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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
草原の国へ帰ろう!ドワーフの国旅行編
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8月14日 追記 レンちゃんと仲直りする

 大事なことを忘れていた。

 そうそう、レンちゃんと再会して、彼女と指揮下37名のダークエルフとの契約を済ます。


 どうも僕の敵にあたるフレイムロード候(偽)は、僕の暗殺に失敗した暗殺者の皆さんを罵った後、解雇してしまったらしい。



 あ、アホだ。この剣祖文明圏で謀略を図るにあたって一番有能な人材がダークエルフだってわかっていない。

 しかも彼らは契約で動くんだから、僕が再雇用するということに想像力をちょっと働かせたら、飼殺しにしておくのが一番いいのに……。


 ジンさんが言うには、「自分を生死不明の重症負わせた相手を仲間にしようとは普通思わん」


 ……あ、そう言えばそうか。


 まあいいや。これで、もし力業の勝負になったら、こっちの勝ちが決まった。


 明日は明日で、不安要素たっぷりだけれど、久しぶりに僕、ジンさん、レンちゃんの黄金トリオ復活で、嬉しい。

 夕飯が、とてもおいしかった。雑な味のホビットパンだったけど、なんかおいしかった。


 追伸 その夕飯中にレンちゃんから『ダチョウの騎士』というおとぎ話を教えてもらった。戦争中、捕虜となった仲間から「来るなよ。絶対に助けに来るなよ」というメッセージを受け取った、ヨロイダチョウに乗った三人組の騎士。絶対に助けに敵陣に飛び込んだという話。

 「まさか、その騎士は三つ葉の紋章でもつけてた?」と訊くと驚いた様子で「ご存じだったのですか?!」との回答。

 あー、そのお話。流れ着いた地球人の創作だな。




 ※※



 正午過ぎにレミィちゃん達を馬車で送り、ドラゴンのグーさんの背中に乗ったシズカちゃんとトモエちゃんは死霊祭の招待客として一足先に草原の国へと向かった。

 久しぶり(と言っても2.3日ぶり)にジンさんと二人。ダチョウに乗って次の目的地に出発。


 ダチョウ移動中に、ジンさんは何度も言った。


「昨日のことだがな、忘れろ」

「忘れられんよ」

「いいから、忘れろ。国交が開かれると案内人の需要は増加するに決まってるだろう。俺達の生活はむしろ潤う。理由はそれだけだ! だから俺の言ったことは忘れろ!」


 ダチョウ移動中に、ジンさんは何度も言った。




 流石はタフなヨロイダチョウ。一時間もかからずに、目的地にたどり着く。

 前に、ドワーフの国で見たあのストーンサークル。

 まったく同じような形の石の並びで、まったく同じような寂れ方をしていた。

 ここも、まったく手入れされていないらしい。

 ジンさんとしても色々物思いに呟きたいのだろうけれど、今日は省略。

「なあ、カンテラ、お前、明日の茶番が本当に成功すると思ってるのか?」

「そりゃあ、思ってるよ……。どうだろ? 何かしら失敗はすると思うけれど修正は効く、くらいに考えてる」

「真の目的は、何なんだ? お前にとっての勝利条件は何だと考えて行動している?」

 歩きながら、なんか知的な会話してるなあ、なんて考えてた。

「とりあえず、明日の夜、姫様が公衆の面前に登場しさえすればどうにかなると思ってるよ。実際、フレイムロード候(偽)を糾弾できなくても、王様と国民の前で、姫様は世界廃滅主義になんて傾倒していないし、アレグロさんがホビットの国のスパイじゃないってことを証拠と共に公言できれば、それでなんとかなると思ってる」

「だが、偽物が政治工作をするのを黙ってみているのか?」

「本当はね、草原の国の情報部は偽物が成り変ってるって知ってるし、近衛も逮捕の準備を進めてるよ。フレイムロード候(本物)の身柄を確保でき次第、動くつもりさ」

「……どこでそんな情報を」

「先月来た姫様からの手紙」

「……え?」

「先月来た姫様からの手紙」

「……黙ってた理由は?」

「剣祖共通語の読み書きが、あんまり得意じゃないって話したでしょ? 昨日やっとその部分まで解読できた」

 ジンさんは、なんか、なんかすごい顔をした。



「……お前といると、人生に必要なゆとりの量について、考えなければならん」

「ゆとりはあるだけあった方がいいよ。というわけでね、そもそも草原の国の行く末について僕達が考える必要ないじゃん。それは、その国に任せようよ。僕達は、僕達の身を守ること第一ね」

「その場合、お前の命が狙われることは変わらないぞ」

「だから、優秀な護衛を今から調達するんだよ。ついでに、流れに任せて姫様が犯人の捕縛を命じたりするかもしれないから、できるだけ多く」

「まったく、人選が思い浮かばないが、誰を呼んだんだ?」

「ダークエルフ」

「……え?」

「ダークエルフ。脱獄した時に、タマちゃんに頼んで探してきてもらった。蛇の道はヘビとは言うけれど、タマちゃんって猫耳少女の割にアングラ系だよね」

「……」

 ジンさんの額に刻まれる皺は、消えない。

「なあ、カンテラ」

「うん?」

「お前さ、結構わざとそういうことやるだろ、俺のリアクションが見たくて」

「そ、そんなことねーし」

「あのなあ、普通、自分を殺そうとした奴雇うか?」

「腕の立つ護衛なんて言われたら、一人しか思い浮かばないもん」

「なんでもなあ、型破りなら良いってもんじゃないんだぞ? 付き合わされるこっちの胃腸の身にもなれよ」

 そう言いながらも何か、嬉しそうな顔をするジンさんも大概だと思う。

「いいじゃん? ほら、本場ホビットパン、胃に優しいよ」

 石の神殿の内側に入る。

「昼飯食ったばっかりだろ……。それで、このざまで、あいつにかける言葉なんてあるのか?」



 石の環を組み合わせて作られた祭殿。


 その真ん中。


 石つぶてだらけの土の上。



 褐色の肌に白い短髪の女性が、土下座していた。


 顔は見えないけれど、誰かは知っている。


 面前には、短いエルフ刀が差し出されるように地面に置かれていた。


 僕はさらに歩く。環の中心に向かって。

 ジンさんは、そこで歩くのをやめた。



 近づきながら、レンちゃんを見つめ、確認する。


 うーん、やっぱり、怨むって気持ちにはなれなかった。


 だから、再会したら言おうと思った言葉で再開する。


 その後頭部を見下ろす位置まで近づいて、それでも無言で額を地面にこすりつけるレンちゃんに


「レンちゃん、誰がどうでもいい存在だって? いてもらわんと困るよ」



 常に白面、鋭利冷徹ってイメージを独占するダークエルフも、泣く時は鼻水たらすわ顔を真っ赤にするわ。


 泣き喚くレンちゃんをあやしながら、しかし、僕とレンちゃんが仲直りするのはいいとして、僕の護衛をすることは可能なのかをどうやって訊き出すか、悩む。


 困ってジンさんを見ると、なんかちょっとうるうるしてた。


 天を仰ぐ。どう考えても人間でしょこの人らも。



 

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