第3話:冒険者ギルドと、神様からの贈り物
活気と熱気に満ちた大通りを進んでいくと、人通りの多い角地に一際大きな石造りの建物が見えてきた。
入り口の上部には、門番の言っていた通りの大きな「剣と盾」が交差した木製の看板が掲げられている。
「あそこだね、お母さん……! 『大きな剣と盾の看板』があるよ」
琴音が少し緊張した面持ちで、葵の服の袖をキュッと引っ張った。
すれ違う人々の中には、背中に大きな斧を担いだ屈強な男や、怪しげなローブを羽織った人物も混ざっている。
前世の日本なら映画やゲームの中でしか見ないような光景に、葵の心臓もトントンと高鳴っていた。
(落ち着いて、葵……。怪しい者じゃない、安全な仕事を探しに来ただけよ……)
葵は大きく深呼吸をし、手に下げたレジ袋を持ち直すと、もう片方の手で琴音の手に優しく力を込めた。
「行きましょう、琴音。大丈夫よ」
重厚な木製の両開き戸を押し開けると、カウベルのような乾いた金属音が響き渡った。
◇
一歩足を踏み入れた室内は、想像以上の熱気と騒音に包まれていた。
広い吹き抜けのホールには無数の丸テーブルが並び、酒を片手に談笑する厳めしい風貌の冒険者たちがごった返している。
壁一面には無数の紙きれ――依頼書が貼り出されており、それを熱心に品定めする者たちの姿もあった。
葵と琴音が足を踏み入れた瞬間、何人かの荒くれ者たちがギロリと視線を向けてきた。
日本の制服姿の少女と、エプロン姿にスーパーのレジ袋を下げた18歳前後の若い女性。
どう見ても異質で浮いているふたりの登場に、ギルド内を一瞬だけ妙な静寂が包み込む。
(ひっ……やっぱり、物凄い視線……! 早く用事を済ませよう……)
葵は反射的に琴音を自分の後ろに隠し、背筋を伸ばした。
ここで怯んで目立つわけにはいかない。葵は毅然とした足取りでホールを切り裂き、奥に見える受付窓口へと向かった。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
窓口で二人を迎えてくれたのは、ピシッとした制服を身に纏った若い女性職員だった。
「あの……私達、街に入ったばかりで身分証がなくて。門番さんに『ここで登録をすればギルド証がもらえる』と聞いて伺いました」
葵が渡された『仮通行票』を差し出すと、受付の女性はにっこりと微笑んで頷いた。
「はい、仮通行票ですね。冒険者ギルドへの新規登録ですね! ではまず、登録にあたり『適性判定(ステータス確認)』を行わせていただきますね。こちらの水晶に、順番に手をかざしてください」
まずは琴音から水晶に手を重ねる。
水晶が淡い青色の光を放ち、受付の女性が羊皮紙を見ながら頷いた。
「水瀬琴音さんですね。適性は【生活魔法(初級)】と【魔力適性:微小】……健康状態も極めて良好です。十三歳以上ですので『見習い』として登録可能です」
「よかった……」
琴音の無事なステータスに胸を撫で下ろし、次は葵が水晶に手をかざす。
その瞬間、水晶が温かく澄んだ『黄金色の光』を放ち始めた。
「え……!? こ、これは……固有加護の反応……? 【神の庇護(衣食住の保障)】と……所持スキルに【空間収納】がありますね……!」
受付の女性が目を見張り、周りの冒険者たちも「固有加護……?」「ストレージ持ちか?」とザワつき始めた。
(なんで大きな声で言っちゃうのよ! この受付の人、守秘義務はないのか!? やばい……やっぱり目立っちゃってるわ……!)
