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第24話 青年と会談。

「あの、なんで俺がここにいるんでしょう?」


 現在は三国の会談中だ。


 人間界の東雲(しののめ)陛下。

 天界の界王様ことレオレオさん。

 そして、魔界の魔王ことラファエロさん。


 各国の代表、そうそうたるメンバーだ。


 この会談の議題は決まっている。

 和平および【ハルマゲドン】のこと。

 そして【終末(しゅうまつ)の獣】のこと。

 それはわかる。


 しかし……なぜ俺がここに??

 俺、知り合いではあるけど国政を担う立場ではないよ。

 それを尋ねるとお三方から呆れた目で見られた。


「この会談が成立したのは晴近が原因じゃから当然じゃろう……」


「ハルチーはそろそろ自分の立ち位置を理解した方がいいよ……」


「晴近殿がおれば世界の危機も乗り越えそうだしの……」


 各国王がこれまた呆れ気味にコメントをしてきた。


「そりゃあ結果的にそうなりましたし、『俺がいなくとも』なんて謙遜(けんそん)するつもりもありませんけど。会談の結果だけ後日お教えいただければよいのでは……」


「よし、それでは【ハルマゲドン】の内容から整理していくとするかの!!」


 東雲陛下により俺の発言は完全にスルーされた。


「まずは聖典の内容からじゃ。これは、一冊の書物が各界に分割されていることが分かった」


「うん、天界のもそうなんだけど、明らかに原本が同じなんだよね」


「魔界に伝わる部分は直接的な危機内容のインパクトが一番であったからな……」


 あ、それで『種族仲良く』的な事を言ってたのかな。

 あの神様の幻聴内容。


「では教義的な事は置いておくとしてじゃ。人間界に伝わる内容は……『汝ら天魔に劣らず。力に頼まず調和の役割を果たすべし』じゃ。我々に神威武装を授けたのは争わせるためでなく、『天魔大戦をなんとかせよ』との事だったのかもしれぬ……」


「じゃあ次は天界。『天使族よ、汝らには魔法の力を授ける。よくよく仲間を助くべし』だね。コレ、先代まで『天使族の仲間』って解釈されてたみたい。今なら分かるけど、全種族ってことだね」


「余の魔界はこうだ。『魔族よ、来たるべき【ハルマゲドン】に備(そな)うべし。【終末の獣】を倒せねば、あまねく種は絶滅する。よくよく力を蓄えよ』と。こちらも界王と同じだ。『あまねく種』とは『あらゆる魔族種』と思っていたが、全地上の種族という意味だったのだな……」


 なんだろう。

 皆さん納得してるみたいだけど。


 神様これ、かなり無茶ぶりじゃないかな。

 まず、戦争中に人の言うことなんか聞かないでしょ。

 しかも人族なんてずっと蹂躙されてたわけだよ。


 それに、全種族なら全種族って記すべきだし。

 絶滅がどうとかも、もっと具体的に載せないと。

 バッドステータスの件もそうだよ。

 そもそも大戦止めるのにもっと方法あるのでは。

 他にもツッコみどころが多すぎる。

 もしまた神様の幻聴が聞こえたら文句を言おう。


「それで、力を合わせろっていうのは分かりましたけど、具体的にどうするんですか?」


 あ、しまった。

 つい発言してしまった。


「うむ……三国で協定を結ぶのはもちろんじゃが……その事でちょっとの」


「といいますと?」


「実は、それぞれの聖典に断片的なページがあっての、合わせたら全てが分かった」


「全てですか?」


「うむ。【ハルマゲドン】とは【終末の獣】が攻めて来た際の、地上種との戦争の名。【終末の獣】の具体的な名は【ベヒーモス】。そして……このままじゃと我々は【ベヒーモス】に勝てん」


