対策とその後
忙しくなるので更新遅くなるかも_(´ω`_)⌒)_ ))
「あ〜酷い目にあったのじゃ」
魔の双丘から解放された幼女は、今俺の膝の上に乗り机に突っ伏していた。
憔悴しきっているリットとは対象的に鈴はツヤツヤしている。
「すまんすまん。俺が最後まで話を聞かなかったのも悪い。策があるなら言ってくれ」
ジトーっと何か言いたげな目で俺を睨むリット。だが幼女のジト目はご褒美である。
「はぁ。大軍と言うのはそれだけで操るのは大変じゃ。指揮系統も恐らくバラバラじゃろうて。しかも此度の進軍は様々な国がどういう利害関係で動いているのかは明白じゃ。誰か特定の国に所属する者が指揮することはあるまい。じゃからわざわざ敵は綿密に進軍経路を計画しているようじゃが、連携なぞできんじゃろう」
リットはずずずと湯呑みに入った緑茶を啜りながら、さらに続ける。
「そして此度連合軍が攻め入るのは大森林じゃ。見通しも悪く馬も使えない。そして一つの目標に向かって進軍するわけでもなくバラバラに動くのじゃ。徒歩でノロノロと広大な大森林で部隊を分けて進軍するなど、各個撃破してくれと言うてるようなもんじゃ」
地図の凸マークの矢印を指して笑うリット。
そしてペンで矢印を一つずつ消していく。
「勿論、こちらの情報を与える訳には行かぬ。十中八九連合は旧ラテール共和国領に大規模な本国との連絡を繋ぐ兵站拠点を築くじゃろう。ここも同時に潰す事によって森林に入った軍も干上がらす事が出来、かつ連合軍の連絡網もズタズタにできる。じゃが増援が来る前にやらねば時間もかかる上、我らの情報も少なからず漏れてしまうやもしれん」
「ということはタイミングが重要か」
リットは頷き地図に「2日」と書き足す。
「2日じゃ。2日待ち、できるだけ連合を森に誘き寄せ、拠点に伝令を出される前に叩き潰す。同時に築かれる兵站拠点も全て潰す。取り残しは出てくるじゃろうが、リーゼのクローカーによる上空からの監視と儂の子らの警戒網からは逃げられんじゃろ。まあ森に入ったやつらはパニエから逃れられるとは儂も思っとらんがな」
そこまで話すと、リットはまたも机に突っ伏した。ダメージはかなり大きかったようだ。
「つ〜ま〜り〜、儂らは奴らが森に入って来るのを待ってればええんじゃ〜。態々出向いて情報を漏らす真似はせんでええんじゃ。ご主人様はどっしりと構えて儂を愛でてくれてるだけでええんじゃ〜」
そうは言うがそんな大軍を本当に一人も逃さずに全滅させる事ができるのだろうか。
ヒストリアの国家間戦争でも1万以上の敵なんて戦った事ないのに、数百万なんて…。想像ができん。
「また難しい顔をしておる。どうせ連合の数を気にしておるのじゃろう?良いか?此度の戦、地の利はこちらにある。連合は前人未踏とも言って過言ではない場所を石橋を叩くように慎重に来るはずじゃ。おまけに森の中じゃいくら数が多かろうとろくな連携も取れん。こんな相手、赤子の手をひねるより楽勝じゃよ」
リットは俺の微かな表情の変化だけで考えを見抜く。まったくもって頼もしい軍師様である。
「ん〜?ご主人様はウチらが信用ならんかえ?所詮ヒストリアの雑魚歩兵以下の烏合の集え。ウチが一瞬で消し去ってやるえ」
無駄にツヤツヤしている鈴が上機嫌で物騒な事を言い出す。
物騒な連中が向こうからやって来るのなら間違ってはいないか…。
「ご主人様、少しご提案致したいことがあるのですが」
「どうしたイーリス。何かあるのか?」
イーリスは席を立ち、隣に座っているルピナを抱える。
「ルピナの固有スキル、《空間創造》の実験を連合軍で試したく思います。責任は私が取るのでやらさせて頂けませんか?」
「にゃ?」
