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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
死霊祭が終わった!草原の国自宅での日々編
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8月17日 草原の国 メイドのイオちゃんから「お兄ちゃん」と呼ばれることに

 おそらく平成26年8月17日

 剣暦××年7月17日


 草原の国グラスフィールド

 僕の家。



 昨日のジンさんとの会話で考えたが、やはり特別頑張ってくれたイオちゃんには、報償、というか、特別ご褒美的なものをあげたいなと思う。

 前にジンさんは男には勲章、女には花、みたいなことを言っていたけれど、イオちゃんは花をもらって喜ぶタイプだろうか。

 いや、多分受け取ってはくれるんだろうけれど。


 もう、わかんないので、本人に欲しい物がないか、訊いてみることにした。


 そうしたら、とんでもないものを頼まれた。


 どうしよう。




 ※※


 今日も一日家の中で静養。

 なんか、僕最近暇を見つけては負傷しているような気がしてきた。

 日記を見ても、何回か病気にかかったり体調不良になったことばっかり書いてる。

 ……、まあ、普段と違う様子を記録するための日記だもんね。

 とりあえずすることがないので、本を読んだり、今回協力してくれた人たちに感謝の手紙を書いたりして一日を過ごす。

 ああ、働かずに食う飯はうまい。


 しかし、自分一人では家の中に何があるのかさえわかない。紙をどの引き出しにしまっているのか、そもそもこの家ペンはあるのか? 家人を呼ぼうにも、呼ぶための取って付きの呼び鈴はどこにあるのか?

 仕方ないので、少し大きめの声でメイドを呼ぶ。

『イオちゃん』

 十秒程して、扉をノックする音がして、女の子が入ってきた。

 僕と同じ黒い髪の、僕と全然違う痩せ形で背の低い眼鏡の女の子。

「旦那さん 何か用です?」

 彼女の日本語は僕が教えたはずなのに、何故かイントネーションが関西風である。

 あれだろうか、僕の日本語は、この世界の人にはこう聞こえているのだろうか。 ちなみに、僕のことを旦那さんと呼ぶのは、『ご主人様』とか『カンテラ様』と呼ばれたくないなあと思った当時の僕が、雇い主の呼び方として教えたもの。

 今にして思えば、普通にカンテラって呼ばせとけばよかったかなあ。

 まあ、それはさておき。

 早速呼びつけた用事を説明しなければ。

『僕 手紙 したい 書く 道具 どこ 出す 魔女 以外 方法』

 手紙を書きたいので書く道具をどこにしまっているか教えて欲しいのと、魔女郵便以外に方法ないかなあ、ということを訊きたかったのだが、僕の剣祖共通言語は通じたのだろうか。

 しかし、そこは僕の思考は大抵読み切ってるイオちゃん。

「ちょい 待って」

 と言うや、部屋から出ていき、一分もしないうちにペンと紙と辞書と、何故か小さな椅子を一つを持ってきてくれた。

「わからん 言葉 あったらゆーて」

 と、部屋の隅に椅子を置くと、ちょこんとそこに座った。

『イオちゃん 仕事 大丈夫』

「へーき デミトリ 説明した 用があったら ゆーて そもそも 家事はとーに終わらしとる」

 おかしい、僕は「とーに終わらしとる」なんて日本語を教えた覚えはないのに。


 デミトリか、奴が仕込んだのか?!


 日本語を使ってくれる人が増えるのはうれしいけれど……なんか調子狂う。


 やはり言葉は使わないと覚えないと思い、できるだけ日本語を使えるデミトリではなく、剣祖共通語と簡単な日本語しか使えないイオちゃんに雑用を頼んだり、色々と話かけるようにしている。

 もちろん、いやがらせと思われてはいけないので、デミトリには趣旨は説明しているが。

 デミトリは、なんだかニヤニヤしながら「左様でございますか。ならばそういうことに致しましょう」とか言っていたけれど、なんか僕がイオちゃんにモーションかけてるとでも思ってるのだろうかあの爺さんは。



 とりあえず、誰に手紙を書こうか。今回の冒険でも、いろんな人が力を貸してくれた。

 一番はイオちゃんとデミトリと、もちろんジンさんだが、彼女らはまあ身内みたいなもので。やはり、人質救助から戦闘までまさかまさかの大活躍を果たしたホビット忍者軍団を派遣してくれたホビット王と、通商条約について検討してくれると明言してくれて僕の立場を保証してくれたオーク王。彼らにはそれこそ一度出向いてお礼を言わなければならない。

 まずは、手紙を書こう。

 しかし、王様に手紙なんてどうやって書けばいいのだろうか。

 こんなことはイオちゃんに訊いても仕方ないし……、いや、待てよ、本当にそうか?

