最終話 青年と最強の兵器vs終末の獣
「ということで、地上種の最終戦争に巻き込まれちゃったよ」
俺は帰るなり仲間に告げた。
それぞれの反応は……。
「私は晴近様に着いていけるなら何でもいいです!!」
「ハルくんのモンスターに勝てない私は大人しく待ってる……」
「ワタクシは未熟ですし、戦いについていけませんわ」
「師匠、俺は?」
ガイだけは着いてきたそうだ。
俺に同行を尋ねてきた。
「ガイ、着いてきたいの? 自衛が出来るなら別に構わないけど」
「自衛?」
「うん、どうしようかな。俺の攻撃を三分間だけ防げたらいいよ」
「……ちなみに、師匠は縛りありか?」
「もちろん。モンスター無しの【不動剣クリカラ】のみで。ハンデは……七割くらいの力で相手しようか」
「無理だ、留守番してる」
ガイは即答した。
この前、俺に【無刀取り】をされた事が堪えてるのかな。
発端は『そろそろ新しい技を教わりたい』なんて言葉だった。
【兜割り】すら中途半端だと言ったんだけど、不服そうだった。
まあ技をたくさん覚えたいのは分かるけど。
案外、一つを極めた方が強かったりするんだよ。
まあ、別に教えてもいいんだけどね。
その中途半端さを伝えるために行ったのだ。
俺が素手、ガイが刀での模擬戦を。
相手を得物で侮るのもガイの悪いクセだ。
俺はガイの打ち込んできた刀を音も無く奪った。
で、ショックを受けている隙に奪った刀で……。
まあこれはいいか。
本人、まだトラウマっぽいし。
「残念ながら、今回連れて行くのはアリアだけね」
その言葉を聞くなり、アリアは目を輝かせた。
「やはり!! 私が最強だからですね!!」
「いやー……実は今回それは関係ないんだ」
「あれ? ではどうして」
「確かに最強ではあるんだけど。連れて行く理由は俺の神威武装」
「【アウローラ】ですか?」
「うん。アリア、あれの効果って知ってる?」
「それはもちろん。新属性の魔法が使えることですよね?」
「それ、半分正解なんだ。もう半分はね、魔力の無限供給」
「!!??」
「ハルくん私もそれ初耳なんだけど!!」
「無限って……有り得ませんわ……」
「師匠、神威武装まで鬼かよ……これ、本来の武装を授かってたらどうなってたんだ?」
それぞれ驚いてた。
あれ、アリアは薄々感づいてるかもと思ってたんだけど。
あとガイ、今だから言えるけど。
俺、間違いなくテイマーになった方が強いよ。
「晴近様!? ご存知なら早く言ってくださればよかったのに!! といいますか、なんでそんな事をご存知なんですか!?」
「いや、なんでって。この中で自分の神威武装の能力知らない人っている? あ、バッドステータス以外で」
「……そういえばいません……」
「だよね。じゃあ俺が知ってても不思議じゃないどころか当然だよね。新属性については名前決めてなかったし、アリアがもう名付けてたから。それとごめん、魔力量については薄々感づいてるかと思ってた。移動魔法の莫大な魔力量の事もあったし」
「あの、再会の時にも言いましたけど、そこは自分の実力と思ってたわけでして。いま私すごく恥ずかしいんですけど……【アウローラ】の属性で最強だとは言ってましたが、魔力量までなんて……まさに晴近様のお陰だけじゃないですか。恥ずかしさで死にそうですよ」
