012
昨日は失礼いたしました。
これからも無理のない範囲で投稿を続けていくので、どうぞ、宜しくお願い致します。
暗闇しか存在しない世界で、パラパラと紙をめくる音がした。
パラパラと紙をめくっていたのは、金髪に赤目の青年?だった。
青年?は暗闇の中で、一冊の本だけを見ている。
その目は、何処か諦めたような、絶望したようなものだった。
金髪に赤目の青年?はパラパラと静かに本の頁をめくりながら言う。
「魔帝国は今日も平和だね……。ハハっ、良いなぁ……。幸せをもう一度願うのは悪いことなのだろうか……。」
その青年?は本を閉じ、暗闇のさらに遠くの何処かを見つめて悲しそうに、寂しそうに、言った。
「もう一度、あの時に戻れたら良いのに……。」
◇◆◇
魔帝国中華区大通りから少し離れた路地裏……。
一見すると何もないように見えるそこには、喫茶店があった。
限られた者しか知らず、入れない店。
それは店と呼べるのかすら怪しい場所である。
そんな喫茶店の店内で、ローワンは麻雀牌をカシャカシャと混ぜていた。
そんなローワンに、店の奥からジャスミン茶を持って出てきた一人の少女が居た。
その少女は、髪を束ねている紐に『南』と象られた金属製のプレートが結びついている。
少女は、動きやすそうな中華系の服装で、ローワンが座っている席に近づいていった。
「ローワン様、ジャスミン茶です。」
少女は慣れた仕草で持ってきたジャスミン茶をローワンが座っている机に置く。
ローワンは、少女の方を見て、笑顔を見せる。
「ナン、君はこの模様をなんて読む?」
ローワンは、手に『一萬』を取り、裏面を向けて見せた。
その裏面には本の模様が描かれている。
ナンと呼ばれた少女は少し考えるような仕草をすると、言う。
「そうですね……簡単に言えば、遥か昔に関係し、重要なことを示している模様だと思います。内容は分かりませんが。」
ナンの解答に、ローワンは「ありがとう。」と一言だけ言って、また牌をカシャカシャと混ぜ始める。
ナンも慣れているのか、何も言わずに店の奥に消えていく。
店内は、牌をカシャカシャと混ぜる音と、ジャスミンの香りで埋め尽くされた。
◇◆◇
至る所に置かれた不気味なカボチャのランタンに、ゾンビやミイラが歩き回っている世界で、平然と薄い紫色の髪をした青年がスーツを着て立っている。
青年は、鍵を一本手に持ったまま言った。
「……孤独とは……時に、何よりも自らを追い詰める……。僕もまた、あの人と同じように後悔をしてるんだ……。」
その青年は、一本の鍵を強く握りしめる。
鍵からは、禍々しい魔力が溢れ出し、周囲を暗闇に変えていく。
だが、禍々しい魔力は何処かえと消え、その鍵もまた、何処かへと消えた。