葵の背中にドッと冷や汗が流れる。
前世の日本なら個人情報保護法だなんだと大問題になりそうな大声での開示に、葵は心の中で激しいツッコミを飛ばしながらも、表向きは引きつった笑顔を浮かべるのが精一杯だった。
これ以上注目を集めるのは危険だ。早くここを離れたい。
受付の女性は葵の焦りには気づかず、手際よく作業を進めながら丁寧な説明を加えてくれた。
「驚きました……! ですが、登録には何も問題ありません。お二人とも登録完了となります。……なお、今回は仮通行票での新規登録となりますので、まずはこちらの『仮ギルド証(見習い用木札)』をお渡しいたしますね」
受付の女性から、木製の小さなプレートが二人に手渡された。
「仮ギルド証……ですか? 正式なものではないのでしょうか……?」
葵が尋ねると、受付の女性は微笑みながら説明してくれた。
「ええ。当ギルドでは、身元の確認や実績のない新人様には、まずこの木札の仮ギルド証を発行させていただいているんです。これでも街の中での身分証明書としては十分通用いたしますよ。そして、街での清掃や薬草採集といった簡単な『見習い依頼』をいくつか達成して実績を作っていただければ、こちらの金属製の『正式なギルド証』へ更新・昇格となりますからね」
「なるほど……! 実績を作れば正式なものになるんですね。分かりました!」
納得がいった葵は深く頷いた。
いきなり本格的な冒険者扱いをされるよりも、段階を踏んで安全な雑用から始められる仕組みは、葵にとってもむしろありがたかった。
だが、ここで葵はふと立ち止まる。
登録はできた。だが、実際に仕事を受けるにはどうすればいいのだろうか。
派遣会社やバイトの面接とは勝手が違うはずだ。葵は持ち前の主婦らしい慎重さで、改めて受付の女性に向き直った。
「あの……すみません。私達、こういうギルドで働くのが初めてで。……仕事って、具体的にどうやって受ければいいのでしょうか? 手続きやルールを教えていただけると助かるのですが……」
受付の女性はパッと表情を輝かせ、親切に応じた。
「はい、喜んでご説明いたしますね! 依頼の受注手順はとてもシンプルですよ」
女性は壁際にずらりと並んだ掲示板を指差し、順を追って説明を始めた。
「まず、あちらの掲示板に貼られている紙――『依頼書』の中から、ご自身でやってみたい仕事を選んでいただきます。依頼書には『内容』『報酬金額』『期限』『必要なギルドランク』が記載されています」
「自分で選んで持ってくるんですね。……あの、私達のような仮ギルド証の人間でも受けられる仕事は決まっているのでしょうか?」
「ええ、とても良い質問です! お二人には『見習い用(Fランク)』と書かれた緑色の用紙の依頼だけをお選びいただくことになります。それ以外の危険な討伐や採取は受注できないシステムになっていますので、ご安心くださいね」
「良かった……。それで、依頼書を決めたらどうすればいいですか?」
「選んだ依頼書を剥がして、こちらの窓口へ持ってきていただきます。私どもで仮ギルド証を確認し、正式に『受注手続き』をいたします。依頼を終えられましたら、指定された納品物(薬草や清掃完了の報告など)を再びこの窓口へお持ちください。確認が取れ次第、その場で報酬のお金をお渡しいたします!」
「受領から納品、報酬のお受け取りまで、全部この窓口で完結するんですね。分かりやすいです……!」
「はい! ただし、お気をつけていただきたい注意点がふたつございます」
受付の女性は少し表情を引き締め、指をふたつ立てた。
