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009

 


 コリンとジャックは、カンテラの中に広がるハロウィンの監獄という世界に居た。

 二人の足元に、ハデスが倒れている。


 コリンとジャックがハデスを見下ろしていると、ハデスが目を開き、体を起こした。


「やあ、ハデス。久しぶりだね。会うのはいつぶりだろうか……。」


 コリンはハデスに向かって言った。

 ハデスはコリンとジャックを見て、驚いたような、どこか安堵したような変な顔をしていた。


「コリンとジャック……そうか……君たちだったのか……。いつぶり……か。神としての力を剥奪された何十億年前以来だな……。」


 ハデスの声は、ひび割れた大地のように枯れていた。

 だが、その瞳には確かな熱と憎しみと知り合いと会えた嬉しさが宿っている。

 

 コリンは、ハデスの瞳を見て、哀れなモノを見る視線を送った。

 

「ソッカ、ソンナマエカ。キミハマケテ、イマデハコウヤッテ、シヲネガッテイル。ジツニ、コッケイダネ。」

 

 ジャックは、無機質な目でハデスを見る。

 言葉に感情というモノは籠もっていない。

 思ったことを、そのまま口にしただけだった。


「滑稽……か、……確かにそうだな。負けて、愛する人も失い、このザマだ。」


 ハデスは自嘲し、コリンとジャックの瞳を真っ直ぐに見据えることは出来なかった。

 視線を落とした先には、不気味に笑うカボチャのランタンが彼を嘲笑うように囲んでいる。

 

「ハデス、君は死を願っているんだったね。自業自得しか言いようがない事の顛末は孤独で死を願うだけ……ね……。君は本当に馬鹿だ……。」


 コリンはハデスに、知り合いとしての言葉をかけた。

 そして同時に、自業自得だと言う。


「ジャック、僕は死を許しても良いと思うよ。もう、コイツは昔のアイツとは違うし。」


 コリンは、ハデスを見ることはなく、ジャックに声をかけた。

 「死を許しても良い」という言葉にハデスは内心、安堵していた。

 これでやっと、この意味のない生から解放されると思って。


「ボクモ、コリンクント、ドウイケンダヨ。デモ、サイゴニヒトツダケ、シツモンヲシテモイイカナ?」


 ジャックの言葉にハデスは少し身構える。

 何が来ても答えられるようにハデスは思考を巡らせた。

 その壊れてしまった精神で。


「ダレモシラナイ。ミンナシラナイ。キミハ、ダレダイ?」


「誰とはなんだ……?誰とは。私は私だ。遥か昔、神戦争で負けて全てを失った、愚かなかつての王だ。」


 ジャックはハデスに最後のチャンスという名の質問を投げかけた。

 ハデスの返答に満足したのか、ジャックはカンテラを持たない右手をゆっくりとハデスに向ける。


「サヨウナラ。ハデスクン。ボクハ、キミガキライダ。デモ、ネガイヲカナエルコトハスルヨ。ホントウニサヨウナラ。」


 ジャックがそう言うと、ハデスに向けられた右手から禍々しい闇が溢れ出た。

 その闇はハデスを包み込み、永遠の眠りへと連れて行った。


 コリンは、闇に消えていくハデスのことを、ただ静かに、無感情な瞳で見届けていた。

 そして、最後にボソッと言葉を吐いた。


「本当に、愚かな王だ……。昔の君と今の君は違うことに自身では気付けないのだから……。」

 


 ◇◆◇

 

 

 ハデスが闇の中に消えていった時、ファマンは魔帝国のどこかの木の上に立っていた。


「ねぇ、知ってる?」


 ファマンは、りんごを片手に喋る。

 誰も居ないその場所で、何処かに向かって言葉をかけた。

 

「昔話だけど……こんな話があるんだよ。」


「昔々、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がいた。その神は最後に何かを言って姿を消した。その言葉は今も分かっていない。知っているのは、神戦争よりも前からいる者たちだけ。」


「僕には分からないけれど、きっと、ジャック達やラファエル様たちは知っているんだろうね。」


 ファマンは、シャリ、と軽快な音を立ててりんごを齧り、満面の笑顔で笑った。

 その話の続きを知る者は、もうこの世界には数えるほどしか残っていない。


 こんにちは、雪華97です。

 ハデスの死を受けて、この章はここで終わりとなり、次の話からまた別の章に移ります。

 そして、お求めがありましたら、ファマンの農園送りで何があったのかを番外編として書こうと思います。


 とても短いこの一章、どうでしたでしょうか。

 まだまだ慣れない執筆ですが、頑張っていきます。

 是非とも感想などを頂けると嬉しいです。


 そして、ハデス。彼は本当の意味で救われたのでしょうか......。


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