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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
草原の国へ帰ろう!ドワーフの国旅行編
42/363

8月16日 草原の国 自宅  ジンさんと僕の愚痴 あとイオちゃんについて会話する

 おそらく平成26年8月16日

 剣暦××年7月16日


 草原の国グラスフィールド

 王都バーミューダ

 僕の家



 昨日の夜に派手に行われた死霊祭は、言うなれば前夜祭のようなもので、今日の昼間が祭の一番大事な行事が行われる。

 国中の祭司が自分の担当する区画の住人を集め、代表して死霊を慰めるために祈りを捧げる。

 そして、今夜は昨晩のような馬鹿騒ぎはせずに、家族で厳かに食事を取るのが正しい祭なのだとか。



 昨日の夜に、滅茶苦茶をしてしまった僕は、とりあえず自宅謹慎をして一日を過ごす。

 本当は、僕も慰霊祭に出たかったのだけれど、昨日王都を震撼させた爆発事件の黒幕としては、静かにしているのが一番いいらしい。


 ぶっちゃけ、14日にダークエルフを助けに行った時に負った傷がまた痛みだしたので、一日寝てる破目に。

 

 結局、僕が連れてきたレミィちゃん達の面倒とか後始末も、デミトリとイオちゃんに任せてしまった。


 イオちゃん、僕よりも疲れてるだろうに……。


 ※※



 昨日の今頃、全ての計画が圧倒的破綻を示したにも関わらず、死霊祭の会場で決着をつけるという目論見だけが順調に進んでいたのは、ひとえにイオちゃんの尽力のおかげだった。

 トラブルの度に適宜修正を加え、独自に計画を再編成し、僕がいない王都で僕が思った通りの絵図面を作り続けてくれた。

 ただの、人間ヒューマンの女の子の仕業とは思えない。

 昔から凄い頭のいい子だとは思っていたが、まさかここまでとは思わなかった。

 なんで、僕みたいな奴の家でメイドしてるのか、本当に謎だ。


 今日は一日ベッドで寝ている。

 正午

 お昼ごはんを食べて、おやつの皮むいたりんごをぺろりといきながら、見舞いに来てくれたジンさんに昨日のこととか、僕の代わりに見聞きしてもらった外の状況を教えてもらっていた。

 とりあえず、緊急の用事はない。後一日位病気療養の名目で休んでもいい、とのこと。

「それだけの働きはしたんだ、ゆっくり休め」

 そう、ジンさんは言ってくれるけれど、昨日記録をつけていて、今回はあまりにも僕の計画が杜撰だったことに凹んでしまっている。

「いや、王都の中がどうなってるかわからないから、どう転んでもいいようにルーズな計画にして、機転の効く連中を召集して作戦に踏み切ったんだろう?」

 それはそうなのだけれど、実際にことを起こしたら、徹頭徹尾、イオちゃんが全てを取り仕切り、何もかもの段取りをつけて、僕が呼んだメンバーがそれを次から次にブチ壊してイオちゃんがフォローする、という2日間だったのだ。

 ジンさんは気にするな、という。

「大体いつも、そんな感じになるじゃないか。適当に作戦立てて、ぶっつけ本番。そこで一番有能な奴に全てを任せて、一番の勝負どころでお前が決める。今までの難題も、そうやって解決してきたじゃないか、今まで何も言わなかったし、そういうものだと、受け入れていたんじゃないのか?」

 それは、そうなのだが。

「でもね、イオちゃんは今回のことに何の関係もしていないのに、一番しんどいところを負担してくれて……」

 ジンさんは言葉を止めた。僕が、愚痴を言いたいんだと気付いたのだろう。

「今回は、レンちゃんが帰ってきてくれたり、久しぶりに楽しい旅だったから、浮かれてた。僕が楽しんでる時、あんなに泥だらけになって働いてくれた人がいることを忘れていた……。デミトリが言ってたんだ。僕から無事だって手紙が届くまでの3か月、イオちゃんも、だいぶん無理してたって……」