「ひとつ目は『期限』です。指定された期日を過ぎてしまうと『依頼失敗』となり、違約金が発生する場合があります。もうひとつは『キャンセル』です。受注した後に自分の都合で投げ出してしまうと、ギルドからの信用が落ちてしまいます。ですので、必ずご自身で『これなら確実にこなせる』と思える依頼だけをお選びくださいね」
(なるほど……期限厳守と、無理な受注は禁物。社会人の基本と同じね)
葵は深く頷いた。
決められたルールを守り、背伸びをせず、自分たちのできる安全な仕事を着実にこなしていく。それこそが我が子を守りながら生き抜く最短ルートだと確信した。
「とても分かりやすい説明をありがとうございました! 助かりました!」
葵がお礼を言うと、受付の女性は「頑張ってくださいね!」と温かく見送ってくれた。
葵は手に入れた木札を大切にポケットにしまい、琴音の手を引いて早足でギルドを後にした。
◇
「ふぅ……! すごい視線だったね、お母さん……」
「ええ……冷や汗が出ちゃったわ」
賑やかなメインストリートに出て、二人はほっと息を吐き出した。
手元には無事に手に入った二枚の木札――仮ギルド証がある。
(それにしても……さっき受付の人が言っていた【空間収納】って……)
葵は片手に下げたレジ袋を見つめながら、疑問を抱いていた。
神様は「衣・食・住」の保障と「若返り」のことしか言っていなかったはずだ。
だが、あの水晶にはハッキリと【ストレージ】と表示されていた。
(ここじゃ人目があるわね……。どこか落ち着いて確認できる場所を探さなきゃ)
葵と琴音はメインストリートを外れ、建物の影になっている静かな小道へと足を踏み入れた。
通りから外れた人通りのない路地裏。ここなら誰かに覗き込まれる心配もない。
「琴音、ちょっとここで立ち止まっていいかしら。さっき言われた『ストレージ』っていうスキル……ちょっと試してみたくて」
「うん、誰も見てないよ」
琴音が周囲を警戒するように見守る中、葵はそっと瞼を閉じた。
頭の中で『ストレージ』と強く念じてみる。
すると――頭の中に、果てしなく広がる真っ白で清潔な空間が浮かび上がった。
そこには、見慣れない木箱がぽつんとひとつ、置かれていたのだ。
(え……? 木箱……? 何かしらこれ……)
木箱の上に一通の紙きれが添えられているのに気づき、葵は意識を集中してそれを読み上げた。
『急な転移で着替えもお金もなくて困るでしょう?
ささやかなサプライズプレゼントとして、その土地に馴染むごく普通の服と、最初の生活資金に入れておきました。
二人で仲良く、新しい世界を楽しんでね』
(神様……! 口では言っていなかったけれど、こんなところまで気を利かせてくれていたんだ……!)
目を開けた葵は、隣に立つ琴音に声を潜めて伝えた。
「琴音、凄いわ……! ストレージの中に、神様からのお手紙と、この世界のお洋服とお金が入っていたの!」
「えっ……!? 本当に!? すごい、神様めちゃくちゃ親切じゃん!」
琴音がパッと目を輝かせる。
しかし、葵は自分のエプロン姿と、琴音の中学校の制服を見下ろして苦笑いした。
(服があるのはありがたいけれど……さすがにこの路地裏で堂々と着替えるわけにはいかないわね……)
そこで葵は、神様から授かったもう一つの重要な加護――【住】の加護(可変型ホーム・絶対安全結界)のことを思い出した。
(そういえば神様、『ここを我が家とする』と望めば、テントでも何でも自由な姿で安全な家を出せるって言っていたわね……!)
「琴音、あそこの行き止まりの広いスペースに行ってみましょう。神様がくれた『お家』を出してみるわ」
「お家……!? ここで!?」
路地裏の奥、壁に囲まれた小さな空き地へ移動すると、葵は誰も見ていないことを確認し、心の中で強く念じた。
(誰も怪しまないような、小さな旅人用のテントを……! 中は安全で快適なお家に……!)
