「ですよね」


「あ、そうか。上の人間、って言ったから

寺東さんだと思っちゃったのか」


はい、と白生が頷く。

本堂はまた、ははは、と笑った。


「実は寺東さんの上にまだいるんだよ。

上、というか寺東さんと同じぐらいかな」


突拍子もないことを言い出した白生の

ことを可愛いとでも思ったのだろう。

本堂は白生が探りたかったことを自ら話し

始めた。


「寺東さんとその人がこのBOL社を

作ったらしい」


「僕、お会いしたことありますか?」


「ないよ。私たちだって会ったこと

ないんだから」


寺東が死んでからは、その人からメールや

電話で指示が入る、と本堂は言った。


「バングル社の人なんですかね」


「だろうね。外部ではないよ」


それにしても会ったこともないその人からの

指示で動いていたとは。

鳥居も本堂もそのことをなんとも思わないの

だろうか。


「寺東さんがいた時からいるにはいたん

だけど、表に出て指示をしていたのが

寺東さんでその人は裏で動いてるって

聞いてるよ」


無理やり連れて来られたのに、白生はもう

すっかりBOL社のメンバーだ、と本堂は

思っていた。


だからこそ、川路紅苑の引き渡しもうまく

いってほしいと願った。


「長話してしまいました。すみません。

失礼します」 


「市川くん」


席を立った白生に、本堂は手を伸ばした。


「あと5日。なんとか成功させよう」


「はい。よろしくお願いします」


本当は、無事を祈る、と言いたかったが、

そう言うと白生が配達員が危険な仕事だと

思い込んでしまう。


配達員という名の付き添い人は、なにか

トラブルがあればその場で狙撃手に殺られる。


そうならないように祈るしかないのだ。


隠し部屋を出た白生は考えをまとめながら

最上階の通路をひとり歩いていた。


どうやらまだ榊と交代することを本堂たちは

知らない。

そして白生が紅苑との関係を疑われている

ことも知らないようだ。


寺東より上の人間は一人で動いているのか。






紅苑ぐえんを海外に連れて行く日があと3日に

せまった。

仕事を終えた白生しろうが自宅にいると突然榊さかき

やって来た。


詳細は榊から、と本堂ほんどうが言っていたが、

榊は白生を逃すために自分が代わりに

紅苑の引き渡しに行くと言っている。


榊が来たのはその辺りの話だろう。

白生は ドアを開けて榊を部屋に入れた。


「これ、買って来た。明日からこれを

つけて仕事は杖をついて来てくれ」


ドラックストアのビニール袋の中から、

榊が包帯やそれを固定するネットを出した。


「杖、ということは足…ですか?

こんな適当でバレないですか?」


「大丈夫。私が保証人になる。

中途半端に手とかよりも足をケガしたという

方がいい。杖は玄関に置いてあるから」


明日にでも早速、鳥居とりいと本堂に自分が

白生の代わりに紅苑を連れて行くと

申し出るから、と言って榊は頷いた。









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