第17話:害虫駆除のプロトコル
午後八時十五分。定時を疾うに過ぎた『Lumiere』編集部のフロアは、ぽつりぽつりと残業する数名の社員を残して、静まり返りつつあった。
カタカタカタ、ターン。
キーボードを叩く乾いた音が、オフィスの静寂に規則正しく響く。
デスクライトの白い明かりに照らされた槇原紬は、目薬を両目に一滴ずつ差すと、ふうと細い息を吐き出して液晶モニターを見上げた。その瞳には、隠しきれない疲労と、それ以上に強い責任感の炎が宿っていた。
画面のメールボックスには、午後一番から現在に至るまでの数時間の間に、同一の送信者から送りつけられたおびただしい数の未読・既読メールが積み重なっていた。
差出人は、東都エージェンシーの神崎翔吾。
『件名:【至急】タイアップ構成の全面差し戻しについて』
『件名:【再送】モデルのアサインリスト変更(僕の推薦する新人タレントを入れて)』
『件名:【重要】予算配分の再考(制作費から僕のチームのディレクション費を30%上乗せ)』
『件名:【大至急】明日の午前中までに全ページのダミーレイアウトを再提出のこと』
どのメールも、午前中のキックオフミーティングで紬が提示した「読者のための実用的なエシカル特集」というコンセプトを根底から覆すものばかりだった。
神崎の意図はあまりにも露骨だった。自分が贔屓にしている芸能事務所の新人モデルを無理やりねじ込み、自分のディレクション料という名目で巨額の制作費を中抜きし、それによって生じる誌面の矛盾や取材先への再交渉といった泥臭い実務は、すべて「下請けの若い女編集者」である紬に丸投げしようとしていたのだ。
「……うーん、さすがにこの修正量は骨が折れるなあ」
紬はこめかみを軽く指先で揉みほぐしながら、手元の赤ペンを握り直した。
普通の編集者であれば、とっくに匙を投げて編集長に泣きつくか、広告代理店の営業担当へ怒りの抗議文を叩きつけているところだろう。しかし、紬は違った。
(神崎さんのメール、言葉遣いはすごくトゲがあるし無茶振りばっかりだけど……でも、大手代理店の花形として、世間の耳目を集めるための派手さが必要だって考えてるのかもしれない。エシカルの良さをたくさんの人に知ってもらうためには、私の企画の地味さを補う工夫も必要なんだよね)
持ち前の天然ポジティブと生真面目さが、悪質なパワハラと中抜き要求を「プロフェッショナルの厳しい要求」として変換してしまう。
(ここで投げ出したら、せっかく私を信じて任せてくれた編集長や女性部長の顔に泥を塗っちゃう。それに、取材に快く協力してくださるオーガニック農家さんやインテリアメーカーさんたちのためにも、最高の特集にしなきゃ! よし、今夜中に神崎さんの要望を取り入れつつ、読者の役に立つ妥協点を見つけてプロットを組み直すぞ!)
