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俺は奈落の底に落ちている  作者: 緋色唯
6/10

episode6 奈落と観光

いざ、松島!!!

観光日和といってもいい日になった。暑すぎず寒すぎず快晴とまではいかないが過ごしやすい気候だ。

今俺たちが居るのは『海の見える駅』松島海岸駅だ。古風な外観で俺はとても好きだ。


観光か…。俺はあまり観光したいとかショッピングしたいとかそうゆうのは別に苦手ではないが積極的にするタイプではない。正直めんどくさいとか思ってしまう人だ。だから基本インドア派で休みの日は借りてきたDVDを観たり、ゲームしたり。外に出ると言っても漫画本を買いに行ったりする程度。まぁ周りからしたら味気の無い休日だと思われるかもしれないが、『趣味は釣り』みたいな感覚で、それが俺の趣味だ。


そして、こんな俺が同僚と後輩とで観光に来ている。昨日旅館で過ごしたが、非日常みたいな感じでなかなか楽しかった。俺もなにかアウトドアな趣味をなにか1つ持ちたいなと思ってしまうほどだった。



とりあえず、俺含めみんな松島海岸駅周辺は初めてらしいので、携帯で観光名所とやらを検索しながら手当たり次第観光するみたいだ。俺もなにか検索するか。


佐々木「あぁ!これ僕行きたいっす!」


と、佐々木が携帯画面をドヤ顔で見せて来た。

書いてあったのは『牡蠣カレーパン』…え!?なんだそれ!?めちゃくちゃ美味そうじゃんか!!少なくとも俺は食いついた。


森「佐々木!!ナイスだな!!これ俺も食べたい!」


だが思いっきり食いついたのは俺だけだったらしい。


中間「旅館で朝ごはん食べたばかりでしょーに…」


馬城「まず観光といえば神社で参拝だ!」


佐々木「えー。つまらなそう…」


佐々木は露骨に嫌な顔をした。まぁたしかに参拝とか地味な感じするもんな。


奈落「なんか…その神社から綺麗な景色が見えるみたい…」


衣子がボソッと言ったその情報に俺含め4人は飲み込まれた。一致団結。いざ行かん!五大堂!!!


五大堂は神社ではなく寺院。まぁ、俺はそこら辺詳しくないから違いがわからないけど。この五大堂は不思議な場所にある。離れの島の上に建てられたような造りだ。だからこの紅い橋を渡っていかなければならない。珍しい寺院だな。


馬城「ここの紅い橋を渡るみたいだね?」


中間「そうね。綺麗な紅い色…

きゃっ!!」


馬城「っ!!!」


中間が石段につまづいて転びそうになったところを馬城が紳士的に支えた。一瞬2人とも時が止まったが、我に帰り、パッと離れた。おぉ…。


中間「あ、ありがと…迷惑かけたわね。ごめんなさい…。」


馬城「いや、男として当たり前のことをしたまでだし、百合子に怪我なんてさせたくないしな。…ここ足場悪いし、…ほらよ。」


というと馬城は手を差し出した。おぉ…馬城が本当に紳士的だ。普段見せない姿だな。


中間「ふっ…相変わらずね直人は。」


そう中間が言い馬城の差し出した手を取った。おぉ…取るのか…。まんざらでもないって感じか?ってか…


俺たちは何を見せられているのだろうか。


佐々木「森さん。あの御二方、お付き合いされてないんですよね?嘘だったんですか?今手取り合ってますよ?」


佐々木が驚きを隠しきれなかったのか、俺に小声で話しかけてきた。俺が知るかよ…。


森「お、俺に聞くな…まぁ、1つ言えることは2人の間に少しでも何かは芽生えだろうという事だ。中間は馬城の男らしさと優しさに、馬城は中間の体の柔らかさに…っいて!!!」


衣子が険悪なオーラで俺の二の腕をつねって来た。めっちゃいてぇ…。


森「衣子っ!このやろ!急になにすんだよ!!」


奈落「中間さんのは分かったけど、馬城さんのはちょっと違うんじゃないの」


森「何言ってんだよ!女の人なんだなと実感するのは女性らしさを目の当たりにした瞬間なんだよ!それが下心だったとしても!!っいっってぇぇ!!またつねったな!!それも同じところ!!」


