↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界倒叙サスペンス~サイコパス男爵とシリアルキラー令嬢~  作者: 諏訪 富二一(ふじいち)
2部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
123/183

アウグストゥス・ティンバー

『ビオランテを襲った魔物は、男爵の義娘ルーシュに寄生している影の茨と関係していると考えています』


「証拠は」


『四年前、事件が起きた日にルーシュがビオランテへいたことを確認しました』


「それだけか?」


『街の住人から証言を得ています。ラローレという少女の父親です。それと、ルーシュ本人が写った写真も入手しました』


「写真には、魔物を操っているところが写っているのか?」


『いいえ。事件前に、ラローレと一緒に撮影されたものです』


「なら、ビオランテにいた証拠にしかならねえ」


 ニューは冷たく切り捨てた。


『分かっています』


 セレスティアも食い下がらない。


『ですが、偶然とは思えません』


「捜査は、偶然と思えるかどうかで決めるもんじゃねえ」


『老人と少女の行商人が、事件前まで広場で薬を売っていました。行商人は偽名を使い、事件直後に姿を消しています。少女は薄桃色の髪を左右に結び、貴族の令嬢のような話し方をしていた。ルーシュの特徴と一致します』


「老人の方は?」


『品のある老人だったという証言だけです。アウグストゥス本人だと証明するものはありません』


「正直で結構」


 ニューは顎の無精髭を撫でた。


「可愛い弟子の意見だ。信じてやりたいのは山々だが、それだけじゃ賢人会議は動かん」


『やはり、駄目ですか』


「コープスパーティーについては、黒山羊と毒蛇の教団の犯行で決着している。レベル七の魔法を使う従者という話も、裏づけがない」


『私とレオヴァンが直接確認しました』


「お前ら二人の目撃証言だけじゃ、勇者を追加派遣するには弱い。まして貴族の逮捕許可なんざ、状況証拠を並べただけで出せるもんじゃねえ」


 水晶の向こうで、セレスティアが黙った。


 ニューはしばらく水晶を見つめていたが、やがて別の問いを投げた。


「一つ聞く」


『何でしょう』


「そのアウグストゥス・ヴァーミリオンという男」


 ニューの目が細くなる。


「魔力を使わず、魔法を発動したことはあるか?」


 水晶の向こうで、僅かに息を呑む音がした。


『なぜ、それを?』


「質問してんのは俺だ」


『……本当に魔力を使わなかったのかは分かりません』


 セレスティアは慎重に答える。


『ですが、魔力が動いた気配を一切出さず、魔法を発動したところは確認しています』


「どんな魔法だ」


『他人が発動した魔法へ干渉し、消滅させました』


「詠唱は?」


『ありません』


「魔法陣」


『確認できませんでした』


「触媒は?」


『使っていません』


 ニューは黙った。


 作戦通信局の喧騒が、急に遠のいた。


 トーコは隣から、ニューの横顔を見ている。


 驚いているのではない。


 昔、地中深くへ埋めた死体が歩いて戻ってきた。


 そんな顔だった。


 やがてニューの喉から、低い笑いが漏れた。


「くっ……くくく」


『師匠?』


「そうか」


 ニューは片手で顔を覆った。


「魔力を使わず、詠唱もなし。魔法陣も触媒もない。それで他人の魔法へ干渉した」


『何か知っているのですか?』


「アウグストゥス・ティンバー」


 その名を口にした途端、ニューの笑いが止まった。


「生きてやがったか」


面白かった思う方は、ブックマーク、評価、感想をお願いします。


ログインなしで感想機能を開放しました。

お気軽に感想を書き込んでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。