第17話 ソファの上で
「謙也さん謙也さん」
隣から名前を呼ばれる。
俺の家のリビング。
いつも座っているソファに美優ちゃんがいる。
その隣には海ちゃんもいた。
少しだけと家に上げたんだけど。
まさか三人で同じソファに座るとは思わなかった。
「謙也さん?」
「え? あ、うん。何?」
美優ちゃんが前のめりになって俺を見ている。
白い髪が肩からさらりと落ちる。
「謙也さんの家に初めて入りました」
「うちも〜」
海ちゃんが美優ちゃんの横から顔を出した。
二人とも、ずいぶん嬉しそうだ。
「いつもここで何してるんですか?」
「テレビを見たりスマホを触ったりかな」
「へえ〜」
海ちゃんがテレビの方に顔を向ける。
黒い画面に俺たち三人が映る。
「じゃあ、うちら今いつもの謙也君と同じ景色を見てるんだ」
「まあ、そうなるね」
「そっかぁ」
何がそんなに嬉しいんだろう。
海ちゃんは足を揃えて座り直し、もう一度リビングを見回した。
「きれいにしてますね」
美優ちゃんが言った。
「そ、そうかな?」
「うちから見てもきれいだよ。テーブルに何も置きっぱなしになってないし」
「たまたまだよ」
褒められると恥ずかしくなる。
「謙也さん、ちょっといいですか?」
「え――」
「えい!」
美優ちゃんの手が俺の肩に触れる。
視界がぐらっと揺れる。
「うわっ」
一瞬ふわっと体が浮いたような気がした。
背中が触れたのはソファの座面だった。
いや、いつの間に?
体を戻そうと上を向いたら美優ちゃんの顔がすぐそこにあった。
「謙也さ〜ん♡」
「……はい?」
返事が変な声になった。
美優ちゃんは俺に接近してくる。
水色の瞳がきらきらしている。
目の中にハートが浮かんでいる。
「謙也く〜ん♡」
その後ろから海ちゃんまでも覗き込んでくる。
茶色の瞳も美優ちゃんと同じようだった。
何だ。
何が始まるんだ?
「ど、どうしたのかな?」
右を見る。
左を見る。
上を見ると美優ちゃんと海ちゃん。
もう一度、美優ちゃんを見る。
にこっと笑われる。
ダメだ。
状況が何も分からない。
「えへへ♡ 楽しみはこれからですよ〜謙也さ〜ん♡」
「そうだよ〜〜♡」
海ちゃんも美優ちゃんの後ろから身を乗り出す。
近い。
帰り道も近かったけど今は何か違う意味で近い。
「ちょ、ちょっと待って……。一旦落ち着こう。ね? ね?」
俺の制止も虚しく二人は——。




