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ヒストリア  作者: パリィ
1章 兆し
11/66

会談

初の予約登校です

今回ちょっと会話多いかも

読み辛かったらごめんなさい・:≡(:3 )


「………」

「………」

「………」

「………」


さて、今この状況は人生初の状況であり、今後の村の生き残りの女性と子供をどうするかを村人代表者であるメイと話し合うために設けたものだ。


だがしかし、一向に誰も言葉を放つ気配も無く既に数分が経過していた。


「ご主人様、お見合いでは無いのです。メイ様もお疲れのご様子。お話し合いを始めて下さい」


初めに切り出したのは予想外にもメイを案内して来てくれたツインだった。ツインは運んできたワゴンからティーセットやお茶請けを用意し終わると、俺たちが一向に話す気配が無い事に痺れを切らし話し合いを促してきてくれた。


「そ、そうだな。メイ、先程は済まなかった。こっちにも色々事情があってな。できれば何も言わず忘れて欲しい…」

「は、はぃ。忘れます…」


メイはどこか緊張している様子である。炊き出しの時に会話した時は垂れていた犬耳が心なしかピクピクと動いている。あぁ、そうか。俺自身の自己紹介をまだしていないから警戒も解けてないのかも知れない。


「これは大変失礼をした。まだ俺自身が名乗ってなかったな。俺はカナタと言う。この屋敷の主人だ。呼び方にこだわりはないから好きなように呼んでくれ」

「で、ではカナタ様とっ!えとえっと…あぁ!改めて私たちを助けて頂き誠にありがとうございました!炊き出しで頂いたスープ?も大変美味しかったです!それにあんなに大きなお風呂…いえ、お風呂自体入ったのは生まれて初めてでした!ですがこんなに良くしてもらっても今の私たちには何一つ返せるものがありません…本当に申し訳ございません…」


まくしたてるように一気に言葉を絞り出すメイ。まだ緊張が取れていない様子も伺える。まるで企業の面接だと思い内心で少し同情した。


…あぁ、でもある意味間違ってはいないかもな。


「ははは。そんなに固くならないでくれ。さっきも言ったとは思うが、お礼がして欲しくて助けた訳じゃない。ただ見捨てられなかっただけだ」

「で、では私たちはこれからどうすれば…」

「そうだな…。一応聞いておくがお前たちにはこれから行く宛てでもあるのか?」


さぁ、ここからが本番である。俺が考えていたことを実行するにはこの生き残り達が出来るだけ必要だ。


「あ…いえ。私たちにはもう帰るところも頼れる場所も、もうありません…」


緊張していた様子から一転。メイは大きく肩を落としホロホロと涙を流し始めた。


「…そうか。ついさっきも言ったが、俺たちは少々ワケありでな?少し事情が複雑だから安全保障上、深くまで話す事はできない。だが信頼できる働き手…労働者が欲しいんだ」


メイははっと顔を上げひきつった絶望したような表情で、


「そ、それは暗に私たちに奴隷になれ、と?」


その一言で俺の中の何かが切れた。


「違う!勘違いするなよ?俺が欲しているのは信頼できる労働者だ。まぁ住み込みと言うデメリットはあるが、本人に合った労働しかさせないしシフトは本人の希望で時間を調整する!残業は絶対無し!祝日と週休2日は確実に与えるし昇級は年に2回!今なら何と衣食住と3時のおやつにお昼寝付きだ!どうだ!?ホワイトだろ!」

「カナタ様、落ち着いてください。ツインが無言でティーポットを振り上げています」

「はっ!!悪い…。奴隷と言う言葉はあまり俺の前で使わないでくれ。いい思い出がないんだ…」


そうさ。社会と会社の奴隷、社畜キングとは俺の事だよ。あんな思いは二度としたくない。まあ転職したがな。結局転職先も巧妙に隠された真っ黒な会社だったが…。


「あぅ…ひく…ご、ごめんなさい…」


あかん。メイを泣かせてしまった。ツインの目が笑っていない。こいつの目、レイドボスより怖ぇ…。


「す、すまない。怖がらせるつもりは無かったんだ。そう、そうだ。メイから生き残った女性や子供たちに希望を聞いておいて貰えないか?もちろん強制は絶対にしない。ここで働くか、ここから去るか。去るものには数日分の食料くらいだが与えてやれ…」