奈落「…最低」


森「衣子は男という生き物を分かってないんだ!!」


奈落「分かりたくもない。」


俺と衣子はくだらない喧嘩をした。


橋の真ん中では手を取り合う馬城さんと中間さん。石段の前では楽しそうにじゃれ合う森さんと奈落さん…

佐々木(ほんとに僕は何を見せられてるんでしょうか……)


1人アウェーな佐々木であった。




途中に小物屋があったり、くじ引きがあったり。楽しく賑わっていた。


そして寺院についた。島の上に建てられたとは思えない立派な佇まいだった。


みんなで5円玉を投げ作法に従って参拝した。


馬城「さて…その絶景とやらを頂きたいのだが??どこだろ。」


奈落「ここかも。」


衣子は木と木の間から見える海を見つめた。


佐々木「うっわー!!ほんとに綺麗!!」


ほんとに素晴らしい景色だった。日本三景と呼ばれるだけある。俺たちが今居る島だけじゃなく、他にも数々の島々がある。そしてそれぞれに名前があるらしい。その島たちの間を大きな白い船がザーッっと水の音を立てながら通っていった。その船の後ろをニャーニャーとウミネコが鳴きながら追うように飛んでいた。昔はウミネコにカッパえびせんとかの餌やりサービスって言うのがあったらしいが、今はそれが禁止されている。ウミネコたちは多分その名残でついて行っているのだろう。

それぞれに何を感じていたのかは分からないが、俺たちは言葉を交わすことを忘れていた。

それくらい綺麗な景色だった。


俺たちは中間が持っていた自撮り棒でその絶景をバックに記念撮影をした。


中間「よし。よく撮れてる!後で送信するわねっ!ほんとに素敵なところねっ!んじゃ、次行く??」


佐々木「カレーパン!!!」


馬城「お前は食いもんのことばっかりだなぁ」


森「まぁ、俺も人のこと言えないかもしれないけど、やっぱり宮城県名物、松島名物といえば、笹かまぼこだろ!!自分で焼いて食べるところあるらしいぞ!」


佐々木「えー!蒲鉾!?カレーパンがいいっす」


佐々木はほんとに露骨に顔にでるタイプだ。


奈落「焼きたて笹かまぼこ…自分で焼くの…?楽しそ…」


衣子の言葉を聞いた瞬間、佐々木が衣子の両肩にポンっと両手を乗せた。


佐々木「俺!笹かまぼこ大好きなんすよ!!行きましょう奈落さん!」


奈落「??う、うん。」


佐々木が奈落を引っ張っていった。あーあ。衣子も大変だこりゃ。


馬城「あからさまだなぁ佐々木は。森も黙ってらんないっしょ!なっ!」


馬城が俺に肩組みをしてきた…重い…

余計なお世話だなぁ…。


森「な。もなにも…佐々木は佐々木、俺は俺だ。…てかなんで馬城がこの関係しってんだよ。」


馬城「げ!な、なんか余裕げで気持ち悪い」


中間「こんなナレーションつけたみたいな分かり易い関係なんか直人でも勘付くわよ。後、直人。よは、森くんにとって佐々木くんは眼中にもないって事よ」


馬城「お前達付き合ってんの!?」


森「は!?つ、付き合って…」


あ、あんなことしてたけど…俺たち正式に付き合ってるのか??俺は変な汗がダラダラ出てきた。


中間「はぁーいそこまで!佐々木くん達とはぐれちゃうわよ?」


馬城「あぁ!そうだよ!はぐれたら大変だ!俺引き止めてくる!!おーい!佐々木ー!奈落さーん!!」


ナイス中間…

馬城が中間の言葉に操られたかのように、自由奔放な佐々木と連れられるままの奈落を追いかけていった。馬城ってなんだかんだ単純…なのかそれとも、中間がすごいのか…。


中間がスッと俺の横に立った。


中間「焦らないこと。思い込みもしないこと。応援してるわっ」


…応援してくれるのは嬉しいのだが…貴方達の方が気になって仕方ない自分がいるのだが…???


とか考えてるうちに松島蒲鉾本店に着いた。ここは俺がさっき言った通り、手焼きできるみたいだ。内装がとても綺麗で落ち着いてて、居心地がいい。


佐々木「はい!皆さんもどうぞー!」


佐々木がみんなに一本ずつ竹の棒に刺さった真っ白な笹かまぼこを手渡した。

俺は人が集まってるところを見つけた。ほぉそうか。ここで焼くのか。

網が敷かれたところに置けば下からの熱で焼けるのか。

さて、焼くか!!…どれくらい焼けばいいんだ?蒲鉾って元々火通ってるよな…?


