2度目の会談
今回はちょっと短めです
「それで、話ってのは?」
「はい、それが…」
ツインに案内されやってきたメイ。
マロンが紅茶とお茶請けを用意し、俺たちは一口お茶に口を付け、ゆったりとした雰囲気で2回目の話し合いが始まった。
メイの口から聞いた内容は予想外のものだった。
前もって聞いていた内容は、子供達の間で何か揉めている風だと聞いていたので、待遇に何か要望があるのかと思っていた。
その予想が外れていた訳ではなく、むしろ当たっていた。が、その内容が内容だった。
その要望の内容を先に言ってしまえば、
「家族の仇が打ちたい。奴隷にされた家族を救いたい。戦う術を教えてくれ」
と。
俺はここにきてまたも呆然としてしまった。
生き残りの村人たちの世話をしていたマロンまでもが驚き、目を見開いていた。
もちろん、子供達全員が全員そうではないそうで、俺が提案した学修しつつ家事見習いや、他にも希望がある子供もいるそうだ。そちらはまだいい。すぐにどうにかできる問題でもある。だが、家族の仇や家族を救いたい、戦い方を教えてくれという内容は壮絶に尽きる。俺の中の常識では子供が考えていい内容ではない。
メイからその話を聞いた後、メイには悪いが10分程押し黙り、色々と考え込んでしまった。
そして。
「メイ、少しだけ待っててくれ」
「は、はい。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません…」
「迷惑などではない。ただ自分の視野の狭さと覚悟の薄っぺらさ嫌気が射していたんだ。ちょっと待っててくれ。すぐに戻る」
「はい…」
そう言い残し、一度部屋を出る。
メニュー画面を開くとまずはリーズリットとリーゼにメッセージを送る。
『リット、リーゼ聞こえているか?』
『聴こえてるのじゃ』
『こちらも聴こえています』
『少し聞きたいことがある』
『…何じゃ?』
『何でしょうか』
『態と戦争を起こせるか?』
そして二人に尋ね終わると、次はパーシェルへとメッセージを繋ぐ。
『パーシェル、今いいか?』
『ほいほーい。今食料プラントの試作テスト中っすよー』
『はえーな。いつからやってたんだ?決まったの昨日のお昼だろ…』
『あ!ご主人様はあっしを舐めてますね?あっしの生産に関する物には製作ボーナス掛かるの忘れたんすか!?』
『…あぁ、《機械工学》ね。チート種族め』
『それはあっしの姉御3人に言って下さい。ま、褒め言葉として受け取っておくっす。それで、どのような用件で?』
『あぁ。実はな…』
メイとの話し合いの内容を話す。俺が考えていることの重要な所は、全てパーシェルに掛かっていると言っても過言では無い。
そして、その内容は普通であれば無茶振り過ぎて門前払いをくらうのだが…。
『んー。2週間…いや、念のため3週間っすね。それだけ時間をもらえれば余裕っす』
うちの娘に不可能は無いようだった。
『頼む。地下倉庫の素材は何を使ってもいい。装備もアイテムも俺の私物も何を使ってもいい。やれるか?』
『…ご褒美』
『ん?』
『ご褒美…おねだりっす』
『いいぞ?だが、俺はお前たちと違ってただの人間だからな。無茶なことはできないぞ?』
『無茶振りはしないっす。言質とりましたからね?この音声も録音してますからね?期待してるっすからね!』
『ご主人様を信じろ。何ならご褒美以外にも希望を叶えてやるぞ。俺にできる範囲でな!』
『ひゃっほー!うっしゃー!やる気出たー!早速計画書に纏めるっす!あの領土は使っていいっすよね?』
『あぁ。リーゼには話を通してある。警備にもアンデッドを出してくれるそうだ』
『っし!あっしは建造に全振りできるっすね!お任せ下さい、ご主人様ぁー!!』
よし。まずはこれでいいだろう。
