シャドウ旅行記:サクスミー
サクスミーの種族紹介
なんとなーくこんな感じの設定
『シャドウ旅行記~我らが住まうこの世界~ サクスミーの章より一部抜粋』
私はサクスミーが住まう小さな里を訪れていた。
彼らの多くは山岳地帯や渓谷など、いわゆる岩場を好んで集落を作る。
私が訪れたこの里も例に漏れず、深い渓谷の奥にひっそりと作られていた。
とはいえ、基本的な生活様式は他種族とさして変わりはないと言っていいだろう。
まあ種族間交流が普通のものとなっている現代において、そこまで特異な生活様式を保っている種族も多くはないだろうが。
建物は石造りで、手先の器用なサクスミーにとって、細工技術の恰好の練習台となる。
壁から石柱、はたまた天井や床に至るまで、サクスミーは自分の家に所狭しと彫刻や細工を施す。
生まれて物心ついたときから、サクスミーはそうやって細工技術を磨いていき、もはや自分の家に彫刻を施す隙間がなくなった時、そのサクスミーの子供は大人として認められる。
そしてまた新たな自分の家を建て、その家を将来の自分の子供の練習台にするのだという。
故に、サクスミーの家は家族構成に比べて非常に大きい。
大きな家であればあるほど、それを全て彫刻で埋めるのに時間がかかり、子供の彫刻技術が上がるからだ。
無論それに比例して大人になるのは遅くなるのだが、元々寿命が何百年とあるのだから、数年、十数年と遅れたところで誤差の範囲ということだろう。
今回私が滞在するサクスミーのお宅も、やはり荘厳な彫刻や緻密な細工に彩られた素晴らしいお宅だった。
家族構成は夫婦と子供の三人だけだというにも関わらず、家は大きく、ヒューマンならば五、六人の家族が住んでもまだまだ余裕がある広さだろう。
それほどの広さだというのにもはや家中が彫刻で埋め尽くされていて、子供さんの一人立ちがそう遠くないことは明らかだった。
『息子は良い細工師になるでしょう。まあ父親として、向こう百年は負けてやれませんがね』
そう語る彼の顔は誇らしげで、嬉しげで、私も自分の父の顔を思い出した。
実際、父親である彼は細工師としてかなり名の売れた存在だ。
里から馬を使っても半日以上かかる街に彼の作品を二、三個持っていけば、物にもよるが、一年間働かずに暮らせる程の額で売れる。
彼ほどではないにせよ、サクスミーの細工師の作品は総じて高額で取引される。
しかし、そのサクスミー達当人は決して裕福な暮らしをしているわけではない。
その理由が、やはり家族だ。
先程書いたように、サクスミーの子供は只々自分の技術を磨くことに専念する。
しかしその技術が未熟であるうちは、彫刻道具はすぐに刃毀れし、壊れてしまう。それらは全て、親の稼ぎによって賄われている。
そして細工というものは同じデザインばかりを愚直に彫っていれば良いわけでもない、他の作品見て学び、自分の発想外のデザインを取り入れることもまた勉強だが、これももちろん親の稼ぎだ。
無論子供が親の庇護下にあるのは当然なのだが、他種族の子供と比べて、サクスミーの子育てには金がかかるということだ。
そしてこの子供が娘であった場合、その子育ては更に金がかかるものとなるのだ。
サクスミーの特殊な食性は、読者諸兄は知ってのことと思う。そう、『石喰い』だ。
彼らは石を食べる。それを可能にするだけの強靭な歯と顎、そして消化器官を持っている。
通常、彼らが食べた石は年月を経て蓄積し、体表を覆い始める。
個人差はあるが、心臓や首など、急所を守るような場所から段々と体表石化が始まる人が多いようだ。
そしてこの体表石化は食べた石の種類によってその声質が変わる。
石を多く食べれば石が、鉄鉱石を多く食べれば鉄が、その体表石化として表れるのだ。
サクスミーの冒険者が長生きだとされるのは、その体表石化により致命傷を免れるからに他ならない。
この体表石化が思わぬ方向に表れるのが、通称『宝石食い』だ。
原理は未だ不明で、現在は宝石に蓄積された魔力が体に還元されるためではないか、という説が有力だが、宝石を多く食べたサクスミー、特に女性は、類稀なる美貌を手にするのだという。
体表石化は表れず、肌は瑞々しくスベスベのまま保たれ、同じサクスミーと比べても老いない。
種族総じて美貌とされるエルフに勝るとも劣らないその美貌は、時の権力者や皇帝がこぞって后に迎えたがる程だ。
父の欲目というべきか、やはり自分の妻や娘にはいつまでも美しくいてほしいもので。
サクスミーの男達が細工によって得た金の多くは、妻や娘に宝石を食べさせるために消えていくのだ。
と、いう話をすると、必ず出てくるのが、どうせ岩場に住んでいるのだから、自分達で掘れば良いのでは、という声だ。
しかしそれは難しいと言わざるをえない。
というのも、サクスミーが集落を構える場所は、往々にしてそういった鉱石が出にくい場所が多い。
なぜなら、鉱石の出る場所は採掘と鍛冶を生業とするドワーフの縄張りだからだ。
そこで無用な衝突を起こしてはならないと、古来よりサクスミーはドワーフの生息域を避けて暮らしているのだ。




