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俺は奈落の底に落ちている  作者: 緋色唯
9/10

episode9 奈落な展開

俺は、ど、どうすればいいんだ…



部屋割が決まりそれぞれが部屋に戻った。ここは俺、馬上直人と中間百合子の部屋だ。俺はなんとも言い訳し難い状況下に置かれている。


俺が買い物に行こうとした時、百合子が引き留めようとしたが布団に足を取られ転びそうになった。それに瞬時に気づいた俺は助けようとしたが、俺も巻き込まれて転んでしまった。そこまでは良かったんだが、結局俺が上になってしまい百合子を押しつぶす形になった。


そして手をついたところが、とても柔らかいところであった。


馬上「…え?」


中間「あっ…」


俺の思考が一定時間停止したが、このままでは良くないと俺の理性が働き慌てて起き上がった。


馬上「すっ!すまない!わざとじゃないんだ!」


百合子は抵抗することも殴ることも怒ることもなく、倒れたまま俺を見つめて顔を真っ赤にしていた。


俺は気まずすぎて「飲み物買ってくるよ」と言い放ち廊下へ飛び出してしまった。

廊下を歩っているうちに余計な血が下がったのか考えることができるようになった。そして歯を食いしばって後悔した。

女性の体を触っておいて…倒れてる女性を目の前にして起き上がらせることもしないで部屋を飛び出した俺は罪悪感に駆られた。

大丈夫かと声をかけて手を差し伸べて、そして改めて謝罪をするのが紳士として妥当な行動だっただろう。本当に俺は最低だ。俺はこんなに最低な男だったのか?それこそ、『後悔先に立たず』だな。


俺は旅館のフロント、入り口にあった自動販売機で缶ビールなどのお酒やお茶などを3.4本買い、ゆっくり歩いて戻った。


戻っている間はろくなことしか考えなかった。いろいろなパターンを考えては、自分の精神に保険をかけた。特に悪いパターンしか思いつかなかった。怒り散らしてもう口も聞いてくれなくなったらとか。みんなに言いふらして俺は理性ぶっ飛び野郎と冷たい視線を浴びることとなるとか。不安でしかなかった。


そんなことを考えている間に部屋の前に着いてしまった。俺は勇気を振り絞ってドアノブを触ろうと手を出したら勝手に回りドアが開いた。

その先には焦った顔した百合子が居た。俺たちは驚きのあまり声を漏らした。

俺は廊下で百合子に勇気を振り絞って再び誤った。


馬上「の、飲み物買ってきた。…さっきはほんとにごめん。すまなかった…許してもらわなくても構わない…」


許さなくてもいい。なんて嘘の言葉がなんでこうも簡単に口から出てくるのか。


百合子は再び顔を真っ赤に染めたが、少し微笑んで話し出した。


中間「こんなところで言わないでよ。中でもう一回話そ。それと…私…麒麟がいい。」


なんで俺はこうも百合子の言葉にほっとしてしまうのか…

俺たちは部屋の中に入った。


部屋に戻ると布団が事故当時のままにされていた。

百合子がそそくさと布団をきれいに直していた。俺が飲み物を買いに行ってる間なにをしていたのだろう。なにを考えていたのだろう。布団を直すことすらしないくらいにショックを受けていたに違いない。なのに今、気まずさ残しつつも明るく振る舞ってくれる。そんな百合子に甘えてしまいそうだ。


布団を百合子が直してる間に買ってきた飲み物を床に一つ一つ置いた。


直し終わったのを見計らい、百合子に缶ビールを開けて渡し、俺も折角だからと缶ビールを開けた。

百合子が微笑み、乾杯と小さな声でいい、ゴクゴクと喉をいい感じに鳴らし、気持ちよさそうに息を吐いた。

俺はまだ口をつけられなかった。そんな俺を見て百合子が声をかけてきた。


中間「…私の胸…どうだった?」


俺はドキッとしたが、ここは正直に答えるべきだろうと思った。


馬上「思ったより大きくて気持ちよかった…」


百合子は目をまん丸にして驚き顔を赤らめたが、吹き出して笑った。俺は驚いた。ドン引きされるのかと思ったからだ。


百合子「ならいい!初めてだったけど…直人だったからいいや。」


え…。初めて?


馬上「え、百合子…経験って…」


百合子「恥ずかしくも…。年齢=彼氏いない歴。だよ。」


意外だった。こんなに美人なのに今までいたことすら無いなんて…。この世の男はどこを見てるんだ。

百合子は美人で頭良くて仕事もできるし、明るい性格で、分け隔て無く誰とでも喋るし、しっかりしている。生活感を感じさせないほどスタイリッシュでかっこいい女性だ。

…だから…か。


馬上「意外だったよ。」


中間「それ、褒めてるの?」


馬上「あぁ。褒め言葉だよ。…触ったことは…本当に怒ってないのか?」


中間「さっきっから言ってるじゃん。直人だからいいって。」


…おい。それは期待していまう。

俺の右手が百合子を再び求めそうになったが、理性で押さえつけた。

今までは百合子の事そんなふうに見た事なかったのに。いや、見ないようにしていたの方が正しいか。

これからどうすればいいんだ…。この気持ちはなんなんだろう…。


動揺している俺に百合子は、ほら飲んで!といつもの美しい笑顔を俺にくれた。俺は答えるように一気飲みしてしまった。


なにも考えないようにしながら風呂に入ったり着替えたり明日の準備をしたりし、やっと布団の中に収まることができた。


背中を俺に向けたまま小さな声で百合子はおやすみなさいと言った。


俺は今百合子がどんな顔してるか見たくなったが我慢して、おやすみと返した。


朝ふと目が覚めると古木の天井が目に止まり、ここはどこだと一瞬寝ぼけてあたりを見渡した。百合子はまだ寝ていた。

俺に背中を向けて寝ているはずだったが今はこちらに顔を向けて寝ている。いつもは凛々しくかっこよくなんでもスマートにこなす百合子だが、昨日の話し方といい、今の寝顔をといい、俺にとって子供のように愛らしい姿だった。とても幸せな気持ちになった。