「だったら」

 そこで、ジンさんは遮った。

「働いてくれたその分、しっかりと労う。それが主人にとって一番大事なことだろ」

 ああ、そうだなあ。

 りんごをぱくり。

「どうせ、昼飯を作ったのも、このリンゴの皮をむいたのも、そのイオって娘なんだろうけどな」

 うぐ。

「どうやら、この広い屋敷に使用人とメイド一人ずつとか極端なことしてるんだろ?」

 うぐ。

「結局、彼女を適当扱いたくないと言いながら、こき使ってる。その女なしでこの家で生活できないような仕組みになってるんだろ」

 ……。

「……相手もプロの家政婦なんだろうから、お前が生活能力低いことはわかってるよ。それでも力になってくれているんだ見合う報酬を、用意してやれよ」

 まずはそういうことだね。


 戸を叩く音がして、入室してきたのはイオちゃんだった。

 そう言えば、ジンさんはイオちゃんと会うのは初めてだったかな。

 食器を下げに来たみたいだけど、さっきはデミトリが持ってきてくれたよなと思って、訊いてみる。

『イオちゃん デミトリ どこ』

 練習も兼ねて、イオちゃんに片言の剣祖共通語を使ってみた。イオちゃんはイオちゃんで、僕が教えてあげた片言の日本語で返事をしてくれる。

「城や 旦那さん やったこと 謝んりょる」

 なぜに、関西風なのだろうか。

「カンテラ」

 ジンさんが、なんだか驚いた顔をして、イオちゃんを見ている。そう言えば、まだ紹介が済んでなかった。

「ジンさん、彼女がうちのメイドのイオちゃん。イオってのはあだ名で本名は別にあるんだけれど、なんか今のニックネームが気に入ったらしくて」

「カンテラ」

 ジンさんの開いた口がいつまで経ってもふさがらない。

「どうしたの?」

 指差す手も震えている。

「この娘が、イオか……?!」

「そうだよ?」

 そう言えば、イオちゃんもジンさんを見るのは初めてだった。

 今度はこちらを不思議そうに眺めているイオちゃんに声をかける。

『イオちゃん これ ジンさん 僕の とても 大事な友達 手紙によく書いた』

 ジンさんを紹介すると、なんか丸眼鏡をきらりと光らせてジンさんの方を向いて、流暢な剣祖共通語で何か言う。

『-------』

 ジンさんも丁寧に返す。

『-------』

 挨拶が終わると、一礼し、僕の前の食器を下げて、退室していった。


 よかった、イオちゃん犬頭人を見慣れてないから、びっくりしないか不安だったけれど。


「カンテラ」

 ジンさんは、また額に皺をよせている。

「どうしたの? なんかイオちゃん変だった?」

「変だった? ってお前な……。あの娘、年はいくつだ」

「14」

「……。子供じゃないか」

「でも、有能だよ?」

「別に子供であることが悪いとは言っていない。俺も12で独り立ちしたからな。でも、お前、イリス王女殿下の時になんて言った? 10も年下の娘相手にそんな気持ちになんてならない、って言ったよな。なんでさらに年下の女を囲ってるんだ」 

 ……何を言い出すんだ、この人。

「いや、イオちゃんは普通にメイドとして雇ってるだけだから」

「こんな広い屋敷で、若い娘を一人だけ雇って自分の世話の全てをさせているってのが、もはやいけない」

 ……そう言われると、そんな気がしてくる。

「むしろ、下心何もないってことの方が不自然だろ」

「でもさあ、レミィちゃんだって小さいじゃん」

「あれはドワーフの生態で、あいつ自身は成人してるからな。……カンテラ、これからの俺の案内人としての立ち振る舞いに関わる、というかとばっちりを喰らわないために、今一度確認する。お前、あの娘とは本当に何もないんだな。気持ちの問題じゃない、何か具体的にしてないだろうな」

「な、ないよ。二人で買い出しに出かけたりはするけれど、特別なことは……、あ」

「なんだ、『あ』ってなんだ?!」

 昨日、一緒に喫茶店で軽食を取ったのは、ジンさん的にセーフなのだろうか? なんか藪蛇になるのは嫌だから、もうちょっと軽いエピソードでごまかそう。

「イオちゃんの服と眼鏡を一緒に買いに行ったくらいだよ」

「デートじゃねーか!」


 ジンさんは、自分がストイックで、色恋なんてくだらねーみたいなことをよく言う癖に、恋愛主義なところがあるよなあ。


「ジンさんあのさあ、誰かと二人で買い物に行ったくらいで、なんでもデートになるわけ?」

「異性と二人で買い物に出かけたなら、十分デートなんだよ、この世界ではそうなんだよ。地球のことは知らないが。そもそもあんな娘どこで拾ってきた」


「路地裏で行き倒れてたんで、家に連れてきて雇っただけだよ」

「ちょ、ばっ、おまっ」


 この人、こんなにテンション高かったっけ?


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