二十一話 兄妹の終止符
俺は走ろうとしたタイミングでエルデが前に両手を広げて立ち塞がる。
俺は驚く、なぜ止めるのかを。
「やめてくれ、僕の兄は……ダメな人格であるのは確かだ。けど、それでも……僕たちの兄なんだよ……!」
エルデのその瞳は潤んでいる、今にも泣きそうなのを堪えている。
それを見た俺は返す言葉ない、肉親であり兄妹である。俺の出る幕でもないのは理解してるつもりだ。
ただ複雑な心境だな、見てる側からして……先生としてな。ここで兄と区切り、ケリをつけるつもりなんだな? エルデ。
「だから、もうやめてくれ! なんで争って、なんでこうしてまで……戦わなかなゃならないんだ!! 答えてよ兄さん!!」
ノルスの表情崩れて不意を打たれた顔を浮かべたがそれは一瞬であり再び嘲笑う。
「馬鹿だな? お前のその優しさが誰かを殺すし犠牲を出す。これだけやっでも理解できねぇのかよ?」
「え……」
「戦う、争うのに理由がいるのか? 求めてるのがそもそも温いんだ。 全てが公平にある様に、格差ができて溝が生まれる。それに砂糖なんて振りまく、そいつがてめぇなんだよ偽善者」
「いつも誰かに助けを求めて、助けられてた兄さん。それを犠牲者って捉えてる……。最後の最後に、自分が仕向けた落ちに気付かないんだね。……エレナ、答えは決まったね」
エレナもまたエルデの隣に立つ、もはやそこには迷いがない後ろ姿だった。
兄妹としてではなくーーーー敵対として決心した瞬間を俺は目に焼き付けた。
「間違いを間違いで終わらせないわ!」
「君の我儘、自己中で物を動かそうとするわがままで育っただけあるね。僕ら兄妹からしたら化け物だよ」
エルデとエレナは杖を構える。
それを見たノルスは苛立ちを覚え始めて荒ぶる声で叫びながら言う。
「その目、気に入らねぇな。 ここにいるお前達のその目が……気に入らねぇ。なぜそんな顔をする、なぜそんな目で俺を見る、なぜ……理解されない。分からない、分からない……から。やめろ!! そんな哀れな眼差しで俺を見るなぁぉぁぁぁ!!!」
ノルスは一気にグリードの侵食が進み、黒い巨体と化してしまう。
こうなればもう救うことは不可能、倒す以外選択はもうないのだ。
ノルスはエルデ達の方へ走り拳を振り抜く、怒りの豪快に力任せの一撃。
無惨にもエルデのシールドで防ぐが砕かれる、驚きつつもまだ計算内で真横に避ける。
「雷神の槍!!」
エレナは放った魔法は、ノルスの拳に突き刺さる、痛覚を感じた表情でも怯むわけがない。もはや殺すだけの執着で動いている。
ノルスは笑みを滲ませて、エルデを蹴飛ばした。
鈍い音が全身に響きやがて耳に反響、エレナに激突して地を転がる。
「退魔旋風斬!!」
アネモスが光り輝く剣で振り払う、光り輝く旋風がノルスを襲うが……なぜだろうものすごく不気味な笑を浮かべてる。
案の定で致命的なダメージはなくかすり傷程度で流石にアネモスは苦笑いを浮かべてる。
「ソンナモンカヨ???」
ノルスの声がグリードの声と入り交じっていて、さらに不気味さが増している。
イルビナも拳銃で連射するがイマイチだ。
「ザコ、オマエらは、ザコ。 シヌシカナイ、シネヨ、オレヲツキハナスヤツハ、キエロ!!」
ノルスは力任せに暴れ始めてる、感情のままに己を表すようにただをこねる子供だ。
見て感じ取れた、俺の物理チートが判定されてるはずだ。
まだグリード化がその日なら実体のはずだ。
目で見る限りイルビナとアネモスが唖然としてる。
動けないだろうな、奴の異常さに……執着が上回るとかありえねぇからな。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハーーーーーー!!!」
ノルスの残虐な笑い、広範囲による腕が伸びたムチにより吹き飛ばされてしまう。
まずいな、このままじゃーーーー。
その一瞬、一息が生死を分け与えるかのように……黒い影が俺の所に伸びてくる。
ノルスは着地して満面な笑み、俺は背筋が凍りつく。容赦なくノルスは殺意を込めた蹴りを俺に放つ。