「ママー!焦げちゃったよー!」

「それくらいが香りが良くて美味しいよ!嫌ならママのと交換する??」

「いー!僕が焼いたんだもん!」


隣で焼いてた親子の会話を聴いた。微笑ましいな。男の子が持ってる蒲鉾はたしかに黒くはなってるがそこまで焦げ焦げではなく、むしろ美味しそうだ、俺もそれくらい目指そうかな。


みんな焼くのが楽しすぎて無言になっている。衣子も真剣だ。少し焼けてくるとぷくっと膨れる。それがなかなか見てて楽しい。


中間「直人。焦げ目つけたいんだったら動かさないでじっと待つのよ。」


馬城「うっ…じっとしてられなくてさぁ?ははっ」


森「大丈夫だ馬城。佐々木なんてグルングルン回してもう食ってる。」


馬城「は!?」


視線を佐々木に向けた。


佐々木「へへへ〜…もう少し焼けばよかったですよ。中の方冷たくてなんか…。でも美味いっす!!僕もう一本買ってきまーす!」


佐々木はレジの方に突っ走っていった。


中間「あ、相変わらずね…」


森「…あぁ。」


そしてなんだかんだ、みんないい感じに焼きあがった。イートインスペースがあったのでみんなで並んで座り、お互いの焼き加減の感想を言い合いながら食べた。


森「…さ、笹かまってこんなに旨かったっけ?」


馬城「あぁ。俺も今そう思ったところだ…」


中間「みんなで食べるから尚一層美味しく感じるのかもね?」


中間が微笑んだ。俺たちは笑いあった。

笹かまをみんなで焦げ目つくまで焼いただけ。なのにこんなに楽しいなんて思わなかった。


そして専用のゴミ箱に食べ終わった串を入れた。


佐々木「次どうします?」


中間「なんか、笹かまだけじゃなく、『揚げたてむぅ』っていうのもあるらしいわよ?」


馬城「むぅ?なんだそれ。」


奈落「蒲鉾に豆腐を混ぜて揚げたもの。らしいです…」


森「なんだそれ!めっちゃ美味そうじゃん!!」


馬城「そうだな!」


俺たちはまたしても蒲鉾に手を伸ばした。蒲鉾中毒になりかけている。


そして注文すると、想像よりも大きな丸い蒲鉾が出てきた。

大判焼きが2つ串刺しになってるみたいに見える。食べきれるかな…


店内にまた座るところがあったので行儀よく座った。


馬城「ふぉ!さすが揚げたて!いい匂いだ!いただきまーす!」


みんなハフハフしながらかぶりついた。


その瞬間俺は電気が走ったかのような感覚に陥った。


森「なんなんだこれは…」


見た目とは真逆で、まるではんぺんのように軽くふわっと食べられる。だが、はんぺんよりも弾力があって、この弾力が癖になってしまう…。美味すぎる…惚れた…


俺は食べ終えた串を持ち、思わず立ち上がった。


馬城「どうしたんだ?急に。」


森「お、俺は…俺は……!!!!

すみません!!もう一本くださーーい!!!」


俺はレジに走って行った。走るほどでもない距離を。だが、どうやら惚れたのは俺だけじゃなかったようだ。


馬城「抜け駆けなんて卑怯だぞ森ぃ!!すみません俺も!」


馬城が急いで残りを頬張り、俺の後を追いかけてきた。


お店の人を笑わせてしまった。恥ずかしい。だがそれくらい美味かった。


奈落「…」


衣子は食べ終わった串を握ったままレジに駆け込む俺たちを見ていた。


中間「ふふっ衣子ちゃんも食べたいの?」


奈落「えっ!あ、…はい…。でも。」


中間「一本は多い。ってこと?」


奈落「え、…そうです。」


中間「んじゃ半分しよっかっ!一本の串に2個付いてるし!」


奈落「いいんですか?」


中間「うん!私ももう少し食べたいなって思ってたところだったの!」


奈落「で、では…」


衣子はとても嬉しそうだ。


佐々木は珍しく食べるのが遅いみたいだ。口に合わなかったのか?一本に2個ついてるが、その1個目をかじっていた。


森「佐々木!お前にしては食べるのが遅いな??口に合わなかったのか??」


佐々木「何言ってるんですか?3本目ですよ?」


真顔での衝撃発言。


馬城・森「いつのまにぃぃ!?」




そして念願の『牡蠣カレーパン』!

