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幼馴染の美少女とイケメンの親友に嘘告された俺。それを知った二人の妹たちがブチギレた  作者: 白金豪


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第20話 クラスメイトの前で

「謙也さん、入りますよ?」


「うん」


 美優ちゃんに頷いて教室の扉をくぐる。


 隣には海ちゃんもいた。


 昨日と同じ三人。


 でも今日は扉の前で足が止まらなかった。


 もちろん、何も気にならないわけじゃない。


 教室の奥で誰かが笑えば、そっちを見てしまう。


 それでも美優ちゃんと海ちゃんの足音がすぐ近くにあると、そのまま歩けた。


「おはよう、大中」


「あ、おはよう」


 一人の男子に声を掛けられる。


 昨日、体育の柔道の時にに話しかけてきたやつだった。


「今日も三人なんだな」


「う、うん」


「そっか」


 なぜか笑っていた。


 何だよ、その顔。


 言いたいことがあるなら言ってくれ。


 いや、やっぱり言われても困るかもしれない。


 教室には、まだちらほらとしかクラスメイトがいなかった。


 机に伏せているやつもいれば窓際で友達と話しているやつもいる。


 美幸も、もう来ていた。


 自分の席に座ってスマートフォンを見ている。


 俺はその姿を視界の端に入れたまま自分の席へ向かった。


 美優ちゃんも海ちゃんも黙って後ろを付いてくる。


 俺は肩からカバンを下ろした。


 机の横に掛けようとして、いったん席の上に置く。


 中から教科書を出そうとしたところで美優ちゃんがすぐ隣に来た。


「ちょっと置かせてもらいますね」


「うちも」


「え? あ、うん」


 慌てて自分のカバンを横にどける。


 空いた机の上に美優ちゃんのカバンが置かれた。


 その隣に海ちゃんのカバンも並ぶ。


 海ちゃんがカバンから透明なファイルを取り出していた。


 中に一枚の紙が入っている。


 裏側しか見えなくて何の紙かは分からなかった。


 なぜか両面テープが貼られていた。


「二人とも、どこに行くの?」


「すぐそこです」


 美優ちゃんは教室の前に顔を向けた。


 海ちゃんも、そちらを見る。


「じゃあ、行こっか」


「うん」


 二人が歩き出す。


 え。


 本当に、そっち?


 教室から出るんじゃなくて?


 美優ちゃんと海ちゃんは机の間を抜け、そのまま教壇に向かっていた。


 窓際で話していた女子が二人に気づいて顔を上げる。


「美優ちゃん? 海ちゃん?」


 呼んだけど二人は止まらなかった。


 海ちゃんがファイルから紙を抜く。


 迷いのない動きだった。


 もしかして昨日から何か相談してた?


 俺、何も聞いてないんだけど。


 海ちゃんが教壇に上がった。


 美優ちゃんもその隣に立つ。


「みんな! これを見て!」


 バンッ!


「うわっ」


 思わず声が出た。


 海ちゃんが紙を右手で黒板に叩きつけていた。


 机に伏せていた男子まで顔を上げた。


「何?」


「びっくりした……」


 教室のあちこちから声が漏れる。


 海ちゃんは手を離した。


 黒板の真ん中に一枚の紙が残る。


 写真だった。


 かなり大きく印刷されている。


「うちのクズ兄が彼女がいるにも関わらず浮気してました!」


 海ちゃんの声が教室に響いた。


「……え?」


 俺は黒板を見る。


 金髪。


 見覚えのある顔。


 拓海だった。


 制服じゃない。


 ジャケットを着て女の子の背中へ両腕を回している。


 しかも、ずいぶん嬉しそうな顔だ。


 いや嬉しそうというか。


 鼻の下を伸ばしているというか。


 俺は写真の女の子に目を移した。


 茶色い髪。


 うちの学校とは違う制服。


 美幸じゃない。


「えっ!?」


 教室の横から悲鳴みたいな声がした。


 美幸だった。


 スマートフォンを持ったまま立ち上がっている。


 椅子が後ろにずれて、床をこする音がした。


 でも美幸は、そっちを見もしなかった。


「何、それ……」


 黒板を見つめている。


 唇が少し開いたままだった。


 隣の席の女子が美幸と写真を交互に見る。


「北條さん、これ……南川君だよね?」


「……知らない」


「え?」


「こんなの、知らない……」


 美幸の声が小さくなる。


 俺も、もう一度写真を見た。


 間違いない。


 拓海だ。


 あいつの顔、俺が見間違えるわけがない。


 だけど何で?