『イオちゃん』

「何ですか旦那さん」

『王様 手紙 書く 礼儀 知らない どのように 書く』

 僕が何を言いたいのだろうか、と少し首を傾げていたが、了解したようにまっすぐにこちらを見直す。

「心をこめて 書くのがよろし」

「その通りだね、ありがとう。イオちゃんの言うとおりだ」

 思わず、素で日本語で返事してしまった。イオちゃんは、「ありがとう」は聞き取れたのだろう。少しはにかんで

「どういたしま」

 何故に略した? 

『「どういたしまして」だよ』

 と訂正したつもりだったが、イオちゃんは不思議そうに首をかしげる。

 え? なんで?

「旦那さん ワンコさんに「ありがとう」言われて、「どういたしま」言うてた」

 あっちゃー。僕のせいか。というか、ジンさんわんこさんて呼ばれてるけれど……。

 一応、綺麗な日本語覚えて欲しいし、言っておくか。

『僕 ジンさん 仲いいから、略した だけ 真実は 「どういたしまして」』

 すると、全然納得していない風のイオちゃんは最後に言った。


「旦那さんと私 仲好くない?」


 あっちゃー。

「「どういたしま」でいいよ。ペンと紙ありがとう」

「どういたしま」

 言えて満足したのか、なんか少し嬉しそうな顔で、部屋の隅に座ってる。


 僕は僕で、早速手紙を書こうと筆を取るが、彼女の視線が気になって文字の続きが書けない。

 ちらりと見やると、イオちゃんは大きな瞳をもっと大きくして、わき見もせずに僕を見てる。

 どうした? 僕のどこら辺に観察して面白い要素があるのだろう。

 うーん、なんか会話した方がいいよね。

『イオちゃん 欲しい物 ある? この前 すごい 働いた お礼に 欲しい物あげる』

 イオちゃんは、僕がそういうようなこと言うのわかっていたのだろうか。ノータイムで答えた。

「お兄ちゃん 欲しい」


 誰だ、デミトリか、デミトリが仕込んだのか。


 そう言えば、お礼だとかお詫びだとか、何かにつけてイオちゃんには欲しいもの買ってあげてたからなあ。でも、僕もさすがにお兄ちゃんは買ってあげられないなあ。


『なんで お兄ちゃん』

 気軽に訊いたけれど

「私今、オカンと弟妹6人 養ってる。私一番お姉ちゃんだから。私にもお兄ちゃんいたら 助けてくれてたら 人生少しマシになってたかも」

 結構真面目な話だった。


「だから、旦那さん。私のお兄ちゃんになって」


 いや、その理屈はおかしい。


『イオちゃん』

「はい」

『つまり 給料 アップ したら 幸せ?」

「違う、お兄ちゃんと呼ばせてほしい。それだけ。それだけで少し 幸せ」


 ……ジンさんよ。僕と彼女は、君が思ってるようなのではなく、もっと純粋な関係なのだよ。


『イオちゃん 仕事中 旦那さん 又は カンテラ 呼んで。 二人の時 好きなように 呼んで』

「……お兄ちゃん」

「はい」

「お兄ちゃん」

「はいはい」


 草原の国で起きた一連のテロ事件をも己の手のひらで転がした謀略の天才とは言え、やはり14歳の女の子なんだなあ、と思う。



 しかし、それから二時間後、遊びに来たジンさんが言うには


「カンテラよ。わが友よ。お前、メイドに二人きりの時にはお兄ちゃんと呼ぶようにと言ったそうだが」

 

 何でそんな悲しそうな眼でこっちを見るの。


「お前には何の罪もない、だから正直に言ってくれ。お前は……、お前は、子供でないと駄目とか、そういうことなのか?」


 何でそんな真剣な眼でこっちを見るの。



 うーん、よっぽど嬉しかったのか、イオちゃん言いふらしたのか……?


 14歳なら、もう少し分別がついてもいいのに……。


「お前、レミィやシャラク、というか、姫様にこのことが知れたらどうなると思ってるんだ」


 おい、やめろ!


 

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