二十四話 あの日見た景色
季節は進み、梅雨空で雨天が多くジメジメとした気候。
二人目救ってから数週間経過、俺は果たして救えてるのか……? 不安になりつつある、でもまだ、頑張らなきゃな。
夏着の半袖となる俺は、いつの日以来かワイシャツを着こなしていた。
「梅雨空は憂鬱ってな」
「おはよ……」
さて、お待ちかね……ルミナスの服装。
今日はどん……な? 服? だよ。
見るからにジメジメとした濡れたパーカー、ルミナスはテンションめちゃくちゃ下がっていた。背中にキノコ生えてないか? っと思うぐらい陰湿だ。
「ルーク、今から私が……着替えたいとか言ったら服持ってくる?」
「え、濡れたくないからやだ」
「なんでよ!!」
「まぁ、メイドに任せるか」
俺は指を鳴らした、おもつかない走りをしてバケツに足を引っ掻くなてズデンッと前のめりに転けた。
「な、なんでしゅか?」
「床と一体化になりながら喋るなよ」
「いきなりよぶからぁ……へくち」
「カイト、あんたいつからこんなドジっ子を?」
「最初から」
「いくら私が好きだからってそんな……」
「なんで引いてるんだよ? てか、二人ともずぶ濡れになってるし……んー、ルナ先生行きだな」
とゆうわけで、保健室にいるルナ先生に訪ねた。
「あー、服をね」
「ドジっ子だからさ」
「ドジっ子って言うな!! へくしッ!」
「そうですよ……好きでやってる訳じゃないです……」
「あはは……まぁ、この二人は私に任せて。君は授業に行って」
「わかりました」
保健室から出た俺は廊下を歩き、階の階段を登って、二階の廊下を歩く。
学生時代なら今日もまた学校かって思いながら歩いていたなぁ。
少しばかり俺は過去を振り返る感じで廊下を歩く。
まぁ友達居たけど、卒業ある三年生ぐらいの時……その思想を覆して陰口あったなぁ。
俺が人を信じられなくなった理由、信じてた友達から"友達じゃねぇし"って言われて"お前友達いないだろ"って突き放された言葉今でも覚えてる。
俺は年下の子と接していた、同級生なんかよりも遥かに接しやすくてな。
後輩って違う価値観もあるし、先輩との境目あって仲良いってあんまりなかった。故に頼れる先輩として一目置かれてた、あれが俺にとっての誇りだったのかな。
それが唯一の学生生活の楽しみだった、同級生奴らなんて同じ空を見上げてるだけで後輩を仲良い場面なんてなかったな。
そうそう、大先輩……二つ年上の先輩に知り合いがいたの思い出した。
その人からの教えが未だに忘れられない"どんな理由があっても後輩に優しく接する。守ってあげなきゃ先輩として"……それが俺を一つ前に成長させた話で起点となったんだ。
救いってこの起点から来てるのもある、誰かを助けて守る意味。理由はどうあっても、大切な何かって受け入れる器量と気持ちなんだと思う。
まぁ、今は教師だからそれを教える立場だ。
上手くやれてるか少し不安だけどな。
その時、何やら騒がしい声が響く。
俺のクラスからだった、教室のドアを開けるとアネモスとシエルがいがみ合っている。
「だったら、なんで助けなかったんですか!?」
「もうすぎた話だ、私にどうこう言った所で過去は変えられない。そのことぐらいわかるでしょ?」
「それでも私は、一般人だから!! 助けに行かないなら私一人でも行きます!!」
「そうはいかない! なんで分からないの!!」
「そのセリフは私もですよ!!」
珍しく喧嘩気味だ、エレクレールが遅れて教室にインしたタイミングでシエルのカバンが的中した。
「ッ……! 何しやがる……!!」
「エレクレール、今日は我慢だな」
「あん? センセーどうゆう……おっ? なんだ、なんだ? あの二人が喧嘩って珍しいなぁ」
そこへエルトが苦笑いしながら近くに来て口を開いた。
「どうやら、過去のいざこざかな。 シエルって一般人出身でしょ? 普通なら入れない学園なんだけど、その理由が千日戦争と関係あるみたいなんだよね……話聞いてる限りね」
千日戦争って確かアネモスの父カールドが勝利に収めたって奴か。
なにか事情あるんだろうな、エルトがやばい時も感情的だった。
「とりあえず、二人を止めなきゃな。って言っても女の子二名、入ったら物理的に殺されそうだな」
「「ごくり」」