恥ずかしがるアリアはいいけど、死なれるのは困るね。
「そういうわけで、アリアは無尽蔵の魔力で魔法が撃ち放題ってわけ。現に、今まで魔力が枯渇したことなんてないでしょ?」
「それもそういえば。ああぁぁ、なんで気づかなかったんでしょう……」
「まあまあ。二週間後には【ベヒーモス】が出現するらしいから、それより少し前に東の島へ渡ろうね」
「そうですね。それはそれとしてお供は絶対しますから」
切り替えの早いアリアだった。
◯
その深夜。
世間のみんなが寝静まっている頃。
『私の声が聞こえるか……我が子よ』
「……」
『声を聞くのだ……我が子よ』
「……」
『……幻聴ではないからな? 汝、最初から思っていたが少しおかしいぞ?』
「あれ、どなたかと思ったら神様じゃないですか」
『白々しいぞ。なぜ何事もなかったかのように答えるのだ……』
「今日は何かご用ですか? 俺、アポなしで突然の事だから、おもてなしの用意もできてなくて」
『もてなしなどよい……。ん? 今さりげなく私を責めたか?』
「まさかそんな。寛容を是とする神様らしくもないお言葉ですね」
『そうか……? それよりもそうだ、汝に要件があってのことだ』
「『終焉の試練』とかソレっぽい事を言ってた件ですか? 俺、戦わされるなんてお聞きしてないんですけど。それより、天魔大戦とか『終末の獣』とか。試練っぽく言ってますけど神様なら平和な感じで天地開闢してくださいよ」
『汝、丁寧な言葉遣いのフリしてズケズケと言ってくるな。そこは上流工程の仕様書がな……。神とは六日働いて一日休む存在。デスマーチなど論外なのだ』
「お気に障ったのなら申し訳ありません。仰る意味がよく分かりませんが、だからって丸投げはどうかなと」
『よいのだ。そしてそこは許せ。本来は汝の【調和の力】をもって三種族をまとめ、底上げする役目を担ってもらおうと思っていたのだが……。予想外の成長を遂げたようだな』
「そうなんですよ。聞いて下さい、俺、神様のお陰ですごい可愛い子と恋人契約できてしまいまして」
『神相手に急に惚気るな……。私が言っているのは魔物使いとしての事だ』
「テイマーの? そちらは別に。順当な成長じゃないですかね」
『順当……? 汝、外なる神とも関係をもっておるだろう……。私は知っておるのだぞ』
「ああ、ご存知でしたか。でもアレ、俺でも危ないといいますか。ピーキーすぎて普段使いにはできないんですよ」
『そこで一言だけ助言をしておこうと思ってな。我が子よ……三種族の調和と底上げは今回、適わぬようだ。もし終焉の試練を超えたくば、魔物使いとしての全力を出すのだ』
「全力って……さっきの普段使いできないって言ったヤツですか? アレ、本気で危ないんですけど。大体アレ、テイムというよりは【エンペラーファントム】を通しての契約ですし。しかも召喚条件が『自分の一番大事な契約書とテイムモンスターを、契約相手に告げず破棄すること』。神様、ちょっと俺にだけ厳しすぎません?」
『これも汝への愛ゆえである……では、心して臨むがよい……』
そして神様は去っていった。
いや、俺への愛って。
それ歪んだ愛じゃないですかね。
それと、色々適当すぎですよ。
そのツケを俺に払わせないでください。
そんな詭弁で誤魔化されるのは遥くらいですよ?