直後、ぽんっ、と心地よい音とともに、目の前の空き地に、カーキ色のシンプルな一人用キャンプテントが姿を現した。
見た目はどこにでもある慎ましいテントだ。路地裏の隅にあっても違和感はない。
「うわ……本当にテントが出た……!」
「行きましょう。外からはただのテントに見えるけれど、中は安全だから」
葵がテントのチャックを開け、琴音と一緒に中へ足を踏み入れた。
すると――
「……えっ……!? なにこれ……っ!?」
琴音が息をのんで声を上げた。
外から見れば大人が二人入るのがやっとの小さなテント。
だが、一歩足を踏み入れた内部は――温かな木目調のフローリングが広がる、明るく清潔な『一軒家のリビング』そのものだった。
やわらかな照明、ふかふかのソファ、奥には小さなキッチンと清潔なベッドまで備わっている。
外の路地裏の雑音は一切聞こえず、温かく心地よい空気に包まれていた。
「すごい……! ドラえもんの道具みたい! 外と中が全然違うよお母さん……!」
「本当に……! これなら、どこにいても安全に休めるわね……」
絶対の結界に守られた温かい空間に、葵も心の底からホッと胸を撫で下ろした。
「さあ、琴音。ストレージから神様がくれたお洋服を出して、ここでゆっくり着替えましょう」
葵がストレージから取り出したのは、派手さのない、この街の町人たちが着ているような素朴で丈夫な服だった。
琴音には動きやすい綿のチュニックとキュロットスカート。葵にはシンプルなブラウスとロングスカート、職人仕立ての歩きやすそうな革靴。
制服から素朴な服へと着替え、リビングの鏡の前に並んで立った。
「うん、ピッタリ! これなら街の中でも全然目立たないね」
鏡の前で自分の姿を確認した琴音が嬉しそうに頷く。
葵自身も、日本の主婦姿から一般的な異世界の服へと変わり、街に溶け込める格好になったことで大きく胸を撫で下ろし、ずっと手元で邪魔だったレジ袋もストレージの中へと安全に収納した。
◇
テントを消し、再び夕暮れ時の路地裏に立ち尽くした葵は、手の中の木札――仮ギルド証をぎゅっと握りしめた。
「さて……これからどうしようか、お母さん」
琴音が自分の新しいスカートの裾をパッパと払いながら、葵の顔を覗き込んでくる。
「そうね……。神様のくれた【住】の力があるから、野宿になっても安全に眠れるのは間違いなさそうだけど……」
葵はあごに手を当て、主婦としての思考を巡らせた。
(いくら結界で安全とはいえ、毎日路地裏や街の外にテントを出して暮らすわけにはいかないわよね……。街の人たちから『宿にも泊まれない怪しい奴ら』って目で見られたら困るし、何より温かい街のご飯や、この世界の情報が集まる場所を確保したいわ)
健全に琴音を育て、この世界で生きていくためには、街の中に拠点となる「おすすめの宿屋」を見つけるのが最優先事項だった。
「よし……もう一度、冒険者ギルドに行ってみましょう」
「えっ!? またギルドに戻るの? さっきすごく注目されちゃったのに……?」
琴音が嫌そうに眉をひそめる。
ギルドホールに満ちていた荒くれ者たちの視線と、あの受付嬢の大声は、十四歳の少女にとっても相当なトラウマだったらしい。
「大丈夫。さっきの大声を出しちゃった受付の人じゃなくて、別の落ち着いてそうな受付の人を探して声をかけるから。門番さんも言っていたでしょ? ギルドは街の情報が集まる場所だって。あそこなら、治安が良くてリーズナブルな宿屋を教えてもらえるはずよ」
「そっか……別の受付の人なら大丈夫かな。あの大声のお姉さんは、ちょっと嫌だもんね……」
琴音も納得したように頷いた。
我が子の安全と快適な夜のために、葵は気を引き締め直し、再び賑やかなメインストリートへと足を進めた。
◇
夕闇が迫る冒険者ギルドは、先ほどよりもさらに人が増え、酒を交わす冒険者たちの怒号や笑い声で熱気に包まれていた。
葵は琴音の手をしっかりと握り、ホールに入ると素早く周囲を観察した。
(あそこだわ……さっき大声でステータスを読み上げた受付の人は、いま他のゴツい冒険者さんの対応中ね……よし!)
