第五十九話 相談
「えっと、さっきの悪の組織のことなんですけど……」
「そうなのね」
師匠は優しい表情で頷く。
怒られるかと思ったけど……よかった。
ほっとしながら、話し始める。
「……悪の組織の人たち、ボスとしてのわたしに優しくしてくれて……」
「うんうん」
「倒される未来を知っているのに、黙っていて……なんか、罪悪感が湧いて……」
ミリシアには、言えなかったけど……大人の師匠には相談できた。
ミリシアは少し驚いていて、わたしの方をじっと見ている。
「そうね……どうしても嫌だったら、やめればいいと思うわ。でも、それを我慢してでも叶えたいのなら……頑張るしかないわね」
「そっか……」
「夢を叶えるのは、大変なのよ……だけど、その辛かった時間があるからこそ、達成感があるのだと思うわ」
師匠は、少し懐かしそうにしながら優しく言う。
わたしは、その言葉にこめられた重さに、思わず黙ってしまった。
『……気づけなくて、ごめんなさいね』
『あ、ううん、気にしないで……少し、嫌だっただけだから』
少ししょんぼりしているようなミリシアに、慌てて言う。
だけど、ミリシアは変わらず落ち込んでいるみたいだ。
どうしよう……
そんなふうに焦っていると、ミリシアは伺うように言った。
『……わたしのせいにしても、いいのよ? もともとのわたしがこんなことをしていたから、リアもしなくちゃいけなくなったのでしょ?』
『そ、そんなことできない! やると決めたのは、わたしなんだから』
そうだ、わたしが決めたことなんだ……
だから、最後まで……物語の終わりまで、やりきらないと。
『……なら、責任は半分こね』
『うん……わたしたちの責任だ』
わたしはそっと差し出されたミリシアの手を、ぎゅっと握る。
ミリシアも、一緒に強く握り返してくれた。
「……もう悩みは解決したみたいね。私は役に立てたかしら?」
「はい、ありがとうございました」
「そう……いつでも相談してちょうだいね」
師匠は、優しく微笑みながら言った。
師匠と話さなかったら、きっとミリシアにも相談できなかっただろうし……
とても助かった。
「それで、もう休憩は終わりなのかしら? 少しって言っていたけれど……」
「あ、そうですね……もう帰らないと」
思ったより、相談が長引いてしまった。
お屋敷の人たちに違和感を持たれる前に帰らないといけないのに。
「残念ね……でも、またいつでもきてちょうだい」
「はい、もちろんです。また、修行をしにきますね」
「ええ、楽しみに待ってるわ」
師匠は、少し寂しそうにしながらも笑う。
でも、すぐに思いついたように言った。
「あら、そうだわ。ジゼルをしばらく借りてもいいかしら? いてくれると、とても助かるの」
「ジゼルがですか?」
「ええ、そうよ。無理なら別にいいのだけど……」
ジゼルが……
確かに最近は師匠のところにずっといると思っていたけど。
そんなに役に立っているとは知らなかった、と少し驚いてしまう。
「えっと、大丈夫だと思います……ジゼルにたくさんお手伝いさせてください」
「まぁ、いいのね。ありがとう。少しだけ、助けてもらうわね」
師匠は、嬉しそうに笑った。
ジゼルも楽しそうにしていたし、たくさんお手伝いさせてもいいと思うけど……
わたしは、そんなふうに考えながらも、家の外に向かう。
「それじゃあ、またね。ミリシア」
「はい、また……絶対にきますね」
『……わたしも、リアと一緒に来るわ』
ミリシアも、わたしと一緒に挨拶をする。
声は聞こえていないと思うけど、その気持ちは伝わったのか、師匠はまた嬉しそうに笑う。
「楽しみにしているわね」
師匠に手を振りながら、わたしとミリシアはラニの能力で転移した。