しかも俺のモンスターなら特性も把握してるし、別に助言になってない。
聖典の事といい神様って本当、適当すぎやしませんかね。
とりあえずまあ……寝直すか。
深夜訪問なんて神様らしい非常識な時間にいらっしゃったせいで眠いし。
◯
それから十日の時が過ぎた。
陛下達は目的地の島に手を入れていた。
簡易的な生活ができる居住区である。
俺を早めに送るため、なるべく不自由がないようにとの事だった。
俺とアリアは三国のトップに見送られ、目標の島についた。
島の中央には巨木があり、そこそこ広い。
外周部は一日で周り切れそうにない。
観光目的でもないので拠点で大人しくすることにした。
幸い生活の糧には事欠かない。
三日経っても何も現れなかった。
しかしとうとう四日目。
巨木のすぐそば、広場になっている辺りに。
天を衝くかのような巨獣が光と共に姿を現した。
……無数のモンスターを伴って。
これ、ちょっと無理かもしれない。
「アリア、いけると思う? アレ」
「晴近様が一緒なら」
「まあ試してはみようか。作戦は事前の通りで」
「はい、いつでもどうぞ」
「じゃあ──アリア!! 目標、巨獣【ベヒーモス】と周囲のモンスター!! 全力加減無しの最強魔法【エンペラービッグバン】だ!!」
「あ、【ステラノヴァ】が。その魔法名は初耳ですよ!?」
アリアの全力魔法が相手を直撃する。
【エンペラービッグバン】も単発ではない。
魔力は無尽蔵なので撃ち放題だ。
周りのモンスターどもはそこそこ倒しているが。
肝心の【ベヒーモス】には痛痒ほどのダメージもない。
……やはりダメか。
魔力というタンクは無限でも、
アリア自体が一度に扱える魔力量は決まっている。
例えは悪いが、超巨大タンクの口の部分が水筒のようなものだ。
「アリア、作戦を切り替える。一度魔法を止めて」
「はい」
それから俺は【ドラゴンフルート】を吹き始めた。
ヤツからモンスターを奪うためだ。
その結果。
所有合戦には競り勝った。
全て俺の支配下に置くことに成功はした。
しかし【ベヒーモス】が規格外すぎる。
ヤツから奪ったモンスターを使い攻撃しても、
ダメージが一切通らない。
これはもう……。
そう思っていると、【ベヒーモス】の方から思念のようなものが飛んできた。
『ヒトの子よ、諦めろ。今までは加減して攻撃しなかったが、もう理解したろう。ヒトもモンスターも我には勝てん。滅びを受け入れよ』
神様との会話みたいな感じだね。
これ、俺からの声も通じるのかな。
「あの、【ベヒーモス】さん。なんとか引いてもらえません? 滅ぼされると困っちゃうわけでして。そもそも、世界を滅ぼして意味があるんですか?」
『滅ぼすことそのものが意味だ。我はそのような存在。その問いかけは無駄だ』
声は通じた。
しかし話は一切通じないらしい。
先ほど思案していた最終手段を使うしかないか。
神様、恨みますよ。
「じゃあすいません、俺がアナタを滅ぼします。俺、テイマーなんで本当は話し合いしたかったんですけど、もうしょうがないですよね」
『小さき者よ、我を滅するだと? 何を考えておるかは知らんが無駄だ』
【ベヒーモス】との会話はもうこれでいいだろう。
後は俺の覚悟と。
アリアをなんとかすることだけだ。
「アリア、聞いて。これから俺、禁忌のモンスターを召喚するから。これ、絶対に守ってほしいんだけど、俺の背中にしがみついて目を閉じてて。絶対に開けちゃダメ。耳栓も渡すから、俺が外すまでは絶対に外さないで。守らなかったら……発狂死する」
「はい……発狂!!?? 今までも規格違いなのばっかりでしたけど、もう嫌な予感しかしないんですが!!」
「アリアが信じてくれれば大丈夫。背中にしがみついて、外の情報を遮断して俺の事だけ考えててね」
あ、そうだ。
俺はアリアに耳栓を渡しつつ言う。
付ける前に伝えておかないと。
「アリアごめん。事情は後で説明するから許してね。じゃあ、また後で」
俺は……一番大事なアリアとの【恋人契約書】を破り割いた。