男性陣はただただ、その光景を見守るしかなかった。一時間目を潰されしまい、仕方がなくアネモスとシエルを一人ずつ放課後に空き教室に呼び出すのであった。
まず、アネモス……不満気な顔を浮かべていた。
「わざわざすまない、率直に聞くけど……シエルと何で揉めてたんだ?」
「千日戦争の話、私が聞いていた話とかなり違ってたんです」
「と言いますと?」
アネモスは、一冊の古い本をポケットから取り出した。革製の本カバーがいい色合い……赤茶色。
「私が知ってる話だと、千日戦争はグリード撲滅を目的とした戦い。市民を守る為に動力兵器や有名なギルドが参加した話でかなり有名ですが……。シエルが言ってるのは逆賊殺しで、帝国軍に抗う為に一般人を含めた大規模市中戦争って話でした」
俺はその古い本を手に取り、書かれていた文はその日記みたいである。若きカールドが苦悩の日々も描かれていた、逆賊殺しってワードはほぼ一般人に向けた言葉だろう。
「まぁアネモスが言うのは正しいだろうな。当事者のカールドが描いた日記だからな。にしても、戦地になった街って……」
「えぇ、ルキナス市場。今や跡地としてその名が刻まれてます」
ルキナスはシエルの苗字みたいなもんだ、一般人は確か名前に出身地を入れてるんだっけか。
「シエル、一般人出身で苗字がルキナスでしたよね?」
「あぁ、多分貴族とか戦争にムキになって感情的になるのは無理がないな」
「私、これからどう向き合えばいいんですか? 父の過ちをどうにかして晴らしたいのは山々。でも今の私は、四大貴族じゃないから」
アネモス実は四大貴族から切り離された、姉ラウナの意向で"市民に近い貴族も必要"って言われて自分の在り方と居場所に背中を押した感じだ。
問題が解決したかと思えば壁がまた現れたな。
「まぁ今は考えないで後で考えるしかないな」
「そう、ですよね」
「答えは焦っても出ないからね」
そういって、アネモスを教室から見送った。
頭を下げて行くなんて、ちゃんとしてるなぁ。
俺が学生ならラッキーでそのまま帰るなぁ。
それから数分後、シエルが気まずそうに入ってくる。どことなくいつもの元気はない。
しばらく沈黙が続く、なんか重い空気だなぁ。
「あ、あの……」
シエルがようやく口を開いた。
「どうした?」
「アネモスなんて言ってた……?」
いつもならあまり気にしないのに、今日はしおらしくて女々しさがある。
「特に何も言ってないかな」
「そっか……」
「シエル、ココ最近なんか様子変だぞ?」
「え?」
「こうして俺と一対一なら……"私に変なことする気でしょ!!" とか言ってくる所だよ」
「あはは……私どうしちゃったんだろう? 仲間のピンチに、嫌な記憶がふと蘇って。 気付けばアネモスに当たってた」
シエルが涙をこらえた声で静かに話した。
俺は頭をなでなでした。
「え?」
「辛い過去あったんだろ? 無理して抱え込まなくていいよ。それに、シエル……向き合うべき話でもあるよ」
シエルはゆっくりと立ち上がり、涙ぐんだ顔で俺に訴えた。
「……先生は知らないじゃない! あの日起きた戦い、どれだけ多くの犠牲、知り合いが目の前で殺されたんだよ!? 私、助けられなかった!! 救うこともできなかった!! なのに、なのに……なんで、私だけが生きてるの?!!」
シエルは感情的に自分の愚かさを爆発していた。
自分の非力さで追い込んでいた、俺にはその気持ちはわかるけど……感覚は違う。
全てを理解できない世界があるなら、今のシエルの気持ちだろう。言葉にならない。
「だから、私はこの学園に入った。 あれだけ酷いことした、貴族が憎い、許せない。だから、力を得る為に志願した!! けど、なんで私の魔法は……ハズレの物理なのか。 ますます私が許せなくなった、力がないから……また誰かを見殺しにするぐらいなら……!!」
手に持って小さなナイフを首に刺そうとした、俺は全力で止めた。
「離して!! 私、これ以上自分を劣ってると感じたくない!!」
「だからって死ぬ事はないだろ!? シエル!!」
「優しい人は嫌よ!! いい人ぶって、何も分かってないくせに!!」
強引にシエルは俺の手を弾いた、その瞬間に摩擦領域が小さく発生した。シエルは泣きながら教室を飛び出していった。
俺は地味に傷ついたがそれどころじゃないなっと心を落ち着かせた。




