018
「あれ、ローワンじゃん。どうしたの?こんな所まで。」
ファマンは、気配で分かった近づいてきた相手、ローワンに絵本を手に持ったまま話しかける。
「ファマン、ちょっと僕に力を貸してほしい。お願いしたいことがあるんだ。」
ローワンは、木の上に座っているファマンを見て言う。ファマンは手に謎の絵本を持っている。ローワンは、その絵本を見たことはなかった。本当に知らない絵本だった。誰が書いたのかも良くわからない。
ファマンは絵本を閉じて、小鳥のさえずりを聞きながらもローワンをジッと見る。
「ふ〜ん。珍しい。良いよ。」
少し考える素振りを見せて、ファマンは笑顔で言う。
その時には、木の上から降り、絵本も手に持っていない姿でローワンの目の前に居た。
ファマンは、空間魔法を思うままに出来る力を持っている。空間魔法と言っても、移動だけという能力ではない。様々な世界にゲートを開くことが出来るのだ。魔力関係なく。
おかしな話だと思われるかもしれない。悪魔や神は魔力がなくても、固有能力なら使える。まあ、ファマンは罰として制限されているが。
今も、この農園と農場内だけでしか移動できないようになっている。外には逃げれないように。
「良いの?それこそ珍しい。理由も聞かずに手を貸すだなんて。それも、僕に。」
ローワンは驚いていた。空間魔法とかにではない。ファマンが理由すら聞かずに了承したことに驚いていた。
「別に、大した理由はないよ。面白そうだったから。」
なんてことないように告げるファマンは、やっぱり魔族なのだ。他の者たちの気持ちや考えをそこまで考えない。ここまでの気分屋もそうそう居ないが、昔からファマンはそうだった。
「さ、行こうか。行くところがあるんでしょ?」
ファマンはローワンの応えを待たずに、そのまま歩き出す。デク爺にも外に行ってくると言って、了承をもらい、一時的に罰の魔法を解いてもらっていた。
その後姿を立ち止まって見ていたローワンは、ファマンの姿が見えなくなるギリギリの所で歩き出した。何故ファマンが許可をもらったにもかかわらず、魔法を使わないのか。その理由は分からないが、デク爺にはお礼を言い、指を鳴らす。
すると、ローワンの姿はたちまち何処かへ消えて、ファマンの目の前で現れた。
ファマンは特に気にせず、歩き出す。そんなファマンにローワンは口を改めて開く。
「ファマン、やっぱり君は何か知っているよね?これから起こることについて。」
ローワンは前を向いて歩いているファマンに言った。ローワンの言葉にファマンは振り向くと、笑顔で言う。だが、その笑顔はいつもと違って、取り繕ったような笑顔だった。
「さぁ?僕は知らないからね。これから起こることなんて。僕は悪魔。神であるローワンが知らないなら、僕も知らないじゃないか。」




