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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
三方向作戦! 三カ国を巡るリーヨンちゃんとピコちゃん編
77/363

9月13日 オークの国 リーヨンちゃんがニコニコする理由

 おそらく平成26年9月13日

 剣暦××年8月13日


 オークの国オーバーラブ

 王都より西 ヘンゼル渓谷キャンプ場



 王都の状況が掴めない。

 こういう時、ジンさんが王都の情報などを報告に来てくれるのが常だが、今回はどこに逃げるかを伝えていないし、そもそも今は彼は僕の案内人ではない。

 他に守らなければならない人達が、いるのだ。

 なら、ユキくんに守ってもらう? いや、いくら優秀でも、初めて異国を案内ししている14歳の少年にそんな責任を押し付けるのも夢見が悪い。

 そして、リーヨンちゃんには、負い目すらある。

 それでも、そんなことを言えば、彼女はきっと「兄と会うと決めたのは、私です。この状況は私の選んだもの。カンテラ様のせいでもおかげでもありません」とか嬉しそうに言うのだ。

 昔、僕が彼女に言った言葉を真似て、ドヤ顔で言うのだろう。



 ※※



 今日は一日キャンプ場で過ごす。

 しかし、オークに野宿を楽しむなんて文化があるとは思わなかった。

 彼らは森に入ったり山を下ったり、自然に分けいって狩猟をするのだが、他の種族よりも強い体を活かして、何日も籠ることを平気でする。

 だから、今更自然の中で寝泊まりして焚火して星を眺めるなんて、するのかと思っていた。 

 だが、、僕も野宿をするようになって思う。

 厳しい自然をしる人達だからこそ、普段はできない、そういうことにゆっくりと時間を費やす趣味を持つのだろう。


 しかし、今はシーズンオフ。

 誰も来ない。好都合。


 ユキくんは相も変わらず薪拾いに熱中し、僕は地図とにらめっこ。

 リーヨンちゃんは甲斐甲斐しくご飯作ったりお茶入れたりしてくれる。

 材料どこから調達した?


 しかし、リーヨンちゃんは手際がいい。

 僕と会う前から一人で生き、僕といない間も一人で生きて来た。

 いつもニコニコと、こんな状況でもニコニコとお茶を入れてくれる。

 僕が守る必要ないかもしれんな。


 何の行動も取れずに、一日を無駄に過ごしてしまった。

 正直、次にどういう行動を取ればいいのか全然思いつかない。

 こういう時は、落ち着いて、現在進行している状況を整理して、自分が取れる行動を書きだすのだ。

 僕の、今回の旅の勝利条件は何だ?

 まずは、3人が無事に帰ること。

 どこに帰るのだ?

 ……、やぱり、僕の家か?

 まとまらない。結論は明日にしよう。


 夕飯時、薪拾いから帰ってきたユキくんに、さすがに今日はキャンプファイヤーできないよ、と伝えると、無表情に、悲しげな眼をした。


 夕食も、それなりに量を食べた。

 だから、リーヨンちゃんは材料をどこから調達したのだろう。

 また、ニコニコこっちを見てた。


 寝る時間。

 今日も、ユキくんとリーヨンちゃんと、3人で身を寄せ合って寝る。

 流石のリーヨンちゃんも、毛布とかは調達できないのね。


 ユキくんにオーク語を通訳してもらって、質問する。

『どこからご飯とかお茶の材料持ってきたの?』

「そこの森に食べれる草とかきのこがたくさんありますし、私が一人でここにいる時にそこの石窯で干し肉作ったのの残りであり合わせました。あと、キャンプ場には必ずオーク茶葉が自生しているんです」


『手慣れてるね。野宿はよくしてたの?』

「仕送りはあっても、草原の国は物価が高くて、貧乏暮らしでしたから、食べれるものを確保するの、得意なんです」


『たくましいね。おかげで、僕らも餓えずにすんでる。ありがとう。君が笑ってくれるおかげで、大分救われてる』

「カンテラ様。笑うことには、人を前向きにする力がある。だから笑いたくない時以外はにっこり笑うんです。本当は、今も泣きたいくらい怖いけれど、でもそれじゃ何にもならないから、せめて……笑顔くらいは、なくしたくないんです」


 ああ、こんちくしょう。それ、ずっと前に、僕がリーヨンちゃんに言った言葉じゃないか。


 勝利条件が決まった。


 この子を、笑わせる。


 お腹が痛くなるくらい、げらげらと笑わせてやる。

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