「ぜ、是非ここで働かせて下さい!!ここを去ったところで野垂れ死ぬか亜人狩りに遭って殺されるかの違いです。ならばここでどうか、村のみんなを…」


泣きながらの懇願するメイ。その対面で半笑いのまま固まってしまっている俺。見るものによっては俺に対する悪印象が芽生えそうである。


「まるで悪徳貴族のようですね。ご主人様」

「言うな」

「良いでしょう。双方で利害が一致したのです。ですが最終確認として、臨時ですが今いるシスターズの中では長女の私、リーゼが問います」

「は、はひ!…し、しすたーず?」


ツインのせいで社長面接から部長面接のようになってしまった。人事部は誰だ。今いるメンツ的にツインだろう。あ、俺の会社終わったわ。


「こほん。私たちと共にいると言う事は少なからず多くの守秘義務が課せられます。下手をすると一生表には出れません。いえ、私たちが出しません。分かりやすく言うと終身雇用契約となります。それでもいいですか?」


メイに対して問うリーゼの顔付きは真剣そのものだった。流石と言っていいのか分からないが、リーゼの迫力は俺も一歩引いてしまいそうになるほど威圧感もあった。


それにしても終身雇用は大袈裟な気も…いや、状況にもよるのか…?


メイ袖で涙をぐっと拭い、怯えた様子もあるが真剣な眼差しでリーゼを見つめ返す。俺はそんな彼女を見て強い娘だと思った。


「…私には難しいことは分かりません。ですがカナタ様が居なければあの場所で死ぬよりも辛い人生を送る事になっていただろうって言うことは生き残った女性はみんな分かっています。子供達も同様です。村でゴブリンやオークの特性を学ぶので分かっていると思います。だから…私たち大人は一生かけても、どんな事をされてもご恩をお返しするつもりです。そしてできれば子供たちを…子供たちの未来を、残して下さい…」


それは覚悟を決めた決意表明であり、子供たちを守りたいと言う必死な願いだった。


…やべ、少し惚れそうだった。


そしてリーゼが口を出す前に俺が横からその覚悟に答える。


「当たり前だ。リーゼが難しい言葉で脅したように聞こえたかもしれないが、お前たちを雑に扱うつもりも子供達を利用するつもりもこちらには毛頭ない。働かせると言ってもそこに居るツインたちメイドのお手伝いだ。ゆくゆくは本当にメイドになって貰うつもりだ。それに別にメイドじゃなくても一人一人に合った仕事を割り振るつもりだ。仕事の時間もきっちり決めてそれ以外は自分たちの好きな事をして構わない。子供たちには勉強をさせるか家事見習いとして家事を教えてもいい。その辺も後程微調整することを約束しよう」


メイの表情は驚きに変わり、話の途中から次第ににへらと力の緩んだ笑顔に変わっていった。

おいおい、さっきまでの威勢はどうした。緊張が抜けたのか知らないが、急に情け無い顔になったぞ?


「だが先に謝っておくことがある。俺たちは少々こちらの事情にまだ疎くてな。金銭の価値がまだ把握できていないんだ。分かり次第給金の支払いはするが、それまでは無給になってしまうが…」

「はい。そんなもの要りません。そもそもお金が合っても使う場所がありませんし…。このお屋敷に勤めていれば食べるものも着るものも雨風をしのげるお部屋も充分間に合いますので…」

「よし。では契約成立だな。明日、生き残りの女性と子供たちに伝えてこい。後で揉めないように念のためしっかり全員に伝え話し合ってこい。細かい調整は後日また話し合おう。それまでは屋敷でゆったりしてくれていい。子供たちのためにも娯楽になるものも与えよう」