紬は手元のアイスティーをごくりと飲み干すと、再び前向きな瞳で画面に向き直り、猛然とキーボードを叩き始めた。
――しかし。
紬が自らの睡眠時間を削ってまで誠実に仕事に向き合おうとしていた、まさにその瞬間。
オフィスの天井裏、そして街中の光ファイバーケーブルを駆け抜けるデジタル空間の深淵では、人間界の道理を完全に踏み外した、冷徹無比な処刑計画が動き出していた。
◇
午後八時二十分。
男四人だけが共有する軍用規格の最高機密ホットライン。その画面に、かつてない禍々しい真紅の警告文がポップアップした。
【条約第2条発動:コード・ペスト(害虫駆除プロトコル)】
発令者は、条約議長・鷹見征司。
画面が四分割され、暗号化された音声通信が強制接続される。
『……状況は成瀬から共有された通りだ』
スピーカーから流れてきた鷹見の声は、絶対零度の氷壁のように冷え切っていた。
『神崎翔吾。あの愚物が、午後から現在にかけて紬へ送りつけた理不尽な業務命令メールは計十四通。いずれも私利私欲に基づく中抜きと、彼女の尊厳を軽視したハラスメント行為だ。……もはや、一秒たりとも放置することは許されない』
『異議なし』
即座に応じたのは、南青山のクリニックにいる保科貴文だった。白衣のポケットからペンを取り出す乾いた音が、冷徹に響く。
『紬ちゃんのスマートウォッチの生体ログですが、過度なデスクワークによる眼精疲労、僧帽筋の過緊張、そして精神的ストレスによる交感神経の持続的亢進が確認されています。このまま残業を続けさせれば、明日の朝には重度の頭痛と食欲不振を引き起こす。……神崎という害虫は、彼女の健康に対する明白な物理的加害者です』
『今すぐ首を刎ねる』
梶原敦志の低く地を這うような重低音が割り込んできた。暗闇の中でタクティカルナイフを革の鞘から抜くような、金属の摩擦音が微かに混じる。
『神崎の社用車は現在、銀座の会員制クラブの前に停車中だ。店から出てきた瞬間、路地裏へ引きずり込み、二度と社会復帰できないレベルで神経を圧迫する。所要時間は三十秒だ』
『待て待て待て、梶原さん! ストップ!』
地下のラボラトリーから、成瀬郁がキーボードを叩きながら割って入った。
『物理排除は最終手段だって、前回の会議で決めたでしょ! それに、今回の作戦には絶対に破ってはならない【最重要ルール】があるんだから!』
成瀬の言葉に、回線の向こうの男たちが一瞬息を呑んだ。
成瀬はモニターに、紬が今まさに懸命に修正している企画書のファイルをリアルタイムで映し出した。
『見てよ、これ……。紬さん、あんなゴミみたいな男の理不尽な要求に対して、読者のためになるようにって、泣き言一つ言わずに一生懸命頭を捻って企画を直してるんだよ……! もし今、神崎を力づくで消したり、企画そのものを白紙にしたりしたらどうなると思う!?』
「…………」
『紬さんのあの努力が、全部無駄になっちゃうんだよ! 「私の力不足のせいで大型企画がポシャった」なんて、あの真面目な紬さんが責任を感じて悲しむ姿なんて……僕、絶対に見たくない!!』
成瀬の悲痛な叫びに、鷹見が深く、重く息を吐き出した。
『……成瀬の言う通りだ』
鷹見の冷徹な声に、絶対的な決意が宿る。
『今回のコード・ペストにおける鉄の掟を策定する。――第一原則:【紬の努力をミリ単位たりとも無駄にしてはならない】。大型連動企画そのものは完璧な形で成立させ、彼女を社内外で絶賛される成功へと導くこと。そして第二原則:【神崎翔吾という個人のみを、外科手術のようにピンポイントで完全消滅させること】。……これより、役割分担に基づく精密殲滅作戦を開始する』
「「「了解」」」
三人の怪物が、寸分の迷いもなく呼応した。
