017
ローワンは、一枚の古びた紙をどこかにしまって、中華区の大通りを歩いていた。
認識阻害の魔法を自らにかけて。
大通りでは、中華風の街で、子供も大人も元気よく過ごしている。
そんな様子を眺めながら、ローワンはファンタジー区の方へと向かっていた。
ナンが見つけた一枚の古びた紙は、ローワンが遥か昔にデク爺から貰ったものだ。
デク爺には古びた紙の文字は読めなかったらしく、「お前さんなら読めるだろうから」と言って渡してきた。
ただ、ローワンはその紙を棚の奥の奥にしまってしまい、存在をすっかり忘れていた。
古びた紙の文字は、魔帝国の神にしか読み書きが出来ない。
ナンやデク爺が読めなかったのもそのせいだ。
考えながら歩いていると、ファンタジー区手前の門についていた。
門には認識阻害の魔法が通じないので、魔法を解いて門を通った。
通った先でまた認識阻害の魔法を自らにかける。
ファンタジー区は、中華区とはまた違う雰囲気だ。
淡い水色に灯された街は、神々しい光を放っている。
落ち着いた町並みに、ローワンは少しだけ驚いた。
これでも神の一人のローワンだが、普段は中華区から出ることはないからか、ファンタジー区などの他の区の町並みは見慣れていなかった。
「へ〜……数万年来ていなかっただけなのに、結構変わるもんだね……」
ローワンは、つい、口から言葉をこぼした。
だが、認識阻害の魔法をかけているので、声も他の人からは聞こえない。
少しずつ賑やかになっていくファンタジー区の大通りを歩いていく。
どこまで歩いただろうか。
門からかなり離れた所で、ローワンは立ち止まった。
そこは、大きな農園と農場だった。
認識阻害の魔法を解いて、ローワンは足を踏み入れる。
足を踏み入れた瞬間、目の前に麦わら帽子を被った老人が現れた。
「フォッフォッフォ……何の用かね。ローワン坊」
老人の動きは、驚くほどに洗練されていた。
この老人こそ、この農園と農場の主であるデク爺だ。
元悪魔で、今はここで農作業をしている、少し変わった魔族の老人だが。
「デク爺、ファマンはいるかな」
ローワンは特に飾ったような言葉を述べずに、用だけを述べる。
デク爺は、少しの沈黙の後、黙って歩いていく。
「着いてくるんじゃな。案内してやるわい」
デク爺の言葉は、老人のようになったかと思えば、もの凄い圧で滑らかに喋ることも多くある。
魔族の中でも、このデク爺は特に年齢がよく分からない人物だった。
ローワンが神となる前から居たので、歳上ということは分かるが。
デク爺は、丘を歩いて、歩いて、歩いていく。
そして、次第に少し開けた場所が見えてきた。
そこには、一本の木が生えていた。
少しお久しぶりです。
まだ、手首は痛みますが、一日ごとぐらいで投稿を続けていこうかなと思います。




