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ハッピーエンドの世界線  作者: さくら優


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5/12

5.肝試し

昼間のうだるような暑さよりはまだマシだが、夕方になっても続く蒸し暑さに、柊二はハンディファンを顔に近付けた。


対する上杉は、この程度なんでもないような顔をしている。さすがは体育教師だ。


「意外と参加者いるんですね」

「そうですね」


受付に行くと、ウォークラリーの地図と、出発する順番の紙を渡された。1番から順に、1分おきにスタートするらしい。柊二たちは32番だった。


「21番から30番の方〜、スタート地点にお集まりくださーい」


ぼんやりとスタート地点を眺めていると、井上の姿を見つけた。友人と2人で参加している。どうやら彼らは30番のようだ。


すぐに自分たちも呼ばれた。間は1組しかないので気付かれるかと思ったが、2人は話に夢中で、柊二たちには気が付かなかったようだ。


「32番の方〜、スタート!」


合図があり、柊二たちは歩き始めた。



   ✦✦✦


ウォークラリーは、スタートしてからゴールするまでの時間が決められていて、その時間に近い方が点数が高い。時間は伏せられているため、予想でいくしかない。ウォークと言うくらいなので、普通に歩けばそこそこ良い点数がとれるようには設定されている。


地図を見ながら、途中のポイント地点でスタンプを押して先へ進む。


上杉は割とおしゃべりな方なので、沈黙で気まずくなるようなことはなかった。


最近反抗期だという娘の話を、適当に聞き流しながら歩いていると、前方で誰かがしゃがみ込んでいる姿が見えた。


「あれは、うちの学校の生徒ですかね?」


しゃがみ込んでいたのは、井上と同じチームの男子だ。確か名前は高木。


「2人共、どうした?」

「先生? なんでいるの?」


声をかけると、井上は驚いた様子で目を丸くした。


「参加してるから。それよりどうした? 怪我したのか?」

「ちょっと転んで。けど大丈夫です⋯、っ!」


高木は立ち上がろうとしたが、痛そうに顔を顰めて足を押さえた。見ると足首が腫れているようだ。ここは一応遊歩道になっているが、大量の落ち葉で足場が悪く、しかも昨日雨が降ったせいで濡れて滑りやすくなっていた。


「無理すんなって」

「あはは⋯。かっこわる」

「高木君、先生がおぶって行こう。少し戻れば係の人がいたから」


上杉は高木に背中を向けてしゃがんだ。高木は高校生にもなっておんぶなんてと渋っていたが、この状況では仕方がないと諦めたようだ。


「小野先生、私たちはこのまま棄権になると思うので、この先は井上君と行ってください」

「私も一緒に戻りますよ」

「いや、先生はこのままゴールして、参加賞のシールをお願いします。途中棄権じゃもらえない」

「⋯わかりました」

「蒼汰〜。俺も頼んだ〜」

「ん。りょーかい」


そうして、上杉と高木は元来た道を戻っていった。


「井上たちも参加賞目当てなのか?」

「たちっていうか、高木がね。妹に強請られたみたい」

「そうか。上杉先生と同じだな。娘さんに頼まれたって言ってた。シール流行ってるのか⋯?」

「そうみたいだよ」


遊歩道を抜けてしばらく歩くと、墓地が見えてきた。地図ではこの中に入るようになっている。


明らかに歩調が遅くなった井上に、くすっと笑って声をかける。


「どうした? こういう所苦手か?」

「⋯別に。ちょっと疲れただけ」


井上は、ふいっと顔を背けて不機嫌そうに言った。強がったところで、どうせすぐにばれるだろうに。


墓地の中に入ると、更に顔が強張る。


いつもの自分なら、こういう時は強がりを真に受けてやるのだが、今日は蒼汰から事前に言われていたために、気付かないふりは出来ない。


不安そうな表情で周囲を見回しながら進む井上の手を掴むと、そのまま歩き始めた。


「えっ? ちょ、先生⋯!?」

「いいから行くぞ。ここ抜ければすぐゴールだろ」

「⋯⋯うん」


手を繋ぐというよりは、大人として子どもの手を引く感覚を意識するようにして歩いていると、井上がキュッと手を握ってきた。


その仕草に、なぜか心拍数が上がったことには気付かないふりをして、柊二はひたすら前だけを見て歩き続けた。


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