葵の狙い通り、さっきの受付嬢は別の窓口で長話の最中だった。
葵はなるべく目立たないよう足音を殺し、一番端にある、落ち着いた雰囲気を醸し出している別の窓口へと向かった。
そこに立っていたのは、眼鏡をかけた真面目そうな中年の男性職員だった。
「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょうか?」
男性職員は、葵と琴音の落ち着いた装いを見ると、穏やかな声で問いかけてくれた。さっきのような大声でのオーバーリアクションもなさそうだ。
葵は心の底から胸を撫で下ろし、ポケットから先ほど手に入れたばかりの『仮ギルド証(木札)』を二枚、提示した。
「すみません、先ほどこちらで仮登録をさせていただいた者です。……実は、この街に詳しくなくて、今夜泊まるお宿を探しているのですが……」
「ほう、お宿探しですね」
男性職員は手慣れた手つきで木札を確認し、静かに頷いた。
「冒険者様向けの宿でしたら、ご予算やご要望に合わせていくつかご紹介できますよ。お二人でしたら……そうですね、治安が良く、食事の評判が良い場所がお望みでしょうか?」
「はい! まさにそういう場所を探していました! あまり派手で高価なところではなく、清潔で安全で、ご飯が美味しい素泊まりか一泊二食付きの宿だとありがたいのですが……」
葵の切実な要望に、男性職員は眼鏡の奥の目を細め、引き出しから一枚の簡易的な街の地図を取り出した。
「なるほど。では、こちらの『木漏れ日亭』はいかがでしょうか。ギルドから徒歩で五分ほどの南通りにございます」
男性職員は地図の一点を指差した。
「ここは元冒険者の面倒見の良い女将さんが経営しておりましてね。部屋は清潔で、何より女将さんの作る家庭料理が『安くて絶品だ』と評判です。怪しい客は女将さんが追い払ってくれますから、若い女性お二人でも安心して泊まれるかと思いますよ」
「まあ……! 元冒険者の女将さんで、ご飯が美味しいお宿……!」
葵の主婦アンテナが強く反応した。
セキュリティ面も安心で、家庭料理が美味しい。まさに理想的な条件だ。
「お値段は一泊、夕食と朝食がついて銀貨二枚……お二人で銀貨四枚となりますが、ご予算的にはいかがでしょうか?」
(銀貨四枚……! 神様がストレージに入れておいてくれたお金で十分払えるわね)
「大丈夫です、払えます! その『木漏れ日亭』さんへ行ってみたいです!」
「承知いたしました。では、こちらの案内状をお持ちください。女将に見せれば、ギルドからの紹介としてスムーズにお部屋へ案内してくれますよ」
男性職員は手際よく紙切れにサラサラとペンを走らせ、葵に手渡してくれた。
個人情報を言い散らかされることもなく、完璧でスムーズな対応。葵は心から感謝の思いを込めて頭を下げた。
「本当に親切にありがとうございました! 助かりました!」
「いえいえ、お気をつけて。良い夜をお過ごしくださいね」
親切な男性職員に見送られ、葵と琴音は今度こそ晴れやかな気持ちで冒険者ギルドを後にした。
◇
ギルドを出ると、街はすっかり夜の帳に包まれていた。
石造りの街灯には魔石と思われる淡い橙色の光が灯り、昼間とはまた違う、ノスタルジックで温かな情緒を醸し出している。
「お母さん、すごいね! すぐに親切な人が宿を教えてくれたね!」
「ええ、本当によかったわ。さっきの受付の人を避けて正解だったわね」
二人は顔を見合わせてクスリと笑い合った。
教えられた地図を頼りに、賑やかな大通りから一本入った南通りへと歩を進める。
(木漏れ日亭……どんな女将さんなんだろう。美味しい温かいご飯、食べられるといいな……)
お腹がすいた、という琴音の期待に満ちた横顔を見つめながら、葵は手に握りしめた案内状を大切にポケットにしまった。
異世界で過ごす初めての夜が、もうすぐやって来ようとしていた。
お読みいただきありがとうございました!
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