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20.「私もあんな色気欲しい!」

その、あれだあれ。





結論から言おう。私、洗面所で意識を飛ばしていたらしい。気付いたら、アマルティア様の眠る部屋のソファーに居た。





視線がびしびし感じると思って、目を開けたらしかめっ面の皇帝陛下が真っ先に目に映り込んで来る。その後ろには、カイル兄上と第三皇子と宰相の海燕様が居られるではないか。あ、その更に後ろには懐かしい顔ぶれがあるじゃないの。






この部屋で一番位の高い陛下を差し置いて、その顔ぶれたちは私の前へと歩み出て来た。恥知らず、無礼者と第三皇子と海燕殿が言うが、誰一人と耳を傾けない。






「ふふふ、ルーチェったら洗面所で倒れたんですって?」





長い艶やかな黒髪を結いあげた妖艶な女性、戦の怪物であるヴァルキュリアの名を賜ったイゼベル姉上だ。青灰の瞳が何とも言えない婀娜っぽさがある。






「エノクの国から彩帝国まで、最短距離の道があるわけでもないし、正規ルートがあるわけでもないのに、かなりの最短日数で着いたらしいね。不眠不休、そりゃ倒れるさ。山賊とか追っ手とかもあることを考えると、ルーチェの体力気力その他諸々は褒めるべきだよ」





猫の様に丸っこい濃紺の瞳を歪める男性、叡知の怪物であるグリフォンの名を授かったグレイアス兄上は、私の髪を荒っぽく撫でた。





「オリアスク兄上、他の方々は?」





「メルキゼデク様とレイヴァール様は2時間後、アシェル姉上とシェザード兄上はそろそろ国境入りカナ」






ふわふわと笑う男性は、狼の怪物であるパティの名を与えられたオリアスク兄上。一見、凄く温厚そうに見えるが、狼の怪物を与えられただけあって狂暴だ。初代系統ではないから、戦闘狂とまではいかないけど、スイッチが入ったら怪物以外の人間に止める術はない。






「メル兄様たち、遅くありません?」





「メルキゼデク様とレイヴァール様だからね、何かしらのことをしてくるんじゃない?」





「そうです、よね」





彼の人に、普通や常識を求めてはいけない。それが暗黙のルールだ。まぁ、私たち怪物の名を王から授かった人間に、普通や常識は求められないし、何よりも当てはまることがないのだけれど。メルキゼデク様こと、メル兄様はもう人間の括りに入れて良いのかすら怪しい。






「あぁ…アシェルとシェザードが国境を越えたわ」





逸れていく私の思考を呼び戻したのは、色っぽい声と溜め息。言わずもがな、お色気担当のイゼベル姉上だ。イゼベル姉上は、風を操るの力を持っているから特定の気配は直ぐに感じることが出来るそうだ。というか、風というものが存在する限り何処でも姉上の支配下になりうる。





「あとは、メル兄様とレイ兄様だけ・・・。よし、イゼベル姉上、アマルティア様の身なりを整えましょうか?」




「そうね。黒服は、私様(ワタクシサマ)が準備しておいたの。野郎共、今すぐにこの部屋から出て行きなさい。忠誠を誓った王が居ない今、私たちは何処の国の法にも跪かないわ。無礼?不敬?そんなもの関係ない。即刻、立ち去れよ」





姉上、ちょっとは物の言い方を考えて欲しいなぁ。目の前に居るの皇帝陛下だからね?私たちに権力、立場なんか関係ないにしてもソレは駄目だと思うけど。メルキゼデク様の次に年長なんだからさぁ…。否、年長だからこその言い方かな?それはそれで仕方ないか。うん、仕方ない。





私たち(エノクの怪物)は、何処の法にも当てはまらない。跪かない。




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