俺は百合子を起こさないようにトイレに向かった。手を洗いがてら顔を洗ってタオルで拭き鏡を見ると、冴えない俺の顔が映っていた。


俺は女の子には興味があるが、付き合いたいとかそんな欲望は特になかった。なのに今は何故か、こんな冴えない男を誰が愛してくれるのだろうかと考えてしまった。

俺の思考が昨日からおかしい気がする。


百合子が寝ている部屋に戻ると古くてギシギシ鳴く畳も窓から入る木漏れ日でさえもキラキラ輝いていて。

特に寝顔の百合子は天使が眠っているかのようだった。ずっと眺めていても飽きなかった。


俺は自分の布団の上で横になり、百合子の寝顔を無意識に見つめていた。


すると突然廊下でまるで地団駄を踏んでいるかのような騒々しい足音が2つ近づいてきた。騒々しいなと思った瞬間。ものすごい勢いで男二人が俺らの部屋のドアを打ち破ってきた。それもお構いなしに争いが続けられていた。


何事だ!?と俺はとりあえず百合子を守ろうと立ち上がった。さすがに百合子も驚きのあまり睡魔が飛んでいった。


一人の黒髪の男が下敷きになってる茶髪の男の胸ぐらを掴んでいた。とりあえず止めなくては!


馬上「ちょっと!とりあえず落ち着いて!」


黒髪の男を引き剥がすと下敷きなっていたのは佐々木だった。よって俺が今引き剥がしたこの男は森だ。そして背後には慌てた奈落さんが現れる…。


俺は情報量が多すぎて処理が追いつかず一瞬ショートしたが、再起動した。考え事をする度に怒りがこみ上げてきた。


馬上「おい…お前ら…」


俺の険悪の表情に二人は頭の血が一気に下がり凍りつき慌てた。

森「ばば馬上!こ、これには深いわけが!!佐々木が悪いんだ!」

佐々木「ちがっ、ば、直人さん!僕が100%悪いわけじゃないけど!許してください!」


馬上「場所をわきまえろ!!!」


森・佐々木「す、すいません!」


馬上「俺に謝るな!フロントのお婆さんに謝れ!今すぐに!!!」


森・佐々木「しょ、承知致しました!!」


森と佐々木が慌てふためき走って行った。走るなよ…なにがあったのかは後でゆっくり聞くとして、あいつら本当バカだ…。

俺が右手で頭をぐしゃぐしゃっとすると百合子がその右腕を優しく掴んできた。心臓が出るかと思った。顔に出さないようにするだけで精一杯だった。


中間「あんなに怒るの珍しいじゃない?」


中間がほほえんだ。


馬上「廊下で騒ぐし…旅館の物壊した上にまだ喧嘩を続けるし迷惑極まりないよ…あいつらほんとにバカだ…それに寝顔っ…」


寝顔をもう少し眺めていたかった。という言葉が出そうになって自分で驚いた。


中間「寝顔が、なに?」


馬上「あ、…えーっと、あ、あいつらの寝顔までアホ丸出しなんだろうなと思ったんだよ。」


中間「それ…ちょっと見てみたいかも…」


中間が右手で口を押さえて笑った。


俺は胸を一旦撫で下ろした。がすぐに嵐が来る。お馬鹿2人が戻ってきたのだ。


森「鍵を治さなきゃと思ってたところだったから弁償云々(うんぬん)はいいってさ!」

佐々木「よかったぁ!」

馬上「よかったぁじゃない!!俺らは今着替えるところも落ち着けるところもなくなったんだ。俺たちの荷物運ぶの手伝ってくれるよな?」


佐々木と森は御意としか言えなかった。

俺の荷物と佐々木の荷物を森の部屋に移動し、

百合子の荷物は奈落さんの部屋に移動し、男女別々の部屋を作った。


俺は腕を組み、仁王立ちし、前に2人を正座させた。


馬上「何が起こったのか、簡潔に述べよ。森。」


森「俺が朝飲み物を買いに廊下に出て佐々木達の部屋の前を通った時、ドアの鍵が甘かったみたいで少し空いていたから教えてやろうと思ってドアを開けたら、佐々木が…佐々木が…」


佐々木「だから!違うっていってるじゃないですか!」


馬上「静粛に。今は森の発言権。」


佐々木が消化不良で口を閉じると、森がまた怒りがこみ上げてきたのか、少し早口で叫ぶように言った。


森「さ、佐々木が夜這いしてたんだよ!!」


馬上「は?」


俺は目が点になった。


松島旅行3日目。天気は晴れ。気温はまあまあ小春日和。春は色んなものが芽生える季節だというが…

暖かい空気と共に俺たち3人の男の中の何かがぐるぐると回り出していた。

第9話もありがとうございました!!


部屋割で色々あったのに、その明けた朝も騒々しいですね。

佐々木の奈落に対する『夜這い疑惑』浮上中!


第10話もよろしくお願いします!

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