◇
午後八時四十分、港区赤坂・料亭『錦水』。
樹齢数百年の手入れされた日本庭園を臨む、最高級の個室。
床の間に飾られた一輪挿しの前で、鷹見征司は完璧な仕立てのスリーピーススーツを崩さず、静かに冷酒の杯を傾けていた。
その対面に座っていたのは、日本最大の広告代理店『東都エージェンシー』の専務取締役・広瀬だった。財界の大物であり、政界にも太いパイプを持つ広告界の重鎮である。
「いやあ、鷹見副社長。急なお招きで何事かと思いましたが……このような素晴らしい席を設けていただき、恐縮ですな」
広瀬が相好を崩して杯を干す。
鷹見グループは、東都エージェンシーにとって年間数百億円規模の広告出稿を行う超巨大クライアント(大口顧客)である。副社長直々の呼び出しとあれば、いかなる重役であっても予定をすべてキャンセルして駆けつけるのが業界の鉄則だった。
「いえ、広瀬専務。突然の無礼をお許しください。本日は……御社との間で進行しております、冬の大型連動プロジェクトについて、少しばかり耳寄りな情報がございましてね」
鷹見は極上の微笑みを口元に浮かべながら、懐から取り出した薄い革張りのファイルを、テーブルの上へ音もなく滑らせた。
「……これは?」
広瀬が訝しげにファイルをめくる。
次の瞬間、広瀬の顔から血の気が完全に引いた。
そこに記されていたのは、東都エージェンシーの花形プロデューサー・神崎翔吾が過去三年間にわたって行ってきた、下請け制作会社への法外なキックバック要求、架空のディレクション費計上による総額四千万円を超える着服、そして複数の女性契約社員に対する悪質なセクシャルハラスメントの内部告発ログだった。
「ば、馬鹿な……神崎が、こんなことを……!?」
広瀬の手がガタガタと震え、酒杯がカタカタと音を立てる。
鷹見は冷酒を一口含み、菩薩のように穏やかな、しかし瞳の奥に絶対零度の闇を宿した眼差しで広瀬を見据えた。
「御社のコンプライアンス体制について、我がグループの監査部が極めて強い懸念を抱いております。……もしこの事実が週刊誌やネットメディアに漏洩した場合、御社の社会的信用は失墜し、我がグループとしても今後の広告出稿計画を全面的に見直さざるを得なくなるでしょう」
「そ、それだけは……! 鷹見副社長、どうかご内密に……!」
「ご安心ください、広瀬専務」
鷹見は優雅に微笑み、トドメとなる言葉を静かに紡ぎ落とした。
「私はただ、今回の素晴らしいプロジェクトが、一人の不届き者の私利私欲によって汚されることを憂慮しているだけです。……神崎氏の身辺調査を徹底的に進めていただき、速やかな社内処分の断行を。そして――本プロジェクトの後任には、御社で最も誠実で優秀な『女性プロデューサー』を据えていただきたい。そうすれば、我が社は何事もなかったかのように、追加の協賛予算を計上いたしましょう」
「は、配慮に感謝いたします……! 今夜中に、必ずやしかるべき手を打ちます……!」
額を畳に擦り付けるようにして平伏する広告界の重鎮を見下ろしながら、鷹見は心の中で冷たく呟いた。
(神崎……貴様の築き上げた城は、今夜のうちに土台から崩壊する)
◇
午後九時十五分、地下のラボラトリー。
カタカタカタカタカタカタッ――!!
成瀬郁の指先が、光速のタイピングでキーボードの上を舞っていた。
画面には、神崎翔吾の個人スマートフォン、会社のノートパソコン、そしてプライベートで使用している各種クラウドストレージの内部ディレクトリが、丸裸の状態で展開されていた。
「セキュリティソフトがノートン? ファイアウォールの設定もデフォルトのまま? あはは、笑わせるよね。広告代理店のプロデューサーって、口先だけでITリテラシーは小学生並みなのかな?」
