第六話
マルゲリータピッツァが好き
俺の部屋に入るなり、ジークがふざけたことを言うので正しておこう。
「ジーク余計な詮索はするな⋯⋯コイツは【聖勇騎士教団】の実験体の一つだ。」
それを聞くとジークが目を少し細めながら言う⋯⋯
「アスター家領内の【聖勇騎士教団】の施設に侵入したのですか?」
「俺がそんな、馬鹿げたことをすると思うか?盗賊どもから奪った戦利品だ。」
ジークが少し呆れたように片眼鏡を拭きながら言う。
「⋯⋯失礼いたしました。すぐに着替えと食事を用意させます。」
⋯⋯そういえば名前を聞いていないな。
「名前はなんていうんだ?」
俺の服の裾が掴まれ見る。
(依存心が強いが⋯⋯使えるならそれで良い)
「クリスタ⋯⋯です。アレン⋯⋯⋯様」
「俺がこの服を着てる時は【カラス】と呼べ。」
ジークに口止めを忘れていたが⋯⋯今更遅いか。
(クリスタ⋯⋯その身に合う良い名だな)
※クリスタ目線
アレン様がジークと言われる初老の執事に話しかけられている⋯⋯仲が良さそう。
アレン様の袖を掴んだが目が合うだけで何も言われない⋯⋯
(アレン様の隣りにいるだけで⋯⋯胸の奥が温かい⋯⋯)
目の前の執事が手を差し伸べられるが⋯⋯アレン様から離れたくない⋯⋯
「俺の前で、そんな姿で居たいのか?」
アレン様がそう言いながら私の頭を撫でる⋯⋯執事さんがアレン様に聞こえないように耳打ちする。
「アレン様の隣にいたいのなら⋯⋯美しい姿でいなくてはいけませよ。」
アレン様に背中を押され部屋の外に出る⋯⋯アレン様から離れてしまった⋯⋯
執事さん⋯⋯ジークさんが話しかけてくる。
「何か、食べたいものはありますか?ご用意したしますよ?」
私は⋯⋯⋯料理を食べた事がないから⋯⋯わからないわ⋯⋯施設で与えられてたのはドロっとした流動食だけだったわ。
「⋯⋯なんでも良いです。」
※ジーク
「⋯⋯なんでも良いです。」
振り向き、アレン様が連れてきた女性⋯⋯クリスタ様の顔を一瞬見る⋯⋯
(血色が悪いですね⋯⋯おそらく⋯⋯鉄分が足りていませんね。)
「お肉などは好きですか?折角ならアレン様が好きな【ハンバーグ】にしますか?」
「アレン様が⋯⋯好きなんですか?」
「えぇ、アレン様の幼い時からの好物でございます。さぁ、こちらで着替えてください⋯⋯アレン様の予備の服ですが⋯⋯ちょうどいいでしょう。」
扉を開け促すと、コクリと頷きながら部屋に入っていき扉を閉める⋯⋯
「私は料理の用意をしてきますので、風呂に入り着替えた後、アレン様のお部屋にお戻りください。」
「はい⋯」扉の奥から聞こえてくる声を確認し、調理場に向かう。
(アレン様の分も用意いたしましょうかね?)
※アレン
ジークとクリスタが出ていった後⋯⋯今後の動きを決めようと、羊皮紙を手に取り書き出していく。
俺はこれから【王立魔導学園】に通わなくてはいけない。
主人公を避けて通ることはできないだろう⋯⋯できるだけ近づかないことが、1番なのだが⋯⋯ストーリーがそれを許してくれるだろうか?
本編は王立魔導学園から始まる⋯⋯現段階で俺が死ぬ事はないが⋯⋯本編が始まったら死ぬ可能性が出てくるはずだ。
最初の難関は⋯⋯俺自身のイメージアップを図らなくてはいけない。
【アレン・ヴァルハイト・アスター】の死亡フラグの一つには⋯⋯【アスター家の失脚】
四大貴族でありながら嫡子は属性魔法を持たないゴミ⋯⋯いわば落ち目。
故に、他の三大貴族【シルフィード家】【ハインライン家】【バルバロス家】の他の勢力に干される⋯⋯ライバルは少ないほうが良いからな。
アスター家は【俺】自身が優秀であり、アスター家は落ち目ではなかった⋯⋯と思わせなくてはいけない。
学園入学時、成績トップとしての入学⋯⋯これが1番映える。
貴族は外見が一番大事だ⋯⋯下級貴族から舐められたらお終いだ。
(うまく行かなかった時は、全員殺)
コン コン コン
部屋がノックされ考えを改める⋯⋯俺の目標は自由に生きることだ⋯⋯どうせなら貴族としてトップに立ちたい。
「入れ」
「失礼⋯します」
ドアを開け入ってくるのは俺と同じ軍服姿のクリスタ⋯⋯なんでコイツも着ているんだ?
風呂上がりなのか⋯⋯湿った銀髪が頬に張り付き、虚ろだった薄紫の瞳に潤いが見える。体が温まれば安心するものだろう。
(風呂は心の洗濯とは、よく言ったものだな。)
「似合い⋯⋯ますかね?」
クリスタが頬を染めながら聞いてくる⋯⋯似合っているな。
くすんでいた銀髪は輝きを帯びていて、俺と同じ黒に銀の刺繍が施された軍服だが⋯⋯一回りほど大きく萌え袖になっている。正直に言うと、とてもかわいい。
「俺よりも似合ってるな。」
それを聞いた、クリスタの顔がパァッと輝き薄紫の瞳がアメジストの様に輝いて見えた⋯⋯拾ったからには、しっかり育てないとだな。
コン コン コン
「ジークだろ?入れ」
ジークがワゴンを押しながら入ってくる⋯⋯部屋に赤ワインとトマトの濃い香りがする⋯⋯デミグラスハンバーグか!
「お食事をお持ちしました⋯⋯アレン様の好きなハンバーグにございます。」
そう言いながら、部屋のテーブルへ食事をセッティングする⋯⋯2人分。
「温かいうちに召し上がってください。」
俺が床に座り、手を合わせるが⋯⋯
「クリスタ、お前も座れ⋯⋯温かいうちに食べるぞ」
棒立ちのまま動かないクリスタに声を掛けると、俺の向かいに座る。
「食べて⋯⋯いいんですか?」
クリスタが聞いてくる。
「一人で食べてもつまらないだろ。」
ジークが声をかけてくる。
「私もいますよ。アレン様。」
ジークは一回無視し、クリスタがハンバーグを切り分け口に運ぶ。
「⋯⋯ゴホッ⋯⋯美味しい⋯⋯」
(こんなに温かいご飯は⋯⋯初めて⋯おいしい⋯)
クリスタの頬に涙が落ちるが、口に運び続ける。
「料理は逃げない、ゆっくり食え。」
クリスタが食べ終わった後、俺のハンバーグを眺めていたから分けた⋯⋯よく食うな。
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アレンは意外と優しいところがあるんですよ!
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