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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
草原の国へ帰ろう!ドワーフの国旅行編
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8月14日 昨日の悪夢の話 僕がカンテラであるということ

 おそらく平成26年8月14日

 剣暦××年7月14日


 草原の国 不明

 星詠み石場


 洞窟で、打ち合わせをした後、朝食と昼食を兼ねて食事を取って、正午過ぎに来た馬車で、レミィちゃん達は移動した。

 僕とジンさんは草原の国にもあったストーンサークルで、最後のキャンプ。

 昼間はいろいろあった。

 まあ、あった。




 昨日の夜は、悪夢を見た。そのせいで、今日は一日気分が沈む。



 

 少し前に、僕と旅をしてくれた黒麗鬼ダークエルフのレンちゃんは言った。

 僕が、カンテラが閉ざされた国々をまたいで旅することで、異国人同士がお互いを知り、世界がつながっていくとしたら。

 その時、案内人として生きる流浪の民達は、不要になるのではないか?


 それを恐れたレンちゃん達ダークエルフは、僕の命を狙う世界廃滅主義者の依頼を受けて、僕の殺害を図った。

 案内人の中でも、通訳や交易のためでなく、諜報や暗殺のような血生臭い任務を受け持つ闇の住人。

 ホビットの真似事とは違う、マジ物の異世界の忍。

 


 昨晩、去年の夢を見た。

 僕と、ジンさんと、そしてレンちゃんの3人で焚火を囲う。

 エルフというのは声が綺麗だから、そういう歌でも教えたらすぐに人気者になると思って、レンちゃんに讃美歌とか浜崎あゆみとかを歌わせようとしたのだけれど、「音痴だから」と嫌がって、続いてくれなかった。

 なら、ジンさんはどうよ、と話題を振ったら「俺は地球の言葉わかるんだから、お前らが何を歌ってるのかも知ってるんだぞ? 何がうれしくて色恋の歌なんぞ歌わにゃならん!」とか言って、猛反対しながら豆をぼりぼり食べてた。

 僕がぶーたれると、そのやりとりを見ていたレンちゃんがけたけた笑っていた。

 ジンさんが、豆を食べる動作が、ツボにはまったらしい。

 どこがおもしろいのかわからなくて、思わず笑った。


 こんな夢を、見ることもある。




 夜中、眼が覚めて、今見た夢を反芻して、悲しい気持ちになった。


 もう一度寝る。



 次に、小人の国で、一人逃げた時のことを夢に見た。

 僕に刺客が放たれたという情報が入り、アレグロさんを巻き込むわけにはいかないと、ジンさんとアレグロさんには別ルートを通ってもらい、僕は一人帰る予定のルートを走った。

 そして、待ち伏せしていた15人のダークエルフ。

 その先頭には、レンちゃん。最後に別れて、一か月もしない内に。

 誕生日プレゼントに花束をあげて、喜んでくれてからちょうど一カ月の日に。

 レンちゃんにお腹を刺された。

 あー、これは痛い。死ぬなあ、と思った。 

 けれど、レンちゃんは言った。

「カンテラ様からすれば、私達なんてつまらない、どうでもいい存在かもしれません。でも、私達だって、人間なんです! あなたを殺して……。私達にだって、幸せを祈る権利くらいあったていいじゃないですか!」


 吐き捨てたその言葉を聞いた時、何と思ったか。


 僕達と別れた後に何があったのか? 一体、どんな物語が展開されたのかもわからない。知らないのにいきなり刺さないで欲しいなとか、捨て台詞はもう少し相手にもわかるように言って欲しいとか、君らが人間なのと僕の殺害に何のつながりがあるんだよダークエルフは思い込みの激しい生物だなおいとか、いろいろ思ったけれど、そう、一番強く思ったのは。


 僕は絶対に死ねないと思った。


 こんな風に誤解されたまま死ぬことだけは、絶対に。


 思ったことは覚えてる。その先は覚えていない。

 気が付いたら、襲撃された森から100km先にある猫獣人の集落で看病されていた。

 自力で切り抜けたのか、やっぱり思いなおしたレンちゃんが助けてくれたのか、それとも僕も知らない第3者の介入があったのか。

 それは、知る必要があれば、これから知るだろう。


 うなされていたらしい。


 今度はジンさんが起こしてくれた。

 

「どうした?」

 というジンさんの問いに、僕もまた問いで返した。

「ジンさん、僕が世界中を回るせいで、案内人は辛い思いをするんじゃないだろうか」


 恥ずかしい話だが、何も考えずに助けを求めるようにジンさんに言ってしまった。

 ジンさんは、この3か月僕に起きたことを思い出したのだろう、そして、僕の問いを反芻して、答えてくれた。

 

 彼は……。



 恥ずかしいから、書くのやめよう。


 とりあえず、ジンさんが、慰めてくれた。僕は、がんばるぞ。




 ※※



「俺の人生で、何人もの人間を案内してきた。人間もいる、ホビットもいる。エルフも案内した。いい奴もいた。嫌な奴もいた。こいつとなら、国の垣根を越えて友情を築けると思った奴もいた。そう思って、そんなことは無理だとわかった奴もいた」


 昨日の夜。密約の洞窟の奥。


 寝苦しさとは別の冷や汗で体中びっしょりの僕の肩を、がっしりとつかみ、ジンさんは言葉をつづけた。


「当時は辛かった。でも、今なら全ての出会いを肯定できる。楽しい出会いも、悲しい出会いも、それでも全ては出会うべくして出会った。この世で、俺達亜人だけが許された異国との交わりに、犬頭人としての務めに全霊を捧げる」


「そういう考え方ができるようになったのは、お前に出会ったからだ。お前のそういう生き方を真似したいと、本当に思って、俺は変われた」


「お前達地球人は、この世界に影響を与える。中でもお前は世界の在り方そのものを変えるだろう。それを危険視する案内人もいる。正直なところ、俺もお前とつるんだせいで、一族から異端視されている。もしかしたら、俺自身が狙われるかもしれない。それでも、俺は、お前を出会ったことを後悔しない」


「それは、レンも同じだ。ダークエルフを笑わせることができる男が、この世に不要であるはずがない。俺達は、お前に救われたんだ。辛い思いなんてするものか」


「だから、自信を持て。言ったじゃないか、薄暗がりの山の中で見たカンテラの話を。あんな、ほんのちょっと先を照らす灯でも、人を安心させることはできる。そういう人間になりたいと」


「お前は、俺達のカンテラだ」


 

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