007
王城のとある一室に、ラファエルとリーリア、そしてコリンとジャックの四人が居た。
ラファエルの隣にリーリアが立ち、向かい側にコリンとジャックが立っている。
部屋を支配しているのは、重苦しいほどに濃密な沈黙だった。
カチ、カチ……と、コリンが鍵を弄ぶ金属音だけが、規則正しく時を刻んでいる。
ジャックのカンテラの中で踊る火は、青から深紫へ、そしてまた別の色へと、誰にも読み取れないリズムでその色彩を変え続けていた。
ラファエルとリーリアは、微動だにしない。
ここではないどこか――これから起こる未来か、あるいは遠い昔の残映か――をただ静かに捉えていた。
沈黙を破ったのは、ラファエルだった。
「さて、今回リーリアとコリンやジャックを呼んだのは他でもないハデスについてだ。」
ラファエルの言葉に、コリンとジャックは手を止め、リーリアは視線をラファエルに向ける。
様々な色彩に変えていたカンテラの火は、黒色に変化すると、それ以降変わることはなかった。
「ハデスの神としての力はとっくの昔に失っている。本来は警戒する対象にすらならない。」
ラファエルの言葉をコリンとジャックとリーリアは静かに聞いている。
「だが……、今回呼んだのには理由がある。ハデスが願っているのは死だ。」
ラファエルの言葉にリーリアやコリンとジャックは納得したのか、頷いた。
ジャックはカンテラの黒い火を見た。
その黒い火は何かを伝えるように揺れている。
「なぜ死を願っているのか。罪は十分に受けた……という意味だろう。ハデスに死を許すのか、許さないのか。ハデスのことをよく知っているコリンとジャックに聞きたかったんだ。そしてリーリアと俺はどんな決定にも口は出さない。ハデスのことは殆ど知らないからな。」
ジャックが音の外れた声で喋る。
「ラファエルサマ、ボクハ、ハナシテミナイトナニモイエナイ。」
ジャックの言葉に、黙っていたコリンも口を開く。
「ジャックの言葉に同意かな。話してみないと分からないや。でも、死を許す許可はください。」
ジャックとコリンの言葉にラファエルとリーリアは少し小声で話す。
そして、死を許す許可を出した。
「ジャック、コリン、ハデスの所に行ってくれ。何をしても口は出さないと約束する。」
ジャックとコリンは腰を折り、礼をすると部屋から出て行った。
部屋に残ったラファエルとリーリアはまた、どこか遠くを見ていた。
◇◆◇
何処かの人間界……。
人気のない路地裏で、一人の男が歩いていた。
男は真っ黒な布を羽織っていて姿がよく見えない。
だが、小声でブツブツと何かを口にしている。
「数十億年ずっと……ずっと……意味のない生を過ごしていたんだ……。何かを願うなら、それは復讐か、死。ただそれだけ。復讐したとしても何も得られないのは知っている……。」