そして、アリアとのテイム契約を解除する。
アリアから悲鳴が上がったが、耳栓を付けさせ無理矢理に背中へとしがみつかせた。
「君を呼ぶのは初めてだね……。さあ、俺の一番大事な契約書は破り一番大事なテイムモンスター契約も破棄した。『契約通り姿を現せ。狂気にして白痴。万物の魔皇──デーモンエンペラー!』」
その瞬間。
上空から形容しがたい怪物が姿を現した。
巨大な触手や目やワケノワカラナイモノの集合。
見るだけでも気が狂う。
「う、ぐ、ぐぐぐぐ」
これは発狂耐性のある皇の人間でも辛い。
背中に感じる温もりがなんとか意識を引き留めてくれるが、常に理性との綱引き状態だ。
目を瞑り耳栓をしているハズのアリアもガタガタと震えている。
「デ、【デーモンエンペラー】。あの巨獣を、く、喰らえ」
言葉を発するのも難しいが命令を下す。
こちらが正気でさえあれば俺のモンスターはオーダーに従う。
『$#%j¥D*!』
【デーモンエンペラー】が何かを言う前に俺は耳を塞いだ。
アレをまともに聞くと発狂する。
そして【ベヒーモス】は……。
頭を振り、犬が自分の尻尾を追い続けるような行動と。
【デーモンエンペラー】が近づく度に正気を失い、自傷らしき行動をとっていた。
何かを叫んでいるようだったが、それに耳を傾ける余裕が全くない。
やがて、ゆっくりと追いついた【デーモンエンペラー】は。
ゴクリ、と。
触手らしきモノで【ベヒーモス】を捕らえ丸呑みにし。
『オーダーは果たした』と言わんばかりに消えていった。
「は、はぁ~~~~~……」
なんとかなったか。
今回ばかりは本当にヤバかった。
しかも味方であるはずのモンスターのせいでだ。
俺は、未だに震えているアリアを解放することにした。
耳栓をはずし、目を開かせ声をかける。
「アリア、もう大丈夫だから。【ベヒーモス】もなんとかなったよ」
「ははは、晴近様ままま。いい、一体ナニを呼んだんですかかか」
歯をガチガチと鳴らしながら言う。
「今回ばかりは本当にごめん。落ち着くまで俺に抱きついてていいから」
それから、かなりの時間をかけてアリアを宥めたのだった。
◯
街に戻った俺たちは英雄扱いだった。
しかし、とにかく疲れていたので自宅での休息をお願いし。
わずらわしい事は後回しにしてもらったのだった。
一息吐いたところでアリアが俺に詰め寄ってきた。
「晴近様ッ!! いくらなんでも酷いですよ!?」
「ごめん、怖かったよね」
「そうではなく! ……大事な【恋人契約書】」
「あ、そっちか。あれ、本当は最初から要らなかったんだよ」
「うっ……酷い……」
ヤバい!
アリアが本気で泣きそうだ!!
俺はかつてなく焦った。
「違う違う。ちょっと話を聞いてよ」
「話ですか?」
すでに涙目の鼻声である。
「アリアにあげた、【アウローラ】の効果なんだけどね」
「それは新属性と無尽蔵の魔力でしょう……?」
「そうなんだけど、実はもう一つ。さすがに照れくさくて言えなかったんだけど……無尽蔵の魔力を引き出すには条件が要るんだ」
「条件……?」
「そう。『神の子だから正直だ』なんて言っておいて、お笑いぐさなんだけどね。その条件は『持ち主が譲渡相手に愛情を注ぎ続けること』。つまり、あの契約書がなくてもアリアがソレを使える限り、証明になり続けるってこと。契約書は契約書で嬉しくてサインしちゃったんだけど」
「ぁ……じゃあ私、最初から晴近様に守られてた上に愛情を?」
「自分で言うのもなんだけど、うん」
「晴近様ぁ!!」
彼女は涙はそのまま、笑顔で俺に抱きついてきた。
彼女との関係はこれからゆっくりと育んでいこう。
種族争いや終末なんてもう真っ平だ。
一件落着だ。
これから平和になるだろうし、俺は普通に生きていこう。
そう心に決めたのだった。
……そうだ、遥には用心しておかないとね。
これだけバタバタしても
結局10万字超えちゃいましたよ!
これまだ中編ですよね?
魔剣の人の処遇はオマケでと思ってましたが
そちらは気が向きましたら。




