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 2章始まりました!

 2章始めの話ということで、少し日常感強めです。


 月が柔らかい黄金色から深い赤に変わる時、黄色や薄いオレンジ色だった街灯やランタン、提灯などは色とりどりに変化し、街全体が不夜城のように灯される。


 寝る魔族もいれば、寝ないままずっと起きている魔族も居る。

 魔族は寝なくても良い。むしろ、活気に溢れるのが夜だ。


 真紅の月の下で夜会など賑やかになるこの時を、真紅の刻(しんくのとき)という。


 そんな街から離れた丘の上にある農園では、一部の悪魔や神たちが集まって料理をしていた。

 

「ファマン〜、アスパラ持ってきたよ〜。これどうするの?」


 コリンが普段のスーツではなく、シャツとズボンにブーツの動きやすい格好をして、火元にいるファマンの近くにやってきた。

 その手には、今朝収穫したばかりのアスパラガスがある。


 ファマンはそのアスパラを受け取ると、何処からともなく出した包丁で固い根元を切り落とし半分に切った。

 そのまま手際よく、オリーブオイルを入れて熱していたフライパンにアスパラを加える。

 

「ファマンって、料理出来たっけ?少なくとも数億年前は出来なかったはず……。」


 コリンが、黙々と料理しているファマンを見て言う。

 ファマンは頬を少し膨らませて答えた。

 

「コリンってば酷い!この前野菜を育てた時に農園のおじちゃんに教えてもらったの!僕、もう子供じゃないし!」


 そんなファマンを見て、コリンは誂うように笑った。


「子供だよ。数億年経っても、それは変わらないね。特にその見た目と口調と性格が。」


 コリンは少し煽るように喋っては、ファマンの反応をみて楽しんでいた。

 そんなコリンとファマンの様子を、アザルトとローワンは呆れ半分で眺めている。


「ねぇ、ローワン、結局、本の模様は何だったの?ハデスの話は後から神と悪魔の者たちには共有されたし。」


 アザルトは、ファマンが作った料理を片手に、隣りに座るローワンに話しかけた。

 ローワンは、城の方をすこし眺めると口を開く。


「本の模様は……なんだろ?呪い同様、詳細な情報は読み取れなかったんだよね。」


「ふ〜ん。じゃあ、多分それも分かんないか。」


「まあまあ、そんな話は置いといて、今は料理を楽しもうよ。」


「料理を楽しむ……。それもそっか。」


 アザルトとローワンもまた、世間話を楽しんでいる。

 賑やかな農園の傍らで、ジャックは一人、ある野菜の料理と向き合っていた。


「……コレハ……、ボクノナカマ……?」


 その手には、カボチャの煮詰めが皿に盛り付けられた状態であった。


 

 ◇◆◇

 

 

 魔帝国の魔族たちは今日もまた、平和に暮らしている。

 暗闇しか存在しない世界で、誰かが一人、立ち尽くしていようと、世界の何処かで誰かが絶望し、悲鳴を上げようと、それは変わらないこと。


 真紅の月の下で、魔帝国の魔族たちは一日を終えた。


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