 美幸と付き合ってるんじゃなかったのか。


 一昨日、あんなに得意そうに言っていただろ。


 俺が何も知らずにいたことを二人で笑っていたのに。


「これ、いつの?」


 前の席の男子が尋ねた。


「昨日の夕方」


 海ちゃんがすぐに答える。


「公園で見かけたの。うちと美優、二人で」


 隣の美優ちゃんがうなずいた。


「私も見ました。この女の子の方から抱きついて普通に抱き返してました」


「うん。すっごく楽しそうだったよね」


「そうだね」


 二人が写真に顔を向ける。


 昨日の夕方って。


 俺の家から帰ったあとか?


 玄関の前であんなに笑って手を振っていた二人が、その帰りにこれを見たのか。


 全然知らなかった。


「ちょっと待って」


 美幸が席を離れた。


 教壇の方に歩いていく。


 異常なくらいの早足だった。


「その子、誰なの?」


「うちが聞きたいけど」


 海ちゃんが答える。


「見たことない子だったし」


「……親戚とかじゃないの」


 美幸が言った。


 海ちゃんは首をかしげる。


「うちの親戚なら、うちも知ってると思うけど?」


「それは……」


「それに、その子、言ってたよ。拓海君のこと大好きだもん、って」


 美幸の足が止まった。


 もう黒板のすぐ前だった。


 写真を見上げたまま何も言わなくなる。


 美優ちゃんが、その横顔を見ていた。


 昨日みたいに怒鳴ったりはしない。


 ただ静かに見ている。


 それが妙に気になった。


「帰るときも腕に抱きついてたし。ずっとくっついたまま、公園から出ていったよ」


 海ちゃんが続ける。


「これで、ただの知り合いですって言われても、うちは信じないけどね」


「……まじかよ」


 誰かが呟いた。


 すぐ近くの男子だった。


 その隣のやつも眉を寄せている。


「昨日の嘘告話だけでも、あれだったのに」


「北條さんと付き合ってるんだよな?」


「そうじゃなかったら大中君にあんなことしなくない?」


 俺の名前が聞こえた。


 肩が少し動く。


 でも誰も俺を笑ってはいなかった。


 みんな黒板を見ていた。


「彼女と一緒に嘘告して、その次の日に別の子と会ってたってこと?」


「いや、何やってんの……」


 女子の一人が呆れたように言った。


「そう! そういうこと!」


 海ちゃんが大きくうなずく。


 教室の扉が開いた。


 登校してきた男子が教壇にいる二人を見て足を止める。


「何? 何やってんの?」


「これ見て」


 近くの女子が黒板を指さす。


 男子は写真を見て目を丸くした。


「……南川?」


 海ちゃんが写真の横に立つ。


 美優ちゃんも反対側に少しずれた。


 黒板が、さっきよりよく見える。


 拓海の顔も。


 女の子を抱きしめている両腕も。


「これで分かりましたか? うちの兄、南川拓海はクズでゴミカスです!」


 海ちゃんが教室のみんなを見る。


「彼女がいるのに別の子とこんなことしてるんだよ? ありえなくない?」


「……それは、うん」


「普通にひどいと思う」


 女子たちが答える。


 美優ちゃんも何度もうなずいていた。


「人の気持ちで遊んで笑って、そのうえこれですからね」


 その言葉に胸の奥が少し詰まる。


 一昨日の俺は美幸の告白を信じた。


 拓海のことも、ずっと親友だと思っていた。


 でも今、黒板に貼られている写真を見ても、あいつが何を考えているのか全然分からなかった。


 美幸のことは好きだったんじゃないのか。


 だったら、この女の子は何なんだよ。


 黒板の前で美幸が手を握る。


「……昨日」


 かすれた声だった。


「昨日、あたしと帰ったあとに……?」


 海ちゃんの眉が動いた。


「へえ。一緒に帰ってたんだ」


 美幸は返事をしなかった。


 写真から目を離さない。


「なんだ、騒がしいな」


 聞き慣れた声だった。


 拓海が後ろの扉から入ってくる。


 カバンを片方の肩に掛け、教室の前に顔を向けた。


「朝から何やって――」


 言葉が止まった。


 拓海の視線が黒板に向く。


 貼られた写真を見る。


 その横にいる海ちゃんを見る。


 もう一度、写真に戻った。


 口が半端に開く。


「って!? ちょ、ちょっと待てよ!」


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