自業自得と報告
目が覚めてしまったので登校します。三└(┐Lε:)┘
辺りは夜の帳がおり、生活スキルである灯火を使い辺りを照らしていた。
場所はマイホームである屋敷の玄関前。玄関前はそこそこに開けた場所になってあり、村や変異種ゴブリン・オークの拠点から転移し連れてきた女性や子供たちが集まっている。
「ご主人様、準備が整いました」
「ご苦労。まさか料理スキルをこんなところで使うことになるとはなぁ…」
俺の側には新たに召喚したパートナーキャラであるハウスメイドのツインが控えていた。ハウスメイドである彼女は屋敷を購入した時に作成したキャラであり、戦闘能力は初期スキル以外一切持っていない。その代わりに生活スキル全般を網羅しており、今この異世界において我が屋敷の管理を任せるには彼女たちを於いて他にいない。
そして今、目の前には大量の調理器具と下準備の終わった食材が並べられていた。
「あ、あの。私たちはどうすれば…」
生き残りの集まりの中から金髪の犬耳の女性、メイがおずおずと歩み出てくる。そういえばこの犬耳のお姉さんに俺の外套渡したままだったな。予備まだあるからいいけど
「あぁ、あんたか。今屋敷内は少し散らかっててな?片付くのを待たせるのも忍びないからここで炊き出しをしようと思ってな」
「炊き出し…ですか?」
メイの顔色は不安が滲み出ている。
む?俺は何かおかしなことを言っただろうか?
「あぁ。簡単な料理をここで作って全員に配る。安心しろ。料理スキルはマスターしている」
「あの、その、私はあんまり頭が良くないのでこんな聞き方になっちゃうんですけど、なんで見ず知らずの…亜人である私たちにここまで良くしてくれるんですか?」
その聞き方だとどうやら俺たちが助けたところから疑問に思っていたようだった。
「なんだ、亜人を助けちゃダメなのか?別にお前たちを助けたことに大した意味はない。目の前で襲われている人を見捨てるのは俺の精神安定上よろしくないからだ。そしてお前たちが今ここにいるのもその延長上なだけだ」
「でも!私たちを助けると連合が!」
「ご主人様、もうすぐできますよ」
メイの言葉を横からメイドであるツインが遮る。メイの言葉も気になるが、会話を遮られたことよりいつの間にツインが調理を始めていたのかすら分からず、マスターランクまで上げた料理スキルを披露する機会を失った事のほうが俺はショックだった。
「なんだと?いつの間に始めていたんだ!俺が調理するつもりだったのに」
「何も仰られなかったではないですか。もう遅いです。後はお椀に注いでいくだけです」
吊り上がった目頭でこちらを睨むように見ているツイン。その表情からあからさまに不機嫌なのがとって見える。だが実はこれが彼女の素である。ツインは猫系の獣人族であり、吊り上がった目の瞳の色は金色。灰色の髪から覗く三角形のピンと鋭く尖ったネコミミが特徴的だ。
俺のパートナーキャラでネコミミはルピナがいるが彼女は獣人族ではない。つまりキャラ被りはしていないということだ。
「メイさんでしたか?あなたも子供たちを優先にスープを配っていってください。注ぐのはこちらで致しますので」
「え?あぁ、はい!」
あくまでマイペースを崩さないツイン。その性格を設定したのは例に漏れず俺なので自業自得ではあるが…。
メイもツインのマイペースさに気勢をそがれたのか、戸惑いながらも盆に乗せたスープの入ったお椀を配り始める。
「ご主人様も突っ立ってないで配るのを手伝って来てください」
「…はい」
自業自得である。
「お待ちくださいカナタ様」
「お?」
背後から俺を呼ぶ声。ツインの声ではない。だが聞き覚えのある声である。振り向くとそこにはツインではないメイド服を着た背の高い女性。橙色の髪を腰まで伸ばし、白い毛先が全体の鮮やかさを強調させている。ツインのようにネコミミはないが、顔の頬の一部には黒く細かい鱗が生えている。
「ショコラか。屋敷の掃除は終わったのか?」
「はい。一部はまだですが、優先的にと言われていた2階フロアの清掃と各客室のベッドメイキングおよび大浴場の準備が整いました」
「よくやった。済まなかったな、お前たちを呼び出して早々扱き使ってしまって」
「ご主人様、それは違います。我々はご主人様のお役に立つために生まれた存在です。謝罪などいりません。寧ろ何故もっと早く我々を召喚してくださらなかったのかと問い詰めたい思いです」
「あ、あぁ…すまなかった。だがさっきも話した通り緊急事態なのもあったから…」
「嘘です。ただのやきもちです。先に召喚されたリーゼお姉さまたちが羨ましかっただけです。ごめんなさいご主人様」
これがショコラの性格だ。背が高くキリっとした顔立ちから頼れるお姉さんっぽく見えるが、その実性格は子供っぽいのだ。一時期流行った『ギャップ萌え』というのを俺はそのままこのメイドたちに反映させてしまっている。
やはり自業自得ではあるが、後悔はしていない。
「そのお盆をお貸しください。私が代わりに配ってまいります」
