二十話 決意と代償
こうして俺達は、娯楽街の中央に出る。
しかしそこに映し出された風景は残酷、グリードだらけで生血臭さが鼻腔を貫く。
「状況が酷いね」
「それでだ、エルデ……兄はどこに行ってるか想像出来るか?」
「はい……最後に行くならきっと、僕だち三兄妹の思い出の場所。この近くに、河川敷があります……」
「ならそこに向かうとしよう」
娯楽街は、ほぼ壊滅状態で瓦礫が散乱してる。
そんな風景を歩きながら、エルデは「なんで……いつも周りを巻き込むんだ……」っと小さな声でボソッと呟いていた。
心が折れかかってるだろう、恐らくアイノフレシャスに放った魔法は全力だったに違いない。
魔力の尽きるはロスト……つまり命を削る事も直結している。
魔法は意思で威力が左右するとも言われている、エルデ今の状態だと……死に急ぐようなもんだ。
「アネモネ、もしやばかったらエルデ連れて逃げるんだぞ」
「嫌と言いたい」
「お前まで死に焦る必要ないぞ? それに、アネモスもグリードと戦い続けてるし疲労大丈夫なのか?」
「私が先生の傍に居たいだけ、それ以外理由も疲労もありません」
「なんだそりゃ……まぁさすが俺の生徒だな。悪足掻きだけ得意とか泣けてくるぜ」
徒歩数分、河川敷に辿り着く……辺りは様な空気で血のような赤い川の水が流れている。
どれだけ欲しかったのか、どれだけ食らったのか。
俺は考えるよりも、目の前の事実が真実でもあると認識した。
「こうも血の川だと、皇族の私でさえ気が引ける。どれだけ飢えていたのか。見てみてくれ、骨が辺りに散乱してる。グリードの中でもかなり上位だろうね」
エルデは絶句してる、思い出を切り離されて今あるのは現実という残酷さだけがある。
その視線の先にはノルス、右手には妹エレナの首を絞めあげていた。
「お前も俺に逆らうのか?」
「そうよ……! あんたが間違ってる、だから、私は……!!」
「じゃあ、死ねよ!!」
「どうして……わかってくれないの……!」
「そりゃこっちのセリフだ」
俺はそんな光景を見て、イルビナにエルデを預けた。その一踏みに神経を尖らせて、脚に物理チートを放つと雷の様な音速で飛ぶように走りノルスの腕を刀で強打する。
「来たな? 邪魔者!」
「うっせぇな! 世間様を巻き込むクソ兄貴に言われたくねぇよ!!」
「いつお前の兄貴になったんだ? まぁいい、殺せばすむ話だ!!」
バチバチと火花を散らして、俺の刀は地面に的中して地面を陥没させる。砂埃が舞い上がり、ノルスが手放したエレナを抱き抱えた。
「大丈夫か?」
「……! 先生、なんでここに……?」
「エルデに言われたんだ、ここの河川敷は三人でよく遊んでた思い出の場所なんだってな」
「エルデ……」
砂埃の中から、黒い手が飛んでくる。
俺は刀で弾き、一回転させて忍者刀みたいな持ち方に変えて地面にある砂利に目掛けて振り抜いた。
物理チートが働き、無数の石が砂埃を貫き放たれる。
「先生!」
アネモス達が遅れて辿り着く、砂埃を払いノルスは半身グリード化しており脈打つ巨大な黒い手が不気味なほど気持ち悪さが伝わる。
さて、どうやって勝とうかねぇ……?