成瀬の瞳が妖しく光る。
成瀬が仕掛けたバックドアは、神崎の端末内の全データをミリ秒単位で吸い上げていた。
下請け企業の社長とのLINEのやり取り:『今回の案件、僕の口座に百万円バックしてくれたら、コンペ通してあげるよ(笑)』
個人クラウドに保存されていた音声録音:泥酔した神崎が、若い女性アシスタントに対して「俺とホテルに行かないと業界で干すぞ」と脅迫している生々しい肉声データ
過去の経費精算書の改ざん原本:キャバクラの領収書を「クライアントとの戦略的情報交換会」として会社に不正請求していた証拠
「よし、全部サルベージ完了〜!」
成瀬はそれらの証拠データを、法的証拠能力を持つタイムスタンプ付きの暗号化アーカイブへとパッキングした。
「これを、東都エージェンシーのコンプライアンス委員会、法務部、国税局査察部、そして保科先生のルートへ同時にバラまく準備、完了。……あーあ、神崎さん。明日からあなたの人生、刑事事件と民事訴訟のフルコースだよ。楽しんでね!」
成瀬は冷酷な笑みを浮かべ、エンターキーに指を添えた。
◇
同時刻、南青山の『保科メディカル・メンタルクリニック』。
夜間診療を終えた静かな院長室で、保科貴文は白衣の袖をまくり、電話の受話器を耳に当てていた。
デスクの上には、三名の若い女性のカルテが並んでいる。かつて神崎のアシスタントを務め、彼の執拗なセクハラとパワハラによって精神を病み、このクリニックに通院していた元患者たちだった。
「……ええ、お久しぶりです、佐藤さん。保科です」
保科の声は、傷ついた小鳥を包み込むように柔らかく、温かかった。
「以前、あなたが神崎氏から受けた被害について、ずっと悔しい思いを抱えていたことはよく覚えていますよ。……今夜、お電話をしたのは他でもありません。神崎氏の悪行を白日の下に晒し、彼が二度と業界で同じ被害者を出さないための、完全な法的包囲網が整いました」
受話器の向こうから、息を呑むような微かな震えが伝わってくる。
「あなたに矢面に立っていただく必要はありません。僕が作成する『医師による診断意見書』と、成瀬くんが集めた客観的証拠をもとに、匿名で代理人弁護士を通じて会社へ告発状を提出します。……あなたの失われた尊厳と時間を、正当な賠償という形で取り戻しましょう。僕が、全責任を持ってあなたを守ります」
『保科先生……っ! あ、ありがとうございます……! 私、ずっと……ずっと怖くて言えなくて……!』
涙声で感謝を告げる元患者の言葉を聞き届け、保科は穏やかに頷いた。
「大丈夫ですよ。悪いのはあなたではなく、あの害虫の方ですから。今夜は温かいミルクを飲んで、ゆっくりおやすみなさい」
通話を切った保科は、受話器を置き、スッと顔から慈愛の笑みを消し去った。
「……三名分の確定診断書、ならびに精神的損壊に関する詳細な鑑定意見書、完成です。これで、東都エージェンシーの法務部は神崎をもみ消すことが完全に不可能になりましたね」
保科は引き出しから取り出した精神安定剤を一粒、カリリと噛み砕いた。
「紬ちゃんを泣かせようとした罪……被害者女性たちの怒りの炎とともに、地獄の業火で焼かれるといい」
◇
さらに同時刻、銀座八丁目。
ネオンの光が妖しく揺らめく雑居ビルの向かい、パーキングメーターの暗がりに、一台の漆黒のワゴン車が音もなく潜んでいた。
車内の後部座席で、梶原敦志は大型の超望遠赤外線カメラを構え、ファインダーを覗き込んでいた。
ビルのエントランスから、泥酔した神崎翔吾が、両脇に派手なドレスを着たキャバクラ嬢を抱きかかえるようにして千鳥足で出てくる。
カシャカシャカシャカシャッ――!!