「はい!ありがとうございます!!必ず皆に伝えてきます!きっと喜ぶと思います!」

「あぁ。すっかり話し込んでしまったな。処遇は決まったのだし、お前たちの事情も聴きたいがもう疲れたろ?部屋へ戻って寝てもいいぞ。事情もまた後日だ。ツイン、明日はショコラかリリルをこちらに寄越してお前はメイについて行ってやれ。少なからず女性たちからメイが答えられないような質問が出るだろう。その時は俺の代理としてお前が答えてやるといい」

「畏まりました」

「あ、あぅ。お気遣いありがとうございます…」

「ではご主人様、そろそろメイ様を寝室までご案内致しますね?」

「あぁ。頼んだ。おやすみ、メイ。リーゼに啖呵を切ったところはかっこよかったぞ?」

「は、はぃ…ありがとございます?」


こうして村の生き残り代表のメイとの会談は終わった。緊張していたメイでは無いが、俺も理想的な結果になってホッとしていた。

現地住民の実験台と言うと言葉は悪いが、現地住民でなければ試せないこともあったため、余計な事をせずに






時刻は深夜。

もう日付も変わろうとしているその時間に、カナタ達はメイドたちによって綺麗に片づけられ、何もなかった一室に質素な長テーブルとやたら派手な高級感のある椅子、という対照的な家具が置かれた部屋に集まっていた。


「もうちょっとテーブルはどうにかならなかったのか…高さも合ってないぞこれ」

「カナタ様、先ほどから同じことしか言ってませんね」


パニエが呆れたように呟く。確かにこのやり取りも5回から数えていない。

端的に言えば俺のこの行動はただの現実逃避である。


「いやだってなぁ。これはなんだ?直筆で書かれた書類の束なんて俺初めて見たぞ?」

「中身も全て直筆の書類ですよ?パラパラ捲らないでください」

「パニエ、そうは言うがなぁ。現代っ子である俺は直筆で書かれた書類のほうが珍しくてな。つい表紙以外はプリントされた」

「全て直筆ですカナタ様。現実逃避をしないで下さい。話が進みませんよ?」


わぁーん!パニエお姉ちゃんが怒ったー!リーゼお姉ちゃん助けて!


「カナタ様。レイスやシャドーピープルが集めてきた情報を統合し、私が纏めたものです。プリントしたものではございません。全て直筆ですよ?」


知ってるよ!なんでそれが人数分の部数まであるんだよ!!

もういい。リーゼお姉ちゃんにはマジレスされたし…。真面目にやろう…


「ふぅ。すまんな。って言うよりメイとの会談前に見せてもらった書類より増えていないか?」

「私の使役するアンデットは夜型ですから。日が沈めばよく働いてくれるいい子たちです」


え?じゃあ昼型とかもあんの?


「リーゼお姉様。これがメイの村の詳細ですか」

「そうよ。中々に哀れね。自分たちの国も無くなり追われ殺され、逃げ切れた者もやがて捕まり奴隷落ち。容姿にもよるけど男は危険な鉱山または戦奴、女は性奴隷。…野蛮ね、この世界の住人は」


パニエとリーゼが話している内容は、メイたちの村の成り立ち…いや原因とも言えるだろう。

リーゼが纏め上げた内容が書かれた数枚の紙。そこには圧倒的なまでの憎悪と吐き気を催すほどの理不尽さ。読んでいるだけで、顔も知らない人間にこれほど殺意を覚えたことはないというくらいの内容だった。


「メイちゃんたち苦労してるのにゃ」

「…ルピ、他人事ではないですよ。これは我々も早急に備えなければなりません」

「そんにゃこと言ったってラザ姉様も私も特に何もできにゃいにゃ」

「そうでしたね…」


俺の気持ちをよそに呑気な会話をしている末っ子とその姉。ルピナはラザエラの膝の上に座って書類を読んでいる。圧倒的に座高が足りてないので仕方ない。俺も若干ギリギリである。だからテーブルをなんとかしろ!!…椅子が低いのか?よく見ると俺の椅子だけ高級感は皆と同じだが細かくささやかだが派手すぎない装飾がなされている。