奴らは絶望がエネルギー源だ。
この娯楽街は、既にその空気感陥ってる。
勝てない戦いはするなって事だろうが、最初からその気はない。考えろ、グリードの弱点は切る方に対しては弱い……打撃に対してはイマイチ。
「は、怯えてんのか? グリード化しつつある俺に。だから言っただろ? 俺に逆らうなってよ」
「何を言ってるかさっぱりだよ君。そんなに偉くなりたくて、何があるってるんだい?」
「うるせぇ!! 言い訳なんざ聞きたくねぇ!!」
イルビナに振り落とす巨大な腕、砂埃を上げるがアネモスはその腕に乗っかり剣を握りしめて走る。
「なんだテメェは!!」
「疾風刃・神速!!」
一瞬にして腕を無数に切り裂く、その切り口からグリードの小さな手がアネモスを追いかける。
「おっと、忘れてもらったら困るね!!」
イルビナは両手に拳銃を持ちながら発砲して、小さな手を狙撃する。
アネモスは高く飛び上がり、ノルスの首に剣を振るったが……どうゆうわけが刃が通らない。
「くっ!?」
「だからいってるだろ? その程度じゃ、俺に勝てねぇってよ!!」
ノルスはアネモスの腹部に強い蹴りを入れて吹き飛ばした、俺は受け止めて守りながら地面を転がる。
「いたた、大丈夫か?」
「はい……だけど、私の剣が通らないってどうゆう事なんでしょうね」
それが分かれば苦労しないが、理屈としてはこの場が悪いのかもしれねぇ。
ただ、ここを離れるとしても二人を守りながらになる。どの道、無理であるのは確かだ。
「なんとなくはわかる、この空気感がやつを強化してるとすれば元を叩くしかない」
「私達たけじゃ……難しい話ですね」
少しばかり脳裏に浮かんだのはエルデと接点がある隣国の騎士団だ。
もし、説得出来ないで止めるのが無理なら……出向く可能性がある。
もう時間的に昼近く、それに賭けるしかないな。
「運が良ければ、援軍来るはずだ。この場を耐えるしかない」
「援軍?」
「あぁ、隣国様の騎士団さ」
「まさか……先生もしや?!」
「話としては今の状態を見れば上出来だ。阻止が出来ないなら、騎士団に攻めてもらってグリードを片っ端から倒す。そうすりゃ今の空気感は薄れて嫌でもアイノフレシャスは現れる」
「そこでノルスの力がバランス崩して……攻撃が通用するって事ですか」
「その通り! アネモス流石だ。だから、少しの間は自己中なバカとチキンレースさ」
ノルスの不気味な笑みは、もはや我儘を執着が具現化したような状態だ。
俺は刀を再び持ち替えて構える、少しだけでもいい時間を稼ぐんだ。
「オラァァァ!!」
ノルスの一撃、魔法と重なり合って轟音を馳せる。
俺とアネモスは共に走る、グリードした腕からは気持ち悪いほど黒い針が飛び交う。
「こんなもんで、止まるかよ!!」
回避しながら、刀で叩き落としてグリードの針を手に持ちノルスへと投げ飛ばした。
「俺からのプレゼントだ、受け取れ!!」
深部を貫く血すら流れずに風穴を空ける、ノルスは動揺すらしない。なんて言う自己満足な奴なんだ。
「くだらねぇな? もう少し強いの来いよ」
アネモスが再び剣を振るうが、手で握られしまい防がれる。その隙に反対方向から俺が刀を振り抜いたが、グリードの腕に防がれて火花を散らす。
「所詮人の力、こんなもんだろ?? ほらぁ、死がまた一歩近づく」
アネモスの握った剣をノルスは俺の方に向かって投げつける。バランス崩した瞬間、頭上からグリードの腕が振り落とされる。
「おほー? そんな棒でよく凌いだなぁ? だが、いくらお前の怪力の前じゃ、俺の力に勝てないな。ほらぁほらぁ……綺麗な血のパレード見せてくれよなぁ?!」
刀で何とか防いでる俺だが、全身の筋力を抜くことは出来ないぐらい……化け物の力だ。
神経一つ、一つ気を抜いたら……確実に押し潰されて死ぬ!!
「せ、先生!!?」
「アネモス……頼むから俺から離れろ!!」
「で、でも!?」
「バカ、こんな非力を感じるぐらいの力の前に……屈する訳に行かねぇ」
頭から生暖かい物が流れ落ちてくる、どうやら完全には防ぎきれなかったか。
「…! わかりました、その前に先生……死なないでくださいね?」
「あたりめぇだろ……!」
アネモスはゆっくりと俺から離れていく、少しばかり安心するが……跳ね返せるかこれを?
少なくても、抑えられてる状態じゃ上手く物理チートは使えない。少しでも押し返せる隙がなきゃな。
「まだ耐えるか? なら、お前がそれを望むならば俺は殺ってやる」
さらに力が増した、これが……これが人外魔物グリードの力って事か!? クソが、無限に力が出せる殺戮兵器じゃねぇか!!
足が軋む、歯も軋む、身体が悲鳴を上げてる。
すると、イルビナがようやく姿を表してノルスの背後からペットショット。ナイスタイミングだ、少しだけ、ほんの少しだけノルスの力が弱まった。これなら行ける! 俺は思いっきり刀を振りぬいた。
「うりゃぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」
天高く上がる腕にノルスは少しだけ表情を変えた、俺は鋭く光る眼差しで睨みつけるた。