牡蠣が苦手な人でも食べられるくらい臭みがなくて食べやすい。今までカレーパンを無意識に食べていたが、ここまで美味しいのは食べたことがない。また松島に来る機会があったら、絶対に食べなきゃならない観光グルメだと確信した。


他にフワッフワのかき氷、お食事処、冬には甘酒も飲めるらしいな。そして数多く並ぶお土産やさん。俺たちはそれぞれお土産と共にお揃いで5個笹かま型のキャラクターのキーホルダーを買った。

大の大人がお揃い?…とか始めは乗り気じゃなかったが、実際買うと嬉しいものだ。


そんなこんなで観光しまくった。お土産…ちょっと買いすぎたか?まぁ、いいか!!母さん達も喜ぶだろ!


ベンチにみんなで座って一息。


佐々木「ふあー!楽しかったー!もう一個カレーパン食べたかったくらいっすよー!」


森「その気持ちわかるぞ。」


中間「まぁ、私は本当は、あの船に乗りたかったんだけどなぁ。」


馬城「まぁ、時間も時間だし仕方ないさ。今度こようぜ!」


中間「そうね今日だけじゃないものね!また来ましょう!」


馬城「だな!絶対乗ろうな!」


森・佐々木(…2人で???)



そして、俺たちは泊まれる所を探した。

中間はそこまでの予約はしてなかったみたいだ。混んでてどこも予約が取れなかったようで…。しかたないな。誰も責められん。


駅周辺の宿泊できるところを検索したりしたが見つけても人がいっぱいで泊まれなかった。その後も同様になかなか見つからなかった。俺たちは途方に暮れた。


中間「はぁ…どうする?本心じゃないけど…仕方ないし、このまま仙台駅に帰る?」


奈落「…あそこは?」


え?

衣子が指差したところは、ぽうっと不気味に灯りがあるだけの、ボロボロの…いや、良く言えば味のある民宿だ。


中間「まぁ、行ってみましょうか。」


中に入ると味のあるお婆さんが出迎えてくれた。


お婆「おや、客んだが?5人でまちげぇねぇか?(間違えない?)」


おお…方言とかほんとに味がある…


中間「はい。部屋空いてますか?」


お婆「空いてっけんど、わーんとこ、部屋狭こくてなぁ。2人ずつしかはいんねぇんだわ。んだから、5人ってなっと、3部屋借りっごとなっけど、いがんべか?(空いてるけど、私の所は部屋が狭くてね。2人ずつしか泊まれないよ。だから5人となると3部屋泊まることになるけど、いい?)」


中間「はい、結構です。」


馬城「よかったー」


皆んなとりあえずは胸をなでおろした。


お婆「んで、あんねぇーすっかんね。こっちゃこ。(では、案内するからこっちにおいで)」


お婆さんの後をついていく。歩くたびに老朽化した木材のギィという音が廊下中に響き渡る。


佐々木「ここ…大丈夫なんすか??出たりしませんよね…?」


馬城「こぉら。泊まれるだけいいと思いなよ」


佐々木「そ、そうっすねっははっ…」


お婆さんが立ち止まった。


お婆「おめたつ、コレとホレとソッツの部屋ば寝泊まりしてけろな。んでなぁ!いい夢みれっといいなで!(あなたたち、こことそことあっちの部屋で寝泊まりしてね。ではいい夢見れるといいね。)」


と言い放ち去って行った。


5人は少し黙り込んだ。何を考えているかはお互いわからないが、大体は予想がつく。


中間「部屋割りの件なんだけどさ…」


やっぱりそうだよな。

だって、2人・2人・1人の部屋割りになるわけだから…。誰が1人になるかだよな…。


中間「そこで考えたんだけど、私が1人部屋使うわ。そして…」


馬城「それだけはダメだ!ここのセキュリティ問題はわからない。信用ならないのに、女性が1人部屋なんて!不用心すぎる!」


馬城の必死さに中間は驚いていた。


まぁ…。俺もそう思った。お婆さんが部屋のことについて言った時から。

でもな、馬城。そうなると男の誰かが1人部屋を使うことになるんだぞ…!?



日が沈んだ松島の古い民宿で男3人は見つめ合いながらゴクリと唾を飲み込んだ。



*To be continued…

第6話もありがとうございます!


部屋割どうなりますかねー。


第7話もよろしくお願いします!

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