次は…
―――
――
―
「ふぅ。待たせたな。心配はもう無用だ。子供達には前回の提案通り、勉学か家事見習い若しくは希望する職を用意できる。そこから選んで貰おう」
「えっ!?え?ええ?」
メイは俺と会話をすると大体「え?」しか言ってないな。あ、俺が悪いのか。
「すまんすまん。順を追って話そう」
「はい…」
そうして、メイとの2回目の会談は夕方頃まで続いた。終わる頃にはメイは憔悴しきっており、足元も覚束ない状態になっていた。ツインには引き続きメイに付いてもらい、屋敷の業務は明日まで休みにしておいた。
「…やばいな。今更になって心臓がバクバクしてきたぞ?」
今より自分が何をしようとしているのかを考えると、身震いが起こり、冷や汗が背中を伝う。
だがそれは早かれ遅かれ必ずぶち当たる壁だ。それを乗り越える覚悟はできていたはず。今になって何故こんなに俺は怯えているんだ…。
「ご主人様、ハーブティーですよ。お飲み下さい」
目の前に良い香りの紅茶が入ったティーカップが置かれる。
マロンが淹れてくれたようだ。
「…すまんな。どうにも弱気になってしまってな。気を遣わせて悪いな」
「気を遣わせて下さいな。私達はその為に生まれてきたのですから」
「ふふ。お前たちは皆そう言うな。何か趣味は無いのか?やりたいこととかは…」
興味本位で聞いたそれはまさしく自爆の一言だった。
「趣味ですか…。趣味とは言えないかも知れませんが…鈴お姉様とはまた違いますが、カナタ様の下着を手洗いでお洗濯するのが最近のマイブームですね」
「……すまん。俺が悪かった。もうこの話題は止めよう。嫌な気がしてならない。鈴の名が出た事も忘れよう…」
思わず頭を抱えてしまう。確かにリーゼが言っていた通り、姉妹達全員ベースは俺の設定が反映されているようだが、皆どこか性格というか…主に性癖がおかしくなっている気がする。
確認しようにも、したくないな…。あぁ、そうか。そうだな。
実害が出てから考えよう…。
「あら、そうですか。残念です」
「マロンは美人だが残念美人のジャンルに入りそうだ…」
「私はご主人様だけに見てもらえればいいので、あまり関係ありませんね」
「……そうだな」
「うふふ。ご主人様、辛くなったらお呼び下さいね。私どもは戦力にはなりませんが、その御心を癒すことはできます。一人寝が寂しい時にでも、ね?」
「お前らには敵わんな…。俺ももっと強くならなきゃな」
どうにもメイだけではなく、俺もそれなりに疲れきっているようだ。早朝から起こされ寝不足もあり、このゆったりと身を任せていれば何処までも沈んでいきそうなソファーの感覚に、次第に睡魔が襲ってくる。
「ご主人様、ベッドでお休み下さい。お風邪を召されますよ」
「んぁ…すまない。連れて行って貰えるか…」
「寝坊助なご主人様ですね。お手をお貸し下さい」
瞼が重い。マロンに手を貸してもらい、ゆっくりと立ち上がるとマロンに手を引かれ、フラフラとベッドへ向かう。
「はい。着きましたよ。ゆっくりお休みください。私はここで控えて、あっ、ご主人様?」
握っているマロンの手が暖かい。鈍る思考がそれだけを認識すると、引き寄せそのまま意識が薄れていく。あぁ、お休み、俺。
マロンはカナタに手を引っ張られ、カナタのベッドに引きずり込まれていた。
「早速一人寝が寂しくて態としたんですか?あっ、これはマジ寝ですね。まぁ、この寝惚けたご主人様は世界一可愛いので許しちゃうんですけどね」
マロンは自分のご主人様の寝顔を見つめ、暫く悦に浸る。そして1時間ほど経つと、彼女たちメイド特有の"メイドネットワーク"を使い、部屋に誰も寄せ付けないようにと声を掛ける。
そしてマロンによるご主人様の寝顔観察は早朝まで続いたと言う。




