011
月が白銀色に変わり、街灯やランタンなども水色に変わっていく。
白銀の刻がやってきた。
街中央にある、白と黒の光り輝く城には、朝早くから悪魔や神が集まって来ていた。
「ファマンー?起きてー?」
アザルトは、すぴーと寝息を立てる危機感ゼロな悪戯っ子、ファマンを左右に揺さぶる。
左右に激しく揺らしても起きる気配のないファマンにアザルトは小さく息を吐くと、大声で言った。
「起きろーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
城中に響いたとも言って良い大声に、流石のファマンも目を覚ましたようだ。
だが……その目はまだ何処を捉えているのか分からない。
「んぁ……?だぁれぇ……?ここどこぉ……?」
「寝ぼけてる……。」
ファマンは目をこすりながら、周囲を見回している。
時間が経つにつれ、 ファマンの瞳に、少しずつ周囲の景色が映り込み始めた。
「あれ、アザルトだ〜、なんでここにいるの?」
ファマンは視界にアザルトを捉えると、ベッドから降り、床に足をつける。
「なんでって……、今日は公の場だし……ラファエル様がファマンのことだから忘れているはずだ。って、言っていたから迎えに来たんだよ……。」
ファマンはアザルトの「公の場」という言葉を聞いて、「あー!!!」という大声を出し、大急ぎで身支度を始めた。
だが、あまりにも慌てすぎて床に落ちてたタオルに躓いて転けるし、急いで掴んだ上着は前後逆さまで、もうめちゃくちゃだ。
なんでこんな感じのファマンが悪魔の地位にいるんだろう……と、アザルトは疑問に思ったが、直ぐに思考を放棄する。
理由は、ファマンが悪魔たちの愛されキャラと化しているので、この調子じゃない方が変に感じるだろうという結論に至ったからだった。
アザルトは、今も慌ただしく身支度をしているファマンを横目に、平和だなぁ……と、そんな独り言をこぼしつつ、さらに1時間ほどが経過した。
ファマンの身支度が出来たのは、結局起きてから1時間程経ってからだった。
大きな扉をくぐると、そこには悪魔や神が勢揃いしていた。
王座に座っていたラファエルは、アザルトとファマンが来たのを見ると、まずは時間を守るということの大切さについてを丁寧にファマンに向かって言った。
周囲の悪魔や神たちは、また始まったよ……という、恒例行事のように平然とただ終わるのを待っていた。
ファマンは静かに説明を聞きながら、頭の中では今日のおやつは何にしようかなぁ……と呑気なことを考えている。
そんなファマンにラファエルは、「明日からまた農場で野菜を育てておいで。」と笑顔で言い、話を終わらせた。
ファマンの頭の中では、野菜という二文字が加わったことで、さらに騒がしくなったが周囲は気にしない。
今日の、公の場が始まった。
◇◆◇
公の場と言っているが、簡単に言えば最近起きたことを報告する場だ。
悪魔や神たちは皆順番に報告をしていく。
アザルトとファマンは、神や悪魔の中でも地位が高いので最後の方だった。
淡々と続く各陣営の報告をやり過ごし、ようやく全ての儀礼が終わる。重厚な扉を抜けて、二人はようやく解放感に包まれた廊下へと出た。
「ファマン、また農園に連れてかれるけど良いの?」
アザルトはファマンを見て言う。
ファマンの頭の中はいつの間にかおやつで埋め尽くされ、ラファエルから言われたことなど、とうに忘れていた。
だが、アザルトの言葉で思い出すと、何故だか少し嬉しそうにした。
「良いよ。だって、農園のおじちゃん、優しいんだもん!育て方は勿論、調理の仕方まで教えてくれるし、もっと細かい専門の知識まで教えてくれるから飽きないし。」
ファマンは目をキラキラと輝かせながら、農園でのことを思い出しているようだった。
「ファマンにしては珍しいね。飽きないだなんて。」
アザルトはそんなファマンを弄りながら歩いていく。
どっからどう見ても仲の良い兄弟のようにしか見えないのに、二人は頑なにそれを拒否するのだから不思議だ……と、他の悪魔や神からは言われていた。
そんな悪魔や神たちに言って、二人はいつも決まった言葉を言う。
「「兄弟じゃなくて、ただの腐れ縁だよ?」」と。
きれいぴったり揃うその言葉に、やっぱり兄弟みたいだと言われているのは、本人たちには知る由もないだろう。




