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ヒストリア  作者: パリィ
2章 暁の救世主
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現れる災禍



それはレアちゃんやクローナ、カエデが屋敷へやってきて数日が経過した頃。


俺たちがいるリフ大森林では穏やかな日常が続いていた。


その数日の間にも、ミストの治療を受けるレアちゃんとクローナが仲良くなったり、マリウスを使った実験を行ったりと、平和で小さなイベントがあった。



「ご主人様、全ての準備が完了致しました」


昼を過ぎた頃、自室で書類と格闘している時にリーゼからその報告はもたらされ、俺は進めている書類整理の手を止めた。


「そうか……じゃあ始めるとするか」

「畏まりました。では全員にメッセージを送ります」


俺たちが異世界へやって来て、魔物に襲われていたメイ達を救い、この世界の事情と理不尽さを知った。


そんな異世界の背景を見て、小さな俺の正義感から始まったこの計画。


あっという間に計画の規模は大きくなり、その結果、たった2週間程度でリフ大森林の一部はたくさんの人々が住める大きな土地を開拓できた。


俺たちが『北区』と呼ぶその土地には、大きな街道が敷かれ、その蜘蛛の巣のように張り巡らされた道沿いにはいくつもの建物が立ち並んでいる。地下には水道管まで敷かれ、ほぼ全ての建造物へ水が供給できるようになっている。


パーシェルが時間を掛けて開発した食料プラントは各地に設置され、保存食を生産しながら備蓄を繰り返している真っ最中だ。


これも全て、これから行う計画のための下準備の一つだった。

そして今、ようやく全ての準備が終わり、計画にある作戦を実行できるようになった。


「会議室へ向かうぞ。集まれる者だけ集めてくれ」

「畏まりました」


恭しく一礼をするリーゼと別れ、一度自室へ寄ると装備の確認をする。



これから俺は、南方諸国に(いくさ)を仕掛けに行く。



パーシェルに打ち直してもらった愛刀の舞剣と、動く事を意識した軽鎧の装備。

その上にお馴染みの黒マントを羽織り、会議室へ向かう。


「すまん。待たせたか?」


そう言って入った会議室には、何人かの《姉妹達》とソーニャやマリウス、エッテにクローナ、カエデ、レアちゃんまで集まっていた。


「大丈夫ですよ、ご主人様。今しがた皆様お集まりいただいたところです。イーリス御姉様を始め、鈴お姉様、ミストお姉様、ラザエラ、ルピナは既に現地へ向かわれました。リットお姉様と私の準備も完了しています」

「そうか。では全員が配置に付いたら作戦を実行する。リット、各国の様子はどうだ?勘付かれたりはしていないよな?」


マイペースにお茶を啜るリットに問いかける。


だがリットが言葉を発する前に、マリウスが声を上げた。


「おい、何が始まるんだ?どうしてミストはいない?今日はレアの治療は無いのか?」

「ああ…」


そう言えばマリウスにはまだ俺たちの計画の事を話していなかった。エッテにはアルシアから計画の事を話を聞いていたようなので、すっかりマリウスにも聞かせていたのかと思っていた。


「そうだったな。すまん、まだ話していなかったわ。えっと……事情を知らないのは…」


と俺が言いながらマリウス達を見ると、レアちゃんが元気よく手を上げる。

レアちゃんが手を挙げたのを見てから、自分も手をあげるカエデ。


ソーニャは仲間になった時に話をしてある。エッテはアルシアから。……クローナはたぶん《遠交未来》で見て知っているんだろうな。


「じゃあ直前になっての説明で悪いがマリウスとレアちゃん、カエデに説明しよう。……俺たちは今から南方諸国へ侵攻する」

「は?」

「え?」

「ぉー?」


マリウスとカエデはこいつ何言ってんのって顔で俺を見ている。

レアちゃんはそもそも理解していない様子だ。


「そんな目で見るな。きちんと目的がある。あくまでも南方諸国へ侵攻するのは囮だ。否が応でもにでも各国の兵を一兵でも多く引き摺り出す。そうして空っぽになった各国から、捕らわれ奴隷にされた亜人種達を救い出すのが最終的な目的だ」


