19.「休息は必要不可欠なものだ」
「そうですねぇ。彩帝国に迷惑はかけませんから、置いてくださいと頼むでしょうか」
「…いや、もう居ることが迷惑だと思うんだけど」
「三の皇子、予定は未定ですよ。それに、誰もこの国に関わる問題と申しておりません。問題になるかもしれない、とはまぁ…」
「…ムカつくよね、君。今すぐ不敬罪で首を胴体から切り離そうか?」
「何人いても、この首が取れるとお思いにならないでくださいませ」
にっこり笑って、私は恭しく頭を下げた。一応、許可らしい許可は取ることが出来た。カイル兄上もちゃんと言質を取ったと言わんばかりの態度で頷いた。あとは、怪物たちの到着を待つだけだ。
国境を越え、彩帝国の地を踏みしめた第一歩がアマルティア様を目覚めさせる音となる。嗚呼、待ち遠しい。
「ねぇ、カイル団長。どうしてこんな女が侍女なの!?エノクの王は、こんな女を侍女にするのかい!?」
「我が国は実力主義ですから」
「朗らかに言うけど嘘だよな!?」
「先ほども申し上げました通り、彼女は1人で大国を滅ぼしました。戦歴は怪物の年長に劣るとしても、他国の戦士と比べれば、否、比べるにも値しない存在でございます」
「ほんっと、エノクって何なわけ…?」
頭を抱え始めた翔陽様を横目に、私はこれからについて頭の中で考える。お風呂を借りて、身なりを整え次第、アマルティア様の身なりを整えなければ。それから、可能なら飛鷹と夜鷹姫とコンタクトを取って、陛下の方にも報告を入れて貰おう。
「――ルーチェ、そろそろ準備に入れ。風呂はその辺に居る騎士にでも言えば連れて行ってくれる筈だ」
「その案内を騎士にさせるあたり、色々と間違っていると思うんですが」
「お前相手に間違いを犯す奴がいるなら、俺は見てみたいけどな」
「はいはいソーデスネ、行って参りますよ」
「あぁ、何かあったら俺の名前を出せ。別に叩きのめしても良いが、体術だけにしてくれよ」
「分かりましたー。それでは、失礼します」
一礼して、私は彼等に背を向ける。カイル兄上、私を追い出して何の話をするつもりなんだろうなぁ。私の地雷の事だろうか?まぁ、別に何を言われていようが気にするタチではない。
そして、私は部屋の前を通りかかった侍女を誑し込み…ゲフンゲフン。お話をして風呂場へと案内してもらった。何回も髪を洗って、何回も体を洗って。一応、川や湖で水浴びをしたけど汚れは酷かった。風呂だけにかなり体力を消耗した気がする。もう少しでライフがゼロになりそうだ。
アマルティア様の身なりを整えたら、休憩を挟もうかな…。これ以上は流石の私でも身が持たないだろうし。というか、もう既にふらふらするんだよねー。
不眠不休が祟って来たな。まだ若いから大丈夫だと思ってたけど。そういえば、もう20歳か…。うん、不眠不休は駄目だな。彩帝国に着いて、少しぐらい仮眠を取ればよかった。
ちょっと焦り過ぎたようだ。