腹部が圧縮され、全身の骨が響き渡り、口から鉄の味が滲み出た。
地をバウンドしながら転がり外壁に背を強打、言葉にならない悲痛な痛みを襲う。
「がはっ…! これが、お前の…執着の蹴りがよ…?! 冗談じゃねぇぞ…化け物!!」
刀はクルクルと虚空を回転して、近くの地面に突き刺さる。血の匂いが鼻を刺激、目の前がドロっとした赤い血が流れ落ちる。
ノルスは、完全に殺しに来てる。だって楽しそうに見える。そんなに、誰かに注目されてぇのかよ。
「…そう簡単に死ぬわけに行かねぇよ。その執着に、俺の執念が許さねぇ…!」
俺は近くに落ちてる剣を広いゆっくり立ち上がる。
身体はボロボロ全身は激痛なのに、立ってるのもやっとなんだ。
「イマスグラクニシテヤル」
「……兄さんよ、悪いがそれは出来ねぇ話だ。お前の執念に分からせるまでな」
俺は久々に鋭い剣を手にした、ゆっくりと両手に握りしめて足を一幅開き構える。
「ナンドデモアラガウバカ、ゴミハショリだナ」
ふらつく視界、気力だけ持ち堪えてくれ。
ここで耐えなきゃ、俺が俺じゃなくなる。
ノルスは迷いない眼差しで腕が変化させて、重低音を響かせてそのまま走ってくる。
「シネェェェェェェェェェェェ!!」
対逆で恐らく俺の剣は折れるだろう。
けど、負ける気はしないんだ。
「セヤァァァァァァァ!!」
双方の刃が振り抜かれた、俺が握る剣は折れた。
虚空を回転して、静かに地面に突き刺さる。
(注目浴びて執着してた負の力の俺が……負けた……だと……!? 馬鹿な、そんな……嘘だ!?)
ノルスは驚いた顔のまま背が切り裂かれる。
グリードの黒い血が吹いた、ゆっくりと地面に倒れた。
そのタイミングで娯楽街から音が鳴り響く、騎士団達がようやく出社してきた。
「あのわがままなやつに付き合わされたが、どうやら……肩は着いたみたいだな。よし、街にいるグリードを排除せよ!!」
「「ラジャー!!」」
ノルスのグリード化がゆっくりと薄れて、肉体が人型に小さくなる。
俺は飛ばされた刀を手に取り引き抜いた、ゆっくりとノルスの前に立ち止まった。
「罪人級に派手にやらかしたな。もう後には戻れねぇ、分かってるんだろうな?」
「……復讐なだけ、無駄な時間を過ごした。結果がこれ、俺は、間違いをしてない」
「まだ言い張るのか? よく見てみろ、その目で、周りを、てめぇだけの世界でみんな生きてんじゃねぇんだ」
「何を偉そうに、俺を知った口を聞きやがって」
「あぁ、知らねぇよ。知らねぇから誰かが間違ってるなら止める。それを受け止められないで、よく突っ走って来たな? 弟と妹の顔を見たか、ただ単にお前を否定してるわけじゃねぇよ」
ノルスの身体はやがて亀裂が入り始める、対話できる時間は限られてるのは確かだ。
「俺の話を聞け、そして理解しろ。押し付け過ぎだな、そんなんだから何時になっても人を受け入れられねぇ。人が離れていく、身内さえもだ。エルデが孤立してなんも気持ちを言わないぐらい抑えるほどお前が優先されていた環境すら分かろうともしなかった。それがてめぇとエルデの差でオチ度だ」
「俺の中では全てが真っ黒、人なんて信用したら利用される。故に自己要求だけが走り、気持ちや頭までもが混乱する。家族なんて所詮赤の他人みたいなもんだ……俺が何とかしなきゃ。俺が上に立たなきゃ示しがつかないって焦る」
「……それは誰かに頼まれた訳じゃないだろ。わかってたはずだろ? そんなことすれば、家族内でストレスやトラブルって。てめぇが自ら家族関係をぶっ壊しに行ってた事、なぜやる必要あったんだ」
「見えばかりを求め、褒められたいだけさ。最初からわかっていたのは事実さ。 俺だけが疎外感、あの二人には俺が無いものがあるから。それがもどかしくて悔しいかったのがある。馬鹿だよな、俺は誰かに言われても突っ走って後々後悔する。これを繰り返して……家族をぶっ壊して、最終的に死ぬ。 いい終わり方だと思わねぇか?」
同情を求めてきても俺は、表情を変えることなく眺めた。家族への干渉と執着だけで、こんな戦いを始めたんだ。何より沢山の命を奪ってる、死が丁度いいだろう。