消音シャッターが、闇の中で無音の連射を刻む。
神崎が女性の腰に手を回し、強引にタクシーへ押し込もうとして拒絶され、逆上して女性の腕を乱暴に引っ張る瞬間。
女性の悲鳴と、周囲の黒服たちが慌てて止めに入る修羅場の光景。
ミリ単位のブレもなく、神崎の醜悪な表情と暴力的な接触の瞬間が、4K解像度の鮮明な静止画として記録されていく。
「……撮影完了」
梶原は短く呟き、カメラのデータを車載の送信機へ転送した。
「公然わいせつ未遂、暴行未遂、ならびに威力業務妨害の動かぬ現場証拠だ。……成瀬、そちらの告発パッケージにこの画像データを統合しろ」
『了解、梶原さん! うわ、バッチリ写ってる! これで役満、チェックメイトだね!』
インカムから流れる成瀬の声を聞きながら、梶原はカメラを膝の上に置き、夜の銀座の冷たい闇を見つめた。
「……あの人の歩く道を汚す害虫に、明日の朝日は拝ませない」
四人の狂人たちによる、精密極まりない多重包囲網。
神崎翔吾を完全に解体するためのすべての弾薬が、完璧な連携によって装填された。
――そして。
残された最後の課題は、オフィスで今なお残業を続ける「槇原紬の睡眠時間をいかにして守るか」であった。
◇
午後九時四十五分、編集部フロア。
「――できたっ……!!」
紬は両腕を天に突き上げ、思い切り伸びをした。
パソコンの画面には、神崎の要求を巧みに織り交ぜつつ、本来のエシカル特集の魅力と読者目線の温かさを一切損なわない、完璧な修正企画書が完成していた。
「ふうーっ! なんとか形になった! 神崎さんが推薦したいモデルさんの枠を、特集冒頭のインタビューページに上手く誘導して……これなら、企画の世界観を壊さずに先方にも納得してもらえるはず!」
紬は満足そうに微笑み、メールソフトを立ち上げた。
神崎のメールアドレスを宛先に指定し、完成した企画書のPDFを添付する。
『神崎様:お疲れさまです。ご指摘いただいた修正点を反映させた最新プロットをお送りいたします。ご確認のほど、よろしくお願い申し上げます。槇原紬』
「よし! これを送信して、今日は早く帰ってあったかいお風呂に入ろう!」
紬は迷わず、画面上の【送信】ボタンを力強くクリックした。
――カチリ。
しかし。
その瞬間、画面の中央に、見慣れないポップアップウィンドウがポンと出現した。
『エラー:メールの送信に失敗しました(エラーコード:ERR_CONNECTION_RESET)』
『指定された宛先サーバーへの接続がタイムアウトしました。送信メールは「送信トレイ」に一時保存されました』
「……あれ?」
紬は首をかしげた。
「送信エラー……? もう一回やってみよう」
再度【再送】ボタンを押すが、結果は同じだった。
『エラー:宛先のアドレス(s-kanzaki@toto-agency.co.jp)への通信パケットが遮断されています。ネットワーク管理者にお問い合わせください』
「うーん……? 東都エージェンシーさんのメールサーバーが落ちちゃったのかな?」
紬は手元のスマートフォンを取り出し、画面の時計を確認した。
時刻は、午後九時五十分。
「あ……もうすぐ十時になっちゃう。こんな夜遅くに、修正メールを送りつけるのも、相手の方に失礼だったかも……」
紬はふと、相手を思いやるように小さく息を吐いた。
「神崎さんも、きっと今頃は退勤されてゆっくり休んでる時間だよね。夜中に仕事のメールが届いたら、通知で起こしちゃうかもしれないし……うん! 無理に今夜送らなくても、明日の朝イチで出社した時に送れば十分だよね!」
紬はパソコンをパタンと閉じ、トートバッグに荷物をまとめ始めた。
「よし、今日はもう終わり! お腹空いたな〜、コンビニで温かい肉まんでも買って帰ろう!」
軽やかな足取りで、紬はオフィスを後にしていった。
――彼女は知らなかった。
地下のラボラトリーで、成瀬郁が神崎のメールアドレス宛ての通信ポートだけを、ファイアウォールでピンポイントに物理遮断していたことなど。
そして、紬の退勤を確認した成瀬が、モニターに向かって満足そうにピースサインを掲げていたことなど、露ほども知る由はなかったのである。
『ふふん! 紬さんの健康的な睡眠時間は、僕が完璧に守ったよ! ……さてと』
成瀬の瞳が、再び獲物を屠る獣の光を取り戻す。
『明日の朝一番で、東都エージェンシーの全役員室に、神崎翔吾の処刑宣告パッケージを投下してあげようかな!』
夜の帳に包まれた東京の街で、害虫の命運は、完全に尽きようとしていた。




