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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
死霊祭が終わった!草原の国自宅での日々編
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8月18日 草原の国 召喚状が届く あと舞踏会へのお誘い

おそらく平成26年8月18日

 剣暦××年7月18日


 草原の国

 僕の家。



 城より召喚状が届く。難しい言葉はわかわないのでデミトリに代読してもらうが、どうやら、僕の不始末に対する申し開きの場を提供する、とのことみたいだ。

 ……まあ、確かに皆勘違いしてるけれど、命令無視して行方不明になって勝手に他国と約束とりつけて帰ってきたような奴、まともな組織人なら信用しないよな。


 でも、言い訳を考える時間は与えてくれるのだからありがたい話だ。


 それよりも、その後デミトリが言いだしたことのが僕にはびっくりだった。

 しかし、考えさせられもする。



 ※※


「……以上が、本日法務局より届いた召喚状の全文です。ご質問はございますか?」

 デミトリの説明を聞き終えて、とりあえず一つだけ訊くべきことがある。

「その手紙の内容、というか言葉の選び方からすると、法務局は僕のことまだスパイかなんかだって疑ってるのかな」

 痩せて、皺が目立つ初老の男は、顎をさすりながら、言いあぐねている様子でいたが、すぐに応えた。

「そうですな、というよりも、断定して動いておりますな」

「えー」

「屋敷のまわりを怪しげな男が数人うろついております。おそらく、この召喚状を受け取って焦った旦那さまが慌てて不穏な行動を取れば、取り押さえるつもりなのでしょう」

「罠なの? じゃあ、さっき手紙にあった査問会ってのは、しないの?」

「それはそれでばっちりされることでしょう。どちらにしろ有罪にはなるかと」

 冤罪おっ被せる気ですか?!

「いえ、旦那さま。旦那様には王命違反、ホビットの国よりの資源略奪、王城の爆破、王都警備兵への暴行等の罪状がございますれば、まともな行政官なら殺してしまいたいと思うところです」

 こんちくしょう、半分以上は僕の友達のしたことじゃん。

「ただ、旦那様は国王陛下のお気に入りでございますので」

 きょとん。

「あれ、王様って僕のこと嫌いなのかなくらいに思ってたけれど」

「旦那様とお会いしてから、イリス王女殿下はよく微笑まれるようになりましたから」

「いや、僕姫様に微笑まれたことないよ、常に不遜な笑みしか見たことないけれど」

「まあ、それはおいおい。とかく、現実的には外患誘致で投獄、しかる後に牢内で不審な死を迎えるという計画でしょう」

 一難去ってまた一難とは言うけれど……。

「この世界は、どうしても僕を排除しないといけないのかな」

「旦那様は人間としては、尊敬と好意に値するお方です。ただ、今現在の社会の仕組みとは、遭いいれることはできない生き方をなされますから」

 交わってはいけない、異なる国同士の人間を引き合わせることが、いけないということ。

「……だからって、僕が死んだところで、世の中の動きがどうこうなるわけでもないでしょうに。だって、この世界に住む人がそれを望んでるんだから」

「それはもはや、融和主義リンカーを通り越して世界廃滅主義と呼ばれるものです」


 えらい言われようだ。ならば、人間の国に住む人間ヒューマンでありながら日本語は喋れるし、僕みたいな危険人物の世話は焼くデミトリは、一体どうなんだと。

「……僕からすれば、デミトリも十分に世界廃滅主義者だと思うのだけれど」

 ぼやいてみせると、デミトリは大げさに一礼を取り、

「私には、主義主張というものはございません、ただ主家の繁栄のみに、心血を注ぐのみでございます」

 本心で言ってるのかはわかわない。


 一年前、自分の済む家を探している時に、紆余曲折ありこの屋敷を手に入れることになった時、日本語を喋れる使用人を募集したら、やってきた爺さん。

 出自について訊いたことはないけれど、なんでも手際はいいし、一緒にいて疲れないから採用して、留守の多いの僕の代わりに屋敷の運営の全てを任せている。

 それなりに広い家だけれど、外から見て廃屋に見えないように手入れをしてくれるありがたい存在だ。


 なんで無駄に剣の扱いがうまいのか、とか五ヶ国語喋れるのかとか、諸国の内情に詳しいのかについては、無視することにしている。



 そんなデミトリだが、無視できないことを言い出した。



「そこで旦那様、本格的に結婚についてお考えいただきたいのです」

 意味がわかりません。

「な、なんで?」

 すると、なんで?という返事は想定していなかったのだろう、困った顔になっている。

「なんでも何も、旦那様ももうじき30になろうというのに、お相手すらいない。それでは、一家の主としては心許ありません。タカマチ家の後継者を残し、この国に確固たる足場を作る。それもこれから旦那様が生き残る術でございます」

 いや、その発想はなかった。

「地球、という国ではどのようなものかは存じませんが、グラスフィールドでは28にもなって子供もいないのは、やはり社会的に風聞が悪いものですし、旦那様は恋人すらいない。出入りするのは怪しげな犬に亜人ども。屋敷にはこのような胡乱な爺と片言の神語を使う小娘一人」

 あ、もしかして、僕社会不適合者?


「ですので、結婚について、具体的にお考えいただきたいのです」

 ……そうは言ってもなあ、本当に相手がいない。


「地球に、想う人でも?」

 いればいいんだけれど、残念ながら地球人時代から、こうなんだよ。


「旦那様は、地球に戻りたいとお考えですか?」

 そりゃ、ふるさとだから帰りたいよ。


「旦那様のこれまでの言動からは、そう読み取れません」

 ここの生活楽しいから。


「ならばこそ、旦那さまはこの世界の人との交わり方を覚える必要があります」

 つまり?


「舞踏会に、お出でになりませんか?」

 え、えらい高いハードルだね。


「ちなみに、明日です」

 ああ、ジンさん。無茶ぶりってこんなに面倒なものだったんだね。


 

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