《空間創造》…確か《精神汚染》と同じようにネタスキルでイベントの時くらいにしか使用したことが無かった筈だが…。
「……まさか、《空間創造》も?」
「はい。《精神汚染》と同様に、この異世界にて仕様が変化したようです」
それから1時間ほど連合軍の対策会議は続き、作戦計画を煮詰めていった。
一区切り着いた所で休憩に入ると、俺はそのままずっと側に控えていたリリルを伴って、屋敷の2階にあるメイに宛てがわれた部屋へやってきていた。
「さて、ソーニャとメイはどうなったのかね。時間はかなり経っているから結果がどうあれ話は終わっているとは思うが…」
部屋の扉を軽くコンコンっとノックする。
………反応が無い。
「…居ないのか?」
もう一度ノックをしてみるが、やはり反応は返ってこない。
「……ご主人様を無視するとは。明日の休暇は取り消しですね」
リリルが断りもなく扉を開く。
待て待て待て、いくら先輩メイドでもやっていいことと悪いことがある。
「おい、リリルそれは………何やってんだ?お前ら」
「へ?」
「あっ」
メイの部屋の扉を開くと、そこには半裸のメイとソーニャ。
二人ともベッドの上で抱き合うように重なっている。
驚いたように目を見開いてこちらを見つめる半裸の女性二人。
きっと俺も似たように呆気にとられた顔になっている筈だ。
「説得はどうしたのですか?まさかずっと盛り合ってたなんて言いませんよね?」
小さな少女が沈黙を破る。
その少女の瞳は途轍もなく冷ややかに二人を見つめていた。
リ、リリルがキレてる。
「リ、リリルさん?俺たちはどうやらお邪魔してしまったようだ。出直そう」
会議で慣れぬ頭脳労働をした脳で、必死に考え紡ぎ出した俺の言葉。
だがご主人様である俺の意見もあっさり却下される。
「ダメです。二人とも罰として1週間、大浴場の掃除を言い渡します。ご主人様を待たせ変なものを見せた罰です。二人に拒否権はありません」
無惨に言い渡される罰の宣告。
しかも何故かメイドでも無いソーニャにまで下った。
「ま、待ってください!違うんです!誤解なんです!これはさっきまでシャワー浴びてて!」
「そ、そうだ!ちょっと足が滑っただけなんだ!って言うかカナタさんはこっちを見るなっ!!」
ソーニャに言われ慌てて後ろを向く。
二人が必死に言い訳を始めるがもう遅い。リリルによる慈悲の無い宣告はもう下ったのだ。
「ソーニャ様はお客様ですから遠慮して1週間と言いましたが。どうやら反省の色がないようですね。もう1週間追加です。ご主人様が許しても私が許しません」
そしてその言い訳は火に油を注いだようだ。ここに居たのがリリル以外であればこうはならなかっただろうに…。
「ご、ご主人様ぁ…」
「わ、私は仲間になると決めたぞ!きちんとお互い納得した!なのに何故だ!?カナタさん!!」
「す…」
すまんと言おうとする俺の声を容赦無くリリルが遮る。
「そうですか。私たちの仲間になるのであればもうお客様ではありませんね。遠慮はしなくてよくなったようなので、中庭の掃除も追加しましょう」
「何故だ!?」
俺にとっては喜ばしいソーニャの発言も、リリルからすれば遠慮しなくていい言葉となってしまった。
「では明日からみっちり基礎から扱きますので、お心の準備の方を宜しくお願いしますね」
にっこりと晴れやかな笑顔で締めくくるリリル。
だが二人にとっては悪魔の微笑みに見えたに違いない。
その後は、再開した対策会議中もリリルの機嫌が直るまで撫で続け、二人の罰はなんとか大浴場掃除1週間まで減らして貰えた。
その日は会議中でも「ご主人様って何だろう…」と自問自答を続け、会議の内容はイマイチ頭に入ってこなかった。
ストーリーの補完と人物紹介はそのうち出します。