「そこは三種族の同盟で勝てっていう話なのでは?」


「記述の戦力を見るとな……我々が協力しても、付け焼き刃の共同戦ではまず勝てん。事実の判明が遅すぎた」


「練度が足らないって話ですかね?」


「そうじゃ、それも圧倒的に。例えるならそうじゃな……三国を統一して、種族の差別なく百年単位くらい運営して互角くらいじゃ」


 確かにそれは無理だろうけど。

 陛下、その計算方法の根拠は一体どこから。


「そんなに強いんですか? そもそも、【ベヒーモス】の特徴ってどんななんですか」


「晴近殿。それは余が説明しよう」


【エンペラーオーガ】の件以来、すっかり俺に対して腰の低くなった魔王様だった。


「お願いします」


「魔界の記述には巨体としか書かれておらなんだが……どうやらヤツは、【魔物の王】としての側面を持っているらしくてな」


 え。


「それ、もしかして俺の天敵なんじゃないですか?」


「それが分からぬのだ。テイムしたモンスターの所有権を奪えるなどとは記されておらぬ。そもそも、晴近殿が負ける想像がつかんせいもあるが……」


 それは【エンペラーオーガ】のせいですね。


「で、仮に【ベヒーモス】が使役する魔物が、仮に晴近殿と同等だとすると……ヤツ自身を含めた【モンスターパレード】には総力を挙げても勝てぬ」


「それ、地上種もう詰んでるんじゃないですか?」


「そこでハルチーだよ!!」


 あ、界王様ことレオレオさんに切り替わった。

 この人だけやたらとフランクだ。


「いえ、いくらレオレオさんの頼みでもそれは」


「ちゃんと勝算もあるのさ! ハルチーの【エンペラー百鬼夜行】。これで【ベヒーモス】とある程度やりあうとする。それでも物量差で負けるかもしれない。そこで……【ドラゴンフルート】だよ、ハルチー」


「まさか、俺に【ベヒーモス】とモンスターのテイム合戦を行えと?」


「……ごめんハルチー。本当はそんな事させたくないんだよ。こうなっているのは僕たちが至らないからだ。その尻拭いをさせるのは心底嫌だ。でも、そうしないとアリアちゃんを含めた全種族が滅びてしまうんだよ……」


 レオレオさん、卑怯だ。

 アリアを引き合いに出されたら俺はノーと言えない。


「【ドラゴンフルート】か……」


「そういえば聞きそびれてたけど、ハルチーの【ドラゴンフルート】の熟練度って今どれくらい?」


「そうですね、伝説の笛吹きテイマーほどかはともかく、かなりそれに迫る所までにはいってるかと」


「晴近がさらに人外じみてきておるのじゃ……。っと、これは頼み事をするというのに失言じゃな。妾とて可愛い弟分を危険にさらしたくはないのじゃが、このとおりじゃ! 頼む!」


「僕からも頼むよハルチー。我々の愚かさを許してほしい……」


「余からもだ。事が済めば首でもなんでも差しだそう……」


 三国の代表は俺なんかに頭を下げていた。

 しかも机ではない、地面にだ。


「もう、やめてくださいって。……というか、神様が仰っていた【終焉(しゅうえん)の試練】ってこの事だったのかな」


 その言葉にお三方は凄い勢いで顔を上げた。


「晴近!? 神のお言葉を賜ったのか!?」


「聞いてないよハルチー!?」


「規格外すぎるぞ晴近殿!?」


 あれ?


「いえ、俺いつも『神の子だから』って言ってませんでしたっけ?」


「アレはお主の狂言(きょうげん)ではなかったのか……? 晴近じゃし」


「ハルチーは『音楽の神の申し子』かなと……」


「余はそもそも先日が初対面だぞ……」


 どうやら微塵も伝わっていたらしい。

 魔王様はそうだった、まだ分かる。

 陛下はちょっと酷くないですか?


「まあそんな神様の声も幻聴なわけですけど」


「晴近、そういうところじゃぞ!?」


 陛下に怒られてしまった。


 しかし、妙に引っかかるというか。

 陛下は『種族統合して百年で互角』みたいな事を仰ってたけど。


 最初にあの声を聞いた時は確か。

『汝なら終焉の試練も超えられるやもしれぬ』

 でしょ?