「「「……」」」


そう。俺たちがずっと裏で計画し時間を掛けて準備を整えて来たのは、ラテール共和国が滅んだ際に亜人狩りによって捕らわれた者達の救出のためだ。


リフ大森林を開拓し人の住める土地を作り出したのも、救出した後の亜人種たちが住む場所に困らないためのもの。


その街の規模から分かるように、たった数人を救う訳ではなく、確認できた全ての亜人種を救い出すつもりだ。


その為に何百何千何万と言う、リーゼ、パーシェル、リーズリットの配下達を動かし、情報をひたすら集めて来た。


「まずは南方諸国の至る場所でリーゼが作り出した下級アンデッドを出現させる。これは第一の囮だ。そして下級アンデッドが殲滅される前に、各方面に配置された《姉妹達(シスターズ)》が、パーシェルが作った《戦闘人形》とリットが従える精霊達を率いて各方面へ進軍する。ここでできるだけ連合軍を掻き回して混乱させ戦いを長引かせる。その間に先回りして眠らせているアンデッド達を呼び起こし、各地に囚われて使役させられている亜人種を救出し、転移陣にてリフ大森林へピストン輸送していく。南方諸国全体が混乱しているうちに、最終的には数十万人規模の亜人種を救出する。これがこれから行う作戦の大まかな流れだ」


「「「……」」」


マリウスとカエデは呆然とし、レアちゃんは頭上に「?」を浮かべている。


まあ、普通であれば無茶苦茶な作戦だろう。

しかし、これを実行するのは『ヒストリア』内で最強の元サポートNPC達である《姉妹達》だ。


エッテやマリウスならば実際に全滅した連合軍リフ大森林侵攻部隊にいて、《姉妹達》の力は知っているはずだが……。


「まあ何となくそんな反応をされるとは思ってたが……。お前たちが理解できていなくても作戦はもうすぐ実行される。リーゼ、映してくれ」

「畏まりました」


リーゼが複数のモニターを出現させる。


そのモニターには、南方諸国各国の都市や街で人々が行き交う平和な日常が映し出されている。


「リット、話が逸れてしまったが……連合の様子はどうだ?」


マリウスに話を遮られてムクれているリットに話しかける。

頬を膨らませ、空中に浮遊するとふわふわ浮いて俺の膝へやってくる。


「ピエロのやつが撒いた火種にいい感じに火が付いて来おるのじゃ。王国は内乱に加勢した貴族の粛清を決定。各国の貴族達にも責任追及を始めておるようじゃ。王国の連合へ対する不信感も日に日に高まっておる。反対に聖教国は沈黙を保っておる。じゃが王国の内乱に手を貸した教徒達もおるから、王国との対立は不可避じゃ。放っておいても勝手に争いだしそうじゃな。そして帝国は自ら連合から離反する事を決定したみたいじゃ。数日後には正式に発表があるじゃろう。これで連合の屋台骨が抜けた事になり、王国からの追及も無視できるようになる。中々どうして、帝国にはキレ者がおるらしい。まあ、結論としては儂らが何かアクションを起こさずとも全体的に勝手に混乱状態に陥っておるわい」


そう言って一口緑茶を啜り、テーブルに顎を乗せるリット。

いつの間にか隣にやってきていたメイにお菓子を口元に運ばれ、それにパクつき餌付けされている。


「ピエロのやついい仕事するな…。初めは本当に時間稼ぎで連合内を少しかき乱してくれるだけでもよかったのに…まさかここまで連合を燃やしてくれるとは思わなかった。やっぱ有能だけど危険だな……」


この場に居ないのに、道化師のあの笑い声が頭の中で響いている錯覚を覚える。


今はどこで何をしているか知らないが、作戦の横槍を入れてくれないように願うばかりだ。


「もしゃ…んく…。あれで戦闘力も鈴お姉様並みじゃから手に負えん。性格さえ良ければのぉ…あむ」


リットが餌付けされながら愚痴る。


リットの言う通り、1:1だと俺でも勝つのは難しいかもしれないほどの戦闘能力を持っている。

もしかしたら《姉妹達》と同様、異世界に来ていろいろ強化されている可能性も…。


「ご主人様、イーリス御姉様達が配置に付きました。いつでも作戦を開始できます」


リーゼの言葉に現実に引き戻され、気付くと《姉妹達》がモニターに映し出されている。


「マリウス、お前たちが未だに困惑していることは理解しているし、説明が遅くなって悪いとも思っている。お前たちからすると無理があるかもしれないが、俺たちがこれから行うのは大掛かりな人助けだと思ってくれ」

「……」


マリウス達からは相変わらず返事がない。

っと言うか、目の前に現れたモニターに目が釘付けになっている。


……もう始めていいかな?


俺はメニュー画面を開き、召喚している全員にメッセージを送る。


『作戦を開始してくれ。皆怪我のないように、程々に暴れてこい』

『『『『『畏まりました、ご主人様』』』』』

キャラクター間の話はそのうち番外編的な感じで出していきます。


また忙しくなってきたので更新が遅れるかもしれません_:(´ཀ`」 ∠):_

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