と俺の返事も聞くことなく、俺からお盆を取り上げると子供たちや女性たちに配っていく。その後ろ姿を見ながらニヤけた顔をしている俺は確実に変態と思われるだろう。
その後もつつがなく全員に配り終え、食べ終わった子供たちや女性たちから先に大浴場へ案内していく。メイは相変わらず若干混乱したままだったが、俺が知らないうちに生き残りの女性たちと話し合い、村の代表として俺と今後のことを話し合うことになった。
女性や子供たちが風呂から上がった順に、ツインたちメイドが屋敷の2階にある客間や空いている部屋に案内をしている。メイが落ち着いたら会議室に案内してくれとツインたちには伝えてあるので、俺は今メイドたちが片付けた会議室にリーゼと共に早めに入り、リーゼが独自に集めたという情報の報告を聞いていた。
「以上が、私の配下たちが得た情報です。今お話しした内容は概要に過ぎませんが放っておける案件では無いかと…」
俺は淹れたての紅茶が入ったティーカップを机に置き、目頭を押さえた。
正面に座っているリーゼはいつの間に作ったのか、手書きの報告書の束を机に並べている。
そこには達筆過ぎず読みやすく日本語に書かれた文字の羅列。ちらりと見える言葉に「王国」や「帝国」などが見える。
「あぁ。俺はいつの間にお前がそんなとこまで偵察したのかが気になるよ…」
「カナタ様、情報は命です。カナタ様がルピナたち妹を召喚し、事情説明しているときに、全方位に母体となるクローカーを放ちました。現在では各方面にてシャドーピープルやレイスなどの下級霊たちが生み出され投下されています。中にはもういくつかの有益な情報を集めた個体も存在します」
もう全部リーゼが指揮を執ったほうがいいのではないかと思うほどの功績と手腕。俺なんかよりリーゼの方がよっぽど働いている気がする。何が廃人だよ。何が累計レベル1位だよ。ただ殴り合うことしか能がないただの脳筋サラリーマンじゃないか…。そう思うとドッと力が抜け机に突っ伏すようにしな垂れかかる。
「カナタ様、如何なされましたか?もしや私が勝手に動いたことに怒っていらっしゃるのでは…」
「いや、逆だよ。もう褒めちぎりたいくらいなんだけどな。ちょっと複雑でな…。なぁ、リーゼ」
「何でしょうか?」
「俺なんかが本当にお前らのご主人様でいいのかな?」
「流石の私でも怒りますよ?」
「ごめん。冗談だ…でもないな。ちょっと無力感というかな…」
むくっと起き上がりリーゼが短時間でまとめてくれた報告書に目を通す。
これが有能すぎる部下を持つ上司の気持ちなのか…。と下らないことを考えていると、正面に居たはずのリーゼがいつの間にか消えていた。
それに気づいたと同時に後ろから優しく抱きしめられる。
「私たちのご主人様はカナタ様だけです。皆、ゼノア大陸でカナタ様と共に戦い駆け抜けた日々を覚えております。それはどれも色褪せる事なく輝く日々。御傍に控え、常にカナタ様と共に在ったその事実こそ我々姉妹たちの宝物であり、誇りなのです」
「ぁ…」
やはり記憶はあったのだ。そしてリーゼは俺がパートナーやペットにゲーム時代の記憶があるのか疑問に思っていたことを見抜いていた。と、直感的に分かった。
「皆カナタ様に絶対の忠誠を近い、不敬であると思いながらも恋慕の情も抱いております。ありのままでいいのです。私たち全員そのままのカナタ様を慕っているのです。ですのでお気に病むことはありません。私が保証致します」
「その愛情はただの設定…」
「いいえ、断言致します。カナタ様が書き上げられた設定は一部変更されました。ベースはカナタ様の書き上げた設定であることは確かですが…それをどうして私が分かるのか、すらも私には分かりません。私も分からないことだらけですが、はっきりと分かることがあるのです。この恋心は決して書き上げられたものでは無いと」
少し迫力の籠った声でリーゼは断言する。
だが何故リーゼが設定の事をを知っているのか、そもそも何故人格を持ったのか、何故俺はこの世界に転移させられたのか。
「リーゼ、俺にはもう分からないことだらけだ…」
「それでいいのです。一つ一つ共に探しましょう。そして共に知りましょう、異世界に来てしまった真相を」
俺を抱きしめているリーゼの腕に、俺を離すまいとぎゅっと力が入る。
「一緒に、か?」
「はい」
「俺、頑張るよ」
「私も精一杯お支え致します」
「リーゼの体、あったかいな」
「ご主人様もあったかいです」
「リーゼ、俺頑張るからさ」
「はい」
「俺の事、見捨てないでくれよな」
「私の事も見捨てないでくださいね」
「絶対見捨てない」
「ふふ、私のセリフです。取らないでください」
「あ、あのぉ~…お邪魔でしたか…?」
「あ」「あ」
「え?え?」
会議室の扉の前にはいつから入室していたのか、支給した新しい服を着た風呂上がりのメイと、メイを案内してきたハウスメイドのツインがなんとも言えない表情でこちらを見ていた。
淹れたてだった紅茶はとっくに冷めていた。
物語はここから超動き出します(多分)
乞うご期待!:≡( ε:)(:з )≡