 間に合わないならこんなこと言わないよね。

 って、まさか。

 このときすでに、俺は戦わされる予定だったのか。

 なんという理不尽。


「それじゃあ仮に俺が行くとして……戦力は。うーん」


 下手な戦力は逆にね。


「瑞穂国からは十二座席(ゾディアック)を出そう」


「天界からは僕ら王族とアリアちゃんを」


「魔界は……四天王と余であるな」


 各国の精鋭か。

 だがしかし。


「アリア以外いりません」


「なぜじゃ!?」


「ハルチー、ひいきでもそれはないんじゃない!?」


「四天王と余はまぁ、あの方と比べれば到底及ばぬが……」


 それぞれから避難の声があがった。


「いえ、俺も本当はアリアを連れて行きたくはないんですよ。それはもう死ぬほど。でも、それ以外は足手まといです」


「理由は説明してくれるのであろうの?」


 自国の精鋭を否定されたし当然か。

 十二座席(ゾディアック)ってこの国の上級戦力だし。


「逆にお伺いしたいんですけど、そのメンバーで俺のモンスター一匹にでも勝てる存在っています?」


「「「……」」」


 あ、三人とも黙った。


「アリアには理由があるんですよ」


「え、ハルチーがアリアちゃんを傍に置きたいだけじゃないの?」


「あのですね、レオレオさん。さすがに俺もそこまで私情は挟まないですって。アリアには俺の神威武装がある。アレ、実は新属性だけじゃなくて魔力を無限に供給できるんですよ。まあ供給は本人にだけですけど」


「魔力が無限!?」


「それでアリアちゃん、魔力切れを起こしたことがなかったのか……」


「待て! 魔界攻めの際にそのような話は聞いておらんぞ!?」


 そりゃ言ってなかったし。

 アリア自身、下手すると『なんか魔力メッチャ多いな』

 くらいにしか思ってないんじゃない?


 これも例によって俺の神威武装の持ち主特権。

 それでも分が悪い気がするけど。

 いざとなったら意地でも逃がすか。


「で、アリアには新属性の高出力魔法があります。それもテイマー経由で火力マシマシの」


「それが撃ち放題というわけか……」


「ハルチー、僕もそれ初めて聞くんだけど……」


「晴近殿、魔界滅ぼそうと思えば出来たのではないのか……?」


 撃ち放題はそうだけど、どうだろう。

 さすがに、一気にはできない気がする。


「もちろん、連れて行っちゃダメっていうなら置いていきます。さっきも言った通り、死ぬほど連れて行きたくないので」


「……仕方がないの」


「ハルチー、アリアちゃんを頼むね」


「余など国政まで調整しておいて役に立てぬとは……」


「ところでですけど、【ベヒーモス】の出現位置と時期は判明してるんですか?」


「あ、ああ。そこはもちろんじゃ。時期は今より二週間後、場所は東にある大きな島じゃ。海流は穏やかゆえ、船で普通に渡れる」


「わかりました、準備するので協力してくださいね? それから、これが終わったら二度とアリアをこういう場には連れて行きませんからね」


「地上の全種族を挙げて支援しよう」


 陛下たちはそう約束してくれた。


 アリアは絶対ついてくるだろうけど……やだなぁ。



 ◯


 今回のリザルト


 テイムモンスター一覧


 ・エンペラースライム


 ・エンペラーゴブリン


 ・エンペラーオーガ


 ・エンペラーファントム


 ・エンペラーヘルハウンド


 ・エンペラーフェニックス


 ・エンペラーキマイラ


 ・エンペラーガーゴイル


 ・エンペラーローカスト


 ・エンペラー冬虫夏草(とうちゅうかそう)


(省略)


 ・遥


 ・アリア


 ・伊吹


 ・凱(がい)



【ベヒーモス】

 魔獣の王。

 その存在は神が人を作った際に

 勝手に生まれた獣でイレギュラー。

『終焉の試練』などと言っていたが

 単なる神の不手際。

 生き残るのは魔物か人か。

 本能のレベルで意識が刻まれている。

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― 新着の感想 ―
[一言] ようやく話がクライマックスに向かいつつありますね。 前回も言ったけど、終末の獣関連の予言の部分は、見方によっては天魔大戦さえ起こらなきゃ永遠に終末の獣は顕れなかったとも取れるだろうに……ラ…
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