椅子の背もたれの裏には『愛するご主人様へ♡ れいもんど』と書かれた小さなプレートが嵌っていた。


何も見なかったことにしよう…。


「廃棄村…か。メイたちには悪いが言い得て妙だな。しかし凄惨の一言では片付けられないな。俺たちが救出できたことも奇跡に近いな。彼女たちはとんでもない豪運を持っているようだ」

「はい」


リーゼの表情がこわばっている気がする。何となく察するが、あれは怒りを抑えている様子だろう。パニエなんて今にも飛び出していきそうな雰囲気だ。気持ちはわかるぞ。


「ラテール共和国…人種や種族を問わず豊かに暮らせる唯一の国。それを偏見と差別、挙句には宗教や主義思想まで持ち出して滅ぼした。俺が言うのもなんだが…人間はどれほど自分たちの業を積み重ねれば気が済むのだろうか」

「ご主人様、私も種族的には人間ですが…」

「すまない。ラザエラに言ったつもりじゃないんだ。ただ、あまりにも…」


理不尽すぎる。

もともと差別や偏見と言ったものはあったようだが戦争になるほどのものでは無かった。それを扇動し大火にしたのが聖教国と呼ばれる宗教を国家の屋台骨とした一神教の大国。神の名の下に亜人討伐を各国に呼びかけ一時的に宗教・軍事同盟を締結、そのまま驚くべき速さでラテール共和国へ侵攻。多大な損害を出すが共和国領のすべてを制圧。制圧化で人狩りならぬ亜人狩りを決行。多くの民が殺害、捕縛され奴隷化または処刑。多くの文化、技術、文献、建築物の全てが更地に均され、ラテール共和国は言葉通りの草木1本残さず滅亡を迎えた。


メイが炊き出しの時に助けられることに疑問を持っていた理由が分かった。


「ラテール共和国は恨みでも買っていたのか?」

「いえ、確認できている範囲では成り立ちから滅亡するまで周囲の国々とは友好的でした。小さなコミュニティ内で差別や偏見はあったかもしれませんが国家間で問題になるようなことは無かったと思います」

「そうか…。だがまあよくメイたちは生き残れたものだ。連合の亜人狩りから変異種が出現するこの森に逃げ延びて…えっとこの森の名称は…」

「リフ大森林と呼ばれているようです。私たちの屋敷は図ったように大森林の中央に位置していますね」

「ふむ…。この森に関してだけやけに情報が少ないようだな。何かあったのか?」


変異種は特殊な地域でしか自然には生まれない。情報量が少ないのにはやはりこの森には何かがあるかもしれないな…。


「はい、その何かを現在パニエに協力してもらって調査中です」

「やはりそうだったか。変異種があれだけ生息していて俺たちの知識にはない行動をしている程だ。時間を掛けてもいいから慎重に調査をしてくれ」

「畏まりました」


と、唐突に目の前がぼやけだす。思わず崩れそうになる頭を反射的に片手で支える。

だめだ、急に来たな…眠い…。

場にいる全員が俺が突然崩れたことに驚き緊張が走っている。


「カナタ様!?」

「すまない。ちょっと睡魔がな。少々疲れているようだ。今日はここまでにしよう」

「そ、そうでしたか。ご無理はいけません。ショコラ、リリル、カナタ様を寝室に」

「「はい、お姉さま」」


それまで部屋の隅に控えていた背の高い橙色の長い髪のショコラと、対照的に背の小さな黒髪の前髪ぱっつんのおかっぱ少女リリルが前に出て俺の両脇に来る。


「すまんな。明日はイーリスたちを召喚するつもりだ。その後に今後の目的を話し合おう。じゃあすまんが俺は先に退出させてもらう」

「「「「おやすみなさいませ、ご主人様」」」

「おやすみにゃ!」


と、情報の共有会は終わり、俺の異世界初日は何故かショコラに引き摺られながら寝室へ戻り終了した。

一度にいろいろと言っていいのか分からないが、人生で一番濃いかった一日なのは間違いない。それなのになんの感慨も感じぬまま俺の意識は泥のように溶けていった。


校正にあまり時間が割けなかったので誤字脱字とか多いかも…_:(´ཀ`」 